なぜ仙谷を即刻クビにしないのか 諸悪の根源は仙谷の存在


(日刊ゲンダイ2010/12/3)


「小沢一郎官房長官」という奇手なら政権浮揚確実

◆すべての間違いは小沢一郎切りから始まった
─菅無能首相にはやれないだろうが、やったら民主政権の支持率は劇的に上昇する
哀れな末路へ向かって、一直線のスッカラ菅内閣。菅が本気で政権浮揚を狙うなら、もはや、この「奇手」しか残されていない。ズバリ、小沢一郎を官房長官に起用することだ。
仙谷官房長官が参院で問責決議を叩きつけられた以上、クビにしなければ、来年1月の通常国会は冒頭から審議がストップ。菅政権は立ち往生だ。身内である菅グループからも「外交・安保で失政続き。人心一新すべきだ」と、仙谷交代論が高まっているが、官房長官は政権全般を見渡して即座の決断を迫られる司令塔だ。前原外相や蓮舫行政刷新相のような若葉マーク大臣では、後釜は務まらない。
「この難局では豊富な政治経験はもちろんですが、強力な情報網と外交チャンネルを持ち、さらに官僚をサボタージュさせない威厳も求められます。そんな人材が民主党内にいるかといえば、小沢一郎しか見当たらない。それが現実です」(政界事情通)


さんざん「政治とカネ」の問題で小沢を叩き、「喚問に応じろ」と訴えてきた大マスコミや野党も、小沢の官房長官起用に反対する理由はないはずだ。小沢が官房長官になれば、朝・夕2回の記者会見で、堂々と小沢を攻められる。野党も国会でいくらでも小沢と対決できるのだから、大歓迎だろう。
機は熟しつつある。世論は大マスコミのチマチマした「反小沢報道」など、どこ吹く風。これだけ袋叩きにされ、イメージ最悪なのに、FNN調査で、小沢が「首相にふさわしい政治家」のトップに躍り出るなど、急速に小沢待望論が湧き上がってきた。乱世には剛腕実力者が必要と分かってきたのだ。
自民党や公明党に協力を求め、民主党らしさを失うくらいなら、身内の小沢と手を結ぶべきだ――世論は民主党政権にそんなエールを送っているようにも見える。



◆小沢にひざまずいてでも挙党一致を目指せ
菅から「おとなしくしていろ」と言われた小沢本人も、政権の危機を目の当たりにして、動かざるを得なくなっている。11月中旬から若手との会合を重ね、「政権交代の原点に返れ」と檄を飛ばしてきた。1日には検察審の起訴議決後、初の地元入りで、こう熱い口調で語った。
「政治活動も40年を超え、この先何十年もやっていけない。何としても民主主義の定着と日本が豊かに安心して生活できるようレールを敷いて次世代に引き継ぐことが、私の最後のご奉公だ」
裏を返せば、自分が内閣の要に座れば、短時間で民主党政権を立て直すことができるという自信の表れである。

「政権交代を実現させた国民に対して、菅首相が取るべき道は『国民の生活が第一』という原点に立ち返るしかありません。小沢氏は原点回帰の象徴です。『親小沢か反小沢か』という党内の痴話ゲンカをけしかけた諸悪の根源の仙谷氏をバッサリ切って、脱小沢路線からオサラバする。菅首相は小沢氏にひざまずいてでもトロイカ体制に回帰し、挙党態勢を目指すべきです。菅首相にとって仙谷官房長官への問責決議は、イチから出直すラストチャンスなのです」(政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏)
舞台が整った今、あとは菅首相の決断次第なのである。



◆いまだ政権自滅の元凶に気づかぬ愚かな首相
問題は、ボンクラ首相に小沢を閣内に招き入れる度胸も決断力もないことだ。大マスコミや野党から「延命のために小沢と組んだ」「脱小沢の信念を捨てたのか」と猛批判を浴びせられるのを恐れ、窮余の一策に踏み切ることができない。政治評論家の浅川博忠氏はこう言う。
「検察審が起訴議決を出した以上、いずれ小沢氏は起訴されて“刑事被告人”となる身です。それでも、菅首相は『石にかじりついてでも政権を維持する』とまで言ったのなら、政権内に小沢氏を取り込む度量を見せてもいい。しかし、菅首相は世論の動向を気にするあまり、そんな大胆な決断を下せる度胸はありません。せいぜい、小沢支持派の議員を閣内に取り込む程度が関の山。そこが、菅直人という政治家の器の限界なのです」
菅は、仙谷切りを求める身内の声にも耳を貸そうとしない。そればかりか、再び大マスコミの異常な反小沢報道に便乗しようとしている。小沢が昨年7月の総選挙解散当日に計4億円以上の政治資金バラマキ問題について、きのう報道陣に「国民がよく理解できるよう説明をしてもらいたい」と発言。小沢の「政治とカネ」問題にあえて自分から火を付けようとしている。
「菅首相にすれば“夢よ再び”でしょう。これまでも危機に陥るたびに、小沢氏を批判することで支持率アップを図ってきました。しかし、いい加減、有権者も菅政権が繰り出す『脱小沢』という茶番劇を見抜いています。延命のため、小沢氏の悪いイメージを利用する姑息な魂胆に辟易(へきえき)しているのです。そこが分からないのが致命的で、この調子だと、菅首相は座して死を待つだけです」(浅川博忠氏=前出)


◆どうせ新年がないなら「脱小沢」を捨てろ
菅の愚かなところは、どうして政権運営に失敗したのかに、いまだに気づかないことだ。
すべての元凶は、政治能力も度胸もない仙谷の「脱小沢路線」に乗り、小沢を切ったことにある。
仙谷はマスコミ受けを狙って小沢切りに走り、霞が関勢力と結託した。小沢さえいなければ「自分が一番だ」と本人は錯覚し、役人をバックにつければ政権運営なんてチョロイと簡単に考えたのだろう。それが完全に裏目に出たのである。

官僚など旧勢力と手を握ったことで、民主党のマニフェストはズタズタに切り裂かれ、菅政権は古い自民党政治と何ひとつ変わらなくなってしまった。そんな改革精神を失った政治を世論が見放したことで支持率急落、政権運営はメタメタになってしまったのだ。
「菅首相はロクに主義主張を持たず、消費税発言のように、自分の出世や保身のためには前言撤回も辞さないスーパーリアリストです。どうせ、信念がないのなら、脱小沢路線に執着せず、思い切って小沢氏に頭を下げて協力を仰ぐべきです。パフォーマンスと批判されてもいい。むしろ、潔い態度を国民は評価し、支持率も反転するはずです」(鈴木哲夫氏=前出)
菅は今こそ、すべての間違いの元は、小沢切り捨てから始まったと自覚すべきだ。分からないようだと、この政権は本当にオシマイだ。