「地域政党」ブームなぜ? 既存政党への不信感追い風
(朝日新聞2011年1月8日6時18分) http://p.tl/Xeyi

 4月の統一地方選を控え、「地域政党」の結成が相次いでいる。河村たかし名古屋市長の「減税日本」や橋下徹大阪府知事の「大阪維新の会」を代表格に、議員や各種選挙の立候補予定者も地域政党を結成。既存政党への不信感を背景にした動きで、「老舗VS.新興勢力」の対立軸を浮かびあがらせている。

 今回の地域政党ブームの火付け役となった「減税日本」「大阪維新の会」はともに昨年4月に結成。「減税日本」は次の名古屋市議選に約40人の擁立を目指し、4月の愛知県議選にも挑む。「大阪維新の会」も4月の大阪府議選や大阪市議選、堺市議選に大量擁立し、過半数確保をめざす。いずれも今春の地方選の「台風の目」になりそうだ。

 河村氏と連携して2月の愛知県知事選に立候補する大村秀章衆院議員も、地域政党「日本一愛知の会」を結成。昨年12月25日に名古屋市内であった事務所開きでは、自民党国会議員が「国民の願いに応えられない2大政党。大村さんが先陣をきって行動に移した」とエールを送る場面があった。

 狙いは、既成政党の切り崩しだ。「大阪維新の会」では、知事の高い支持率を背景に自民党の現職議員が雪崩を打つように加入し、現在は府議会で最大会派になった。大村氏もそれにならい、4月県議選へ地域政党から元職の擁立を決め、知事のイスを狙うと同時に議会の勢力拡大に向けた布石を打っている。

 橋下、河村両氏のような「首長主導型」だけではない。議員同士が呼びかけて独自に立ち上げる地域政党も、各地で産声をあげている。

 昨年4月には岩手県で「地域政党いわて」、8月には京都市で「京都党」、11月には大阪府吹田市で「龍馬(りょうま)プロジェクト×(かける)吹田新選会」、12月には京都府亀岡市で「亀岡・キセキ」と静岡県磐田市で「地域主権・静岡」が発足、名古屋市長選に立候補表明した杉山均市議も1人で地域政党「お山の杉の子」を立ち上げた。所属議員も1人から20人を超す党まで幅広く、「雨後の筍(たけのこ)」の様相だ。

なぜ、地域政党がブームになっているのか。

 その背景について、前岩手県知事の増田寛也元総務相が挙げるのは、「中央政党のふがいなさ」だ。現在の地方議会の実態は、民主党や自民党の下部組織に所属する議員を中心に構成。既成政党の構造そのものが、中央集権体質になっている現実がある。

 増田氏は「地域主権や地方分権を唱えていながら、政策は中央から降ってくるものが多く、有権者は物足りなさを感じている。『新鮮味』を打ち出すことで支持を集められると考えているのではないか」と指摘した。どれだけ成果が上げられるかは不透明で、流行に乗ろうとする動きについては、こう戒めた。

 「政党の中身がはっきりしないだけに、いざ多数を占めると『化けの皮がはがれる』ということもある」(寺西哲生、石井潤一郎)

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 〈地域政党〉地域の政治テーマの実現を目的とした政治団体。古くは1950年に結成された沖縄社会大衆党も含まれる。政党要件について、政党助成法では「国会議員5人以上が所属する、または国会議員が1人以上所属し、国政選挙で2%以上の得票をした政治団体」と定めている。地域政党は要件を満たしておらず、政党助成金は受けられない。このため、「地域主権時代にそぐわない」として改正を求める声もある。