恐怖の失われた30年が予測されている  (日刊ゲンダイ2010/12/28)

◆政権交代失敗の元凶

菅か、小沢か、民主党マニフェストか、自民党か、公明党か
今、世界中が日本という国に驚いている。少子高齢化がすさまじい勢いで進んでいるのに、政治がほうけたように何もしないからだ。
日本の少子高齢化のスピードは世界の中でもレベルが違う。同じように高齢化という社会問題を抱える西欧諸国は、さて、日本はどうするだろう、と眺めている。日本の対応を見て自国の参考にしようとしているのだが、日本は何の手も打とうとしていない。それどころか、与党はつまらない権力闘争に明け暮れている。
これが彼らには驚きなのである。
今年11月、英エコノミスト誌は「未知の領域に踏み込む日本」という特集を組んだ。その冒頭にはこうある。
〈日本は歴史上存在したどの国よりも速いペースで高齢化しており、経済と社会に多大な影響を与えている。では、なぜ、日本は適応するための手をほとんど打っていないのか〉
そして、日本は史上初めて自然要因で人口が急減し始めたこと、出生率は世界最低の部類に入ること、1億2700万人いる日本の人口は今後、40年間で3800万人減少すること、2050年までに日本人の10人に4人は65歳以上になること……などを挙げている。
「日本は戦後、人口増による労働力のアップと生産性の向上がうまくリンクし、奇跡的な成長を遂げました。しかし、これからはモーターが逆回転する。人口減によってもたらされる経済的損失は計り知れないものになります」(筑波大名誉教授・小林弥六氏=経済学)
日本の生産年齢人口(15~64歳)が減少し始めたのは1996年からだ。2012年以降、これが劇的に加速化する。団塊世代の最年長者が65歳になるのが2012年なのである。
生産人口が減れば、それをカバーする勢いで生産性が向上しない限り、GDPは落ちていく。
厚生労働省の試算によると、2009年に6617万人いた労働人口は2030年には5584万人になるとされる。生産性がそのままであれば、GDPは16%も減ってしまう。


◆このままでは国家の崩壊が決定的
「そんなものですまないかもしれませんよ。少子高齢化がなぜ、進むのか。さまざまな理由がありますが、最近は若者の就職難も大きな理由になりつつあります。職がないから結婚できない。たとえ運良く結婚できても、子育てには莫大なカネがかかる。将来不安ものしかかる。財布の紐は締まり、子供を何人も生めないのです。こうなると、ますます、少子高齢化は加速する。お年寄りが増えて、年金負担が財政を破綻させ、不況が慢性化し、企業は海外に逃げていく。国内には失業者があふれ、結婚できない若者がさらに増えていく。国家が持たなくなる恐れがあります」(小林弥六氏=前出)
厚生労働省にはもっとギョッとする数字がある。2005年には3人で1人の65歳以上のお年寄りを支えていたのが、2050年には1・2人が1人を支えることになる。結婚できない若者も急増、2030年には男性3人に1人が生涯独身になるというのだ。

日本は老人だらけの国になってしまう。子供がいない国である。膨れ上がる社会保障で財政はパンクし、夕張市がそうであったように、どこもかしこもゴーストタウンのようになってしまう。

経済は疲弊し、国はみるみる衰退する。
これは予測ではなく、現実だ。確実に起こる話なのである。


◆この期に及んで党内抗争に明け暮れるのか
それなのに、今の民主党を見ていると、心底、情けなくなってくる。きのうも小沢招致をめぐってバカ騒ぎ。菅首相自らが役員会に出てきて、小沢が政倫審への出席を拒む場合、「出処進退を含めて考えていただくしかない」と力んでいた。

岡田幹事長も「政治とカネの問題に方向性を示さなければ、国民の信頼をかち得ない」と言い、これまた、異様な“入れ込み方”なのだが、国民の関心は小沢のカネではない。自分の懐のカネの方だ。それがてんで分かっていない。法大教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。
「党内抗争をやっている場合なのか。これだけ失業者、就職浪人があふれて、社会が崩壊する一歩手前なのに何をやっているのだろう、と思いますね。そもそも、国民が民主党に政権ず、外為特会の剰余金も先食いし、もはや埋蔵金もなくなってしまった。
何から何まで誤算続き。その結果、いつも場当たりの迷走政治になっているのだが、こんな与党・内閣を見せつけられると、日本はつくづくダメだなと思ってしまう。

これじゃあ、世界が驚き、呆れるのも当然だ。
「少子化に加えて、菅政権のデフレ加速政策は狂気の沙汰です。今年度予算の歳出は91兆円、来年は92兆円ですが、今年は7兆円の補正があった。それがない来年は緊縮財政になるのです。“失われた10年”のあと、小泉構造改革が日本をメチャクチャにしたことで、“失われた20年”になった。私は今度は菅政権によって、これが30年、40年になると思う。少なくともGDPはものすごい勢いで縮小します。いまは名目470兆円ぐらいですが、アッという間に400兆円を切ることになりますよ」(経済アナリスト・菊池英博氏)
こうなったら、国際社会でもふんぞり返っていられなくなる。日本なんて、しょせん、経済だけの国なのだ。米国には見捨てられ、中国にはコケにされ、アジアでも相手にされなくなる。インド、ブラジルなどの新興国が台頭し、日本は忘れ去られていくのである。
前出の小林弥六氏は「すぐに日本の若者の賃金は中国以下になる」と言う。企業が若手の人材育成に金を使わなければ、日本人の勤勉さなんて、すぐに「昔話」になってしまう。
働き口がない若者は南米や東南アジアに移住するようになるかもしれない。年の瀬なのに、未来に明るい展望がないのはやりきれないことだ。




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