菅内閣半年 課題に挑む気迫感じぬ

(東京新聞 2010年12月8日) http://p.tl/d92w


 発足半年を迎えた菅内閣。民主党政権再生の期待を背負って誕生したが、めぼしい成果を挙げたとは言えない。直面する課題に挑む気迫が感じられず、先送りするだけの政権に存在意義はない。

 菅直人首相は六日の記者会見で、三日に閉会した臨時国会を振り返り「この間、多くの国際会議があり、中でもアジア太平洋経済協力会議(APEC)を成功裏に終わらせることができるなど内外を通して実り多いものだったと感じている」と誇らしげに胸を張った。

 しかし、この言葉は国民には何ともしらじらしく響く。それは発足直後に60%を超えた内閣支持率が十一月には20%台に落ち込んだことに表れている。20%は政権存続が危ういとされる危険水域だ。

 最大の要因は課題に挑む気迫が首相に感じられないことだ。

 例えば財源問題。首相は消費税論議に積極的だったが、参院選で民主党が惨敗すると持論を封印した。かといって、事業仕分けに真剣に取り組んだわけでもない。

 税金の無駄遣いを徹底的になくす前の税率引き上げは容認できないが、論議自体は必要だと首相が思うなら、政治生命を懸けて国民に理解を求めるべきだった。

 言い出したことが壁にぶち当たると引っ込める。足元が定まらない首相の姿勢は、国民の民主党政権不信を増幅させただけだ。

 鳩山由紀夫前首相が退陣したのは「政治とカネ」と、米軍普天間飛行場の返還問題の行き詰まりが原因だ。後を託された菅首相は、この二つの大きな課題でも指導力を発揮することはなかった。

 首相は会見で小沢一郎元代表の国会招致について「最終的な段階で私に何らかの判断が必要であれば、そういう(国会で説明してもらう)立場から対応したい」と述べたが、ならば臨時国会中に判断すべきではなかったか。

 普天間問題では就任直後に沖縄県を訪問したものの、その後は特段の手を打つわけでもなく、成り行きを見守っていたにすぎない。

 首相は来年の通常国会を社民党の協力を得て乗り切りたいようだ。政策・理念が一致するのなら理解するが、衆院で三分の二を得て法案を押し通すのが目的なら単なる数合わせであり、自らが掲げた「熟議」にも逆行する。

 指導者に求められるのは、的確な現状認識と未来を切り開く構想力、それを実現する政治力だ。首相が政権を担い続けるのなら、そのことを再確認する必要がある。