人品卑し過ぎる 菅直人の挙動 (日刊ゲンダイ2011/1/6)

◆盗人猛々しい菅首相

徳川家康は、秀吉の死後に寝返った豊臣恩顧の大名を信頼しなかったという。そりゃ、そうだ。利害や打算で仲間を裏切るような変節漢は、だれだって信用できない。口が達者であれば、なおさらだ。スラスラと空疎な言葉を並べれば、薄っぺらな人間性が浮き彫りになる。菅首相が人を魅了できないのも当然だろう。
だれに吹き込まれたのか知らないが、菅は「小沢切り」で人気が出ると思い込み、年頭の記者会見で「不条理をただす政治をやる」「不条理といえば政治とカネ」と小沢批判を展開した。小沢元代表が強制起訴された場合は「政治家としての出処進退を明らかにし、裁判に専念すべき」と指摘し、事実上の議員辞職勧告までやってのけた。小沢のクビを差し出せば、20%の低空飛行を続けている支持率が上向くと勘違いしているのだ。まったく、オメデタイ男である。

国民は、菅が小沢にスリ寄り、権力を手に入れたことを忘れていない。元日に東京・深沢の小沢邸で開かれた新年会では、「今年は太鼓持ちがいないなあ~」と菅をからかう声が聞かれたという。昨年の新年会で家主の間近に陣取り、ペコペコと頭を下げて、乾杯の音頭まで取って喜んでいた幇(ほう)間(かん)への痛烈な皮肉である。
「当時は、すでに大久保元秘書が逮捕されるなど、小沢さんの政治資金問題は表面化していました。菅さんは、カネの問題の疑惑人であることなど百も承知で小沢さんに取り入り、ご機嫌をうかがっていたわけです。いまさら不条理だ何だと小沢切りに乗り出すなんてチャンチャラおかしい。そんな資格はありません」(民主党関係者)

◆大恩人をさらし者にする見苦しさ

小沢が鳩山と同時に身を引いたとき、「幹事長辞任で大きなケジメをつけた」と言ったのも菅である。とうに終わった問題だと、ほかならぬ菅自身が宣言していたのだ。ところが、外交戦略のなさ、政権運営の不手際を批判され、支持率が急降下した途端、わざわざ問題を蒸し返して、これでもかと叩き続けるのだ。盗人猛々しいとはこのことだ。

だいたい、小沢の自由党を迎え入れて民主党を拡大したのは菅である。その小沢は、大量にチルドレンを当選させて、歴史的な政権交代を実現した。なにがなんでも首相になりたかった野心家の夢をかなえた大恩人は小沢である。そんな相手も、権力を握り続けるためには、さらし者にしてなぶり殺そうとする。これは普通の感覚ではない。品性がとてつもなく卑しいのである。
こんな男だから、慕う仲間も少数だ。現職の総理として元日に首相公邸で新年会を催したというのに、集まったのは50人にも満たなかった。菅グループの中にも誘いを断った議員がいたほどで、ほぼ同時刻に120人を集めた小沢に完敗している。
「菅さんは、『こんなときに、よく行くよなあ~』と小沢邸に集まった議員を小バカにしていましたが、自分に人望がないという自覚はゼロ。去年は自分もはせ参じていたくせに、エラソーに見下す神経を疑いますよ」(ある議員)

さすがに小沢憎しの前原外相ですら、「政治とカネの問題は大事なテーマだが、政権が信頼されるために大事なことは政策の中身ではないか」と言い出した。それほど菅は見苦しいのだ。

◆何でもかんでも6月に先送りする愚鈍な首相

菅のデタラメは、政策を出しては引っ込める軽挙妄動ぶりにも表れている。政治評論家の有馬晴海氏が言う。
「菅首相は思いつきのコメントが多く、時間がたつとつじつまが合わなくなるのです。典型的なのが、消費税をめぐる発言。唐突に10%だとぶち上げ、『公約と受け取ってもらってもいい』と大見えを切りながら、参院選で旗色が悪くなると、低所得者には全額還付すると取り繕った。個人が支払った額を捕捉できない消費税を還付するなんて不可能ですが、その対象も200万円以下の低所得者からスタートし、250万円、300万円と引き上げ、最終的に400万円以下だと言い放ったのです。これは国民の6割が消費税を免除になる水準です。それでも選挙で負けそうだとなると、『いますぐ導入するわけではない』『検討すると言ったまでだ』などと釈明しています。その姿からは、信念や魂が感じられません」

その消費税について菅は、昨年のクリスマスイブの会見で、「年明けの段階で方向性を示したい」と表明した。ところが、年頭の会見では、「6月ごろまでをひとつのメドにして方向性を示したい」と半年も先送りである。

「平成の開国」とか言ってやる気マンマンだったTPP(環太平洋経済連携協定)への参加も、「最終的な判断は6月ごろ」とモニョモニョ言っていた。何ともハッキリしない愚鈍な男である。これが日本の最高指導者というのだからウンザリだ。

◆師匠に破門された男は信頼できない

「国民は完全にシラけています。菅首相の言っていることはウソばかりなんだと見抜いています。消費税も何もかも、なぜ6月がメドになるのかも説明されないのです。真剣に取り組む気があるとは思えません。多くの人が、どうせ口先だけなのだろうと見ていますよ。国民は政権交代で政治も暮らしも変わると期待しました。しかし、この1年半、政治は支持率目当ての小沢叩きが繰り返され、経済はちっとも上向かず、雇用も悪化の一途です。期待と現実のギャップは、菅首相になって、さらに大きくなっています。この政権は、期待も信用もできません」(政治評論家・山口朝雄氏)

菅は代表選で「市川房枝先生の選挙ボランティアから政治活動をスタートさせた」と話すなど、“市川門下生”を売りにしている。だが、晩年の市川は菅に愛想を尽かしていた。人間だから、好き嫌いは付きものだ。ウマが合わない相手もいる。しかし、「菅から届けられた花束をゴミ箱に投げ捨てたこともあった」(事情通)というから穏やかではない。よほど腹に据えかねることが重なったのだろう。

仲間から嫌われ、“師匠”からも破門同然という男が、国民の信頼を得られるわけがない。内閣改造などやらなくてもいい。もう十分だ。即刻退陣すべきである。


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