放置すれば独裁化する仙菅政権  (日刊ゲンダイ2010/12/18)


サラリーマンいじめの税制改革。小沢一郎のクビを差し出す国会運営。沖縄の犠牲を公言する対米従属。景気や雇用は最悪となっている。


どこが「国民生活が第一」なのか。民主党の税制改革案を見た国民は唖然としたのではないか。

菅内閣が16日に閣議決定した「2011年度税制改正大綱」は、民主党政権にとって事実上、初の「税制改革」だった。「生活者重視」を掲げて政権に就いた民主党のことだ。きっとサラリーマンを支援するような税制を打ち出すと誰もが期待した。

ところが、どうだ。出てきたのは「法人は5800億円の減税」「個人は6200億円の大増税」という、とんでもないシロモノだった。
「法人税の5%減税は、大企業の念願でした。経団連も官邸に要請していた。事前の予想では、3%減税くらいで決着するだろうとみられていました。ところが、菅内閣は要望をそのまま受け入れた。だが、財源が足りない。そこで足りない分を国民に押しつけたという構図です。しかし、こんなムチャクチャなことは、財界をスポンサーにしていた自民党だってやらなかった。『国民生活が第一』を旗印にしていた民主党政権が強行するとは信じられない。一体どうしたのか。菅内閣になってから、民主党は変質してしまったとしか考えられません」(九大名誉教授・斎藤文男氏=憲法)
百歩譲って、法人税減税が景気に役立ち、雇用が増えるなら、国民も我慢するだろう。しかし、法人税を減税したって景気が良くならないことはハッキリしている。減税分は、内部留保や役員報酬に回されるだけのことだ。雇用が増えたり、サラリーマンの給与が上がることはあり得ない。



◆「国民生活」ではなく「政権維持」が第一

菅内閣のやっていることは、なにからなにまで、この調子だ。国民が望むことはなにもやらないくせに、余計なことばかりやっている。
15歳までの子ども全員に毎月2万6000円を支給すると約束した「子ども手当」はどうしたのか。
それもこれも、国民のための政治ではなく、政権延命、保身しか頭にないからだ。小沢一郎の「政倫審」問題は、その典型だ。

「政治とカネの問題は、いま民主党をガタつかせてまでやる問題ではありません。予算編成に集中すべきです。そもそも国会閉会中に政倫審が開かれた例はない。野党だって要求していない。それでも、菅首相や仙谷長官が騒ぎ立てているのは、すべて政権維持のためです。菅内閣は内政も外交も行き詰まり、八方塞がりの状態。そこで性懲りもなく、また『脱小沢カード』を持ち出したのが真相でしょう。ここで小沢を切れば支持率がアップし、来年1月の通常国会もスムーズに運ぶという計算です。しかし、政権維持のために身内をスケープゴートにするなんて前代未聞。菅・仙谷コンビのやっていることは狂気の沙汰です」(政治評論家・山口朝雄氏)
有権者は「国民生活が第一」の政治を期待して民主党に政権を託したはずだ。
なのに、菅内閣は「政権維持が第一」で政治を私物化し、ドンドン違う方向へ走り出している。


このまま菅内閣を放置していたら、どこまで暴走するか分からない。
驚いたのは、仙谷長官の沖縄に対する発言だ。沖縄の基地負担について「沖縄の方々には甘受してもらう」と堂々と言い放った。もともと「不遜が服を着て歩いている」ような男だが、日を追うごとに強権的になっている。

菅政権の公務員改革を国会で批判した経産省の役人を「恫喝」して問題にもなった。
「自信のなさの裏返しなのか、仙谷長官の言動は、日増しに乱暴になっています。自分への批判には、とくに過敏になっている。小沢一郎の抹殺に血道を上げているのも、トドメを刺しておかないと、報復されると恐れているからです。その点では、一日でも長く首相でいたいだけの菅首相とよく似ている。だから『仙菅内閣』は、政権維持のためなら、なんでもアリになっている。たとえば、野党時代あれほど批判していた『思いやり予算』です。認めるどころか、この先5年間の支払いまで約束してしまった。法人税減税を強行したことでも分かるように、アメリカと大企業を味方にしておけば、政権は安泰だと踏んだのでしょう。どうせ、3年間は国政選挙はないとハラをくくった節もある。確かに、国政選挙がなければ、アメリカと大企業を押さえておけば政権は維持できます」(民主党関係者)
もはや「仙菅内閣」に、民主党の理想はどこにも残っていない。権力欲があるだけだ。
ヒトラーも、ムソリーニも、左翼運動家から独裁者にのし上がった。「仙・菅」コンビも同じ道を歩みはじめているのではないか。気になるのは、仙谷長官の人相が、どんどん悪くなっていることだ。



◆小沢追放で「仙菅内閣」の独裁は完成

こんなヤバイ政権が3年も続いたら、日本はホントにおかしくなってしまう。それでなくても、菅内閣がスタートしてから、国民生活は急速に悪化している。
とうとう、生活保護は過去最悪の140万世帯を突破。電通の調査では、「日本の将来に不安を感じている」が8割に達している。
なにしろ、国のトップが、政権維持しか頭にないのだから、国民生活が苦しくなるのも当然のことだ。
いい加減、民主党議員は、体を張ってでも「仙菅内閣」の倒閣に動くべきだ。まさか、菅首相のことを本気で「素晴らしい」と評価しているわけじゃないだろう。

少なくとも、絶対に小沢一郎を離党させてはダメだ。小沢が党を離れたらどうなるか。無能なスッカラ菅首相と、菅を裏で操る仙谷長官は、必ず大暴走し始める。
「菅首相が最悪なのは、総理としてなにもやりたいことがないことです。こういうタイプが権力にしがみつくと本当に怖い。やりたいことがないから、逆になんでもやってしまうからです。すでに消費税アップだ、TPPだと、片っ端から飛びついています。いまは小沢一郎という怖い存在が歯止めになっているが、もし党からいなくなったら、ブレーキを失ってしまうのではないか」(山口朝雄氏=前出)

民主党議員は、とんでもない男を総理にしてしまった。



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