取調べの可視化を突然ブチ上げた 法務省のあざとい狙い

(日刊ゲンダイ2011/1/7)

とんだ茶番である。政府・与党が、犯罪捜査の取り調べの可視化に向けた改正刑事訴訟法案を2012年の通常国会に提出する方針を固めたという。可視化に反対だった法務・検察もついに降参か――と思ったら大マチガイ。批判をかわすための“工作”だった。
◆可視化議連の「全面」を防ぎたい一心 可視化をめぐっては、最高検が今年2月以降、特捜事件で「一部可視化」の試行方針を打ち出した。これを受け、法務省が6月をめどに具体案をまとめ、法制審議会に諮問する流れだ。
「新聞テレビは『検察の信頼回復の一歩』と持ち上げているが、法務省がとりまとめるところがミソ。可視化は民主党の可視化議連が『全面』可視化に向けた議員立法提出を目指しているため、『一部』にとどめたい法務省が先手を打ったのです」(司法ジャーナリスト)
法務省は政府提出法案としたことを「議員立法になじまないから」とし、全面可視化は「検察の受理件数は200万件と膨大なためにムリ」とゴネているらしいが、単なるヘリクツに過ぎない。
「議員立法になじまない合理的な理由が不明だし、受理件数が膨大といっても、そのうちの大部分は窃盗犯などコソ泥の類いだから手間も掛かりません。そもそも法相私的機関の『検察の在り方検討会議』が、今年春の提言で全面可視化を求めたらどう対応するのでしょうか。法務省はハナから検討会議の提言を受け入れる気がないと断言しているようなものです」(前出のジャーナリスト)
元大阪高検公安部長の三井環氏もこう言った。
「一部の可視化なら、検察の都合のいい部分だけが公判に使われることになる。今よりも状況が悪くなります。全面でなければ意味がありません」
法務・検察に信頼を回復しようという謙虚な姿勢はカケラもない。



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