出世した途端 自己保身に走る スッカラカン上司に殺された (日刊ゲンダイ2011/1/4)


今の菅直人首相に、野党時代の面影はまったくない。トップに立った途端、自己保身にきゅうきゅうとし、前言撤回や責任逃れを繰り返している。職場の「スッカラカン上司」にも手を焼かされる。

◆かつては頼れる課長だったのに…
準大手ゼネコンで働く佐藤さん(40=仮名)の上司Aさんは、かつては頼れる課長だった。
佐藤さんは、A課長から目をかけられ、仕事のノウハウも一から教えてもらった。〈オマエは好きなようにやればいい。何かあったら俺に任せておけ〉と背中を押してくれたものだ。
佐藤さんがミスをして顧客からクレームが入ったときは一緒に謝罪に出向き、〈私の不注意でした〉と頭を下げてもらったこともある。 そんなA課長が、部長になってから一変した。
佐藤さんは、A部長が主導して立ち上げた中国進出プロジェクトの現場リーダーを任された。
〈お世話になったAさんに恩返ししたい〉
佐藤さんは意気込んでいたが、商慣習の壁が予想以上に高く、政治的に日中関係が悪化した影響もあって失敗。会社に大損害を与えてしまった。A部長は〈仕方がない〉と言うだけで、それ以上は責めなかった。
だが、報告のために揃って役員から呼び出されたとき、A部長の口から予想外の言葉が飛び出した。
〈現場で陣頭指揮を執っていた佐藤には期待していたんですが、まだ見通しが甘かった。もう少し慎重に進めるように指示したんですが……〉
動揺した佐藤さんは何も言えず、ひたすら頭を下げ続けた。
以来、佐藤さんが新しい提案をしても、A部長は〈失敗したら誰が責任を取るんだ。どうしてもやりたいなら、やってもいい。ただ、予算は出せないからな〉と、けんもほろろ。指示通りに動いてミスしても、〈勝手なことをされると困るんだ〉と叱責された。
「A部長にはガッカリです。部下が成果を挙げれば自分の手柄。失敗すれば責任を押し付けるという典型的なダメダメ上司になってしまった。出世競争が厳しいとはいえ、ここまであからさまだと情けなくなります」と佐藤さん。
人事コンサルタントの菅野宏三氏は言う。
「不況でリストラや減給が当たり前になった今の時代、自分が生き残ることしか頭にない自己保身上司は増えています。それまでは自分の数字だけを追って働いていればよかったのに、部下をまとめて使う責任ある立場になった途端、い

まのポジションをキープしようときゅうきゅうとしてしまう。失敗を極端に恐れ、責任転嫁も平気でする。この手の上司は、自分さえよければ周囲がどうなろうが関係ない。上の顔色をうかがって、指示もコロコロ変えるから、部下はたまりません」

◆生き残るためにできる部下を排除
薬品メーカー課長の山崎さん(43=仮名)は、懇意にしていたB部長に疎まれた。
山崎さんは、仕事の効率をアップさせるため、新システムの導入を提案。上層部からもゴーサインが出て、改善を進めたおかげで、山崎さんが所属する部署の売り上げは目に見えてアップし、他部署からも注目されるようになった。
B部長から声がかかったのは、ちょうどその頃だった。
〈今度、多角的な情報通信ネットワークを駆使して経営戦略の推進を図るための新しい部署が立ち上がる。キミの力を見込んで、そちらを助けてやってほしい。室長待遇でお願いしたいんだ〉
世話になってきたB部長から頼まれたとあって、山崎さんは即OKしたのだが……。
「新しく立ち上がった部署は名ばかりで、いわゆる閑職でした。私のほかにも、B部長のライバルと目されている社員が何人かいたことを考えると、体よく左遷したかっただけなんでしょう。信じた自分がバカなんでしょうが……」
山崎さんは後悔することしきりだ。

前出の菅野氏が言う。
「責任を押し付けられることを避けるため、上司からの指示や命令は必ずメモを取るなどして証拠を残しておくこと。仕事を進める過程で、〈○○の案件は、○○部長のご指示に従って進めていますが、これでよろしいでしょうか?〉とメールなどで確認を取っておく。嫌がられても、しつこいくらい報告することです。それとは別に、日付と内容を表にしておき、別の上司や同僚にも同じ内容の報告をして、証人を確保しておくのも効果的です」
ホウ・レン・ソウは、上司のためにやるんじゃない。スッカラカン上司から自分の身を守るためだ。
そんな上司から理不尽な非難を浴びたら、冷静に反論することも必要。〈コイツは何を言ってもおとなしくしている〉と思われると、自分がほぞをかむ羽目になる。相手に〈うかつなことを言うと反撃される〉と意識させることが、最大の防御だ。

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