世界中の財政赤字危機で国民生活は窮乏する [2011年、必ず起こると予測されているこれだけの難題]

(日刊ゲンダイ2010/12/30)

世界危機はいよいよ深刻化する
2010年夏のG20サミットで「2013年までに財政赤字を半減する」という首脳宣言が出されたこともあって、先進各国は競って「歳出削減」に動きはじめている。リーマン・ショックで拡大した財政赤字を埋めようと必死だ。
「初めに財政再建に動いたのは英国です。総額810億ポンド(約10兆5000億円)の歳出削減を打ち出した。公務員は49万人削減。66歳への年金支給開始年齢引き上げの前倒しも決めた。国防予算にも手をつけた。文字通り『聖域なき』大幅カットです」(民間シンクタンク研究員)
財政再建の動きは、あっという間に主要国に伝播。ギリシャ、スペイン、ポルトガルなどが緊縮策の強化に動いている。フランスは、年金支給開始年齢を60歳から62歳に引き上げると発表。アイルランドも、4年間で総額150億ユーロ(約1兆6500億円)を削減する緊縮財政策を打ち出した。
前出のポール・クルーグマン氏は「財政赤字解消にこだわり過ぎたら、第3の恐慌が到来する。各国は禁欲生活に取りつかれている」と各国の動きに警告を発している。
だが、アメリカも財政再建にカジを切り始めるのは時間の問題だ。超党派の「財政責任・改革国家委員会」は、2020会計年度までに累計約4兆ドル(約335兆円)の財政赤字の削減を目指す最終報告案を公表した。景気が少しでも上向いたら、オバマ大統領が緊縮財政派に転換するのは間違いない。
「各国が財政再建にシャカリキになっているのは財政赤字が膨らむと市場の狙い撃ちにあって、国債が暴落する恐れがあるからです。しかし、あまり緊縮策に偏ると公的サービスがカットされ、一般国民が犠牲になる。かえって景気は悪化します。
本当は財政出動で経済を下支えしたいけれど、それができない。世界経済はかつてないジレンマに陥っているのです」(経済評論家・広瀬嘉夫氏)
巨大な財政赤字という魔物が、世界経済を潰そうとしている。