[在米ジャーナリスト 緊急リポート]米国は仲井真 沖縄県知事を歓迎している

(日刊ゲンダイ 2010/12/11)

身勝手な理屈、虫がよすぎる魂胆、ナメられている菅政権

先月28日に再選された仲井真弘多・沖縄県知事。当選翌日には米軍普天間飛行場の県内容認をきっぱり否定し、2日には官邸で菅首相に県外移設を直訴。日米合意順守を唱える政府との「戦う姿勢」を鮮明にした。
そうした仲井真氏に渋い表情を見せる菅首相とは対照的に、米政府内には「仲井真歓迎」ムードが漂っている。
知事再選後、私は多くの米政府関係者に見通しを聞いた。そのなかで浮かび上がったのは、日米合意の前進を楽観し、他の選択肢は眼中にないという米国の厳しい姿勢だ。
米政府は、沖縄県内で県外移設への期待が膨らみ、一向に沈静化しないことに苛立ち、憂慮してきた。米国は日本政府に対し「日米合意の履行か、それとも普天間の固定化か」という二者択一で、沖縄県と調整するように迫ってきた。

こうした状況を踏まえた上で、ある米国務省高官はこう話す。
「仲井真氏は『国外』ではなく『県外』と主張してきた。他県に打診したものの、受け入れ先が見つからず、辺野古に回帰するというシナリオを前提とするものだ」
今後は移設問題と沖縄経済振興策がセットで議論され、県内移設受け入れに向けた環境を整えていく、との見立てだ。
しかも、米軍が普天間移設を急がせるのは、市街地のど真ん中にある飛行場が危険だからではない。


「米国内での軍事費削減論の高まりを受け、垂直離着陸輸送機MV22オスプレーに対する反発も強まっている。だから配備先を早急に確保する必要がある」(米軍高官)<br /> オスプレーの事情で辺野古の海を埋め立てる――。


まさに言語道断の理屈なのだが、グアム移転計画の大幅な遅れを指摘する米軍高官は、「移転完了までは普天間飛行場の100%運用を前提に、老朽化した滑走路の改修などを進めていく」とも語った。米国の都合が最優先なのである。<br /> 普天間問題に詳しい米国防総省の元高官はこう言った。


「普天間の受け入れ先であるグアムの用意が整い、実際に移転が始まれば、普天間は事実上閉鎖状態となる。その時に代替施設がどの程度必要ななのかが示される」


普天間に駐留する海兵隊のグアム移転後、果たして、新しい基地は必要なのか。


菅政権がこうした議論を脇に置く間に、日米共同統合演習が実施され、沖縄の海に米海軍と海上自衛隊の艦船20隻以上が集結した。空には轟音をがなりたてるF15戦闘機が頻繁に飛び交い、公道ではパトリオットミサイルを積んだ軍車両が移動した。まさに米軍はやりたい放題だ。

(在米ジャーナリスト・平安名純代)




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