民主と「ねじれ」 「原点」をしっかり胸に
(東京新聞:社説 2011年1月11日)http://p.tl/NIpX


 菅直人首相が月内に召集される通常国会を前に、態勢づくりに腐心している。国民が民主党に政権を託した原点を思い起こし、党が一丸となって「ねじれ国会」を乗り越える陣形を整えるべきだ。

 民主党は十二日に両院議員総会、十三日に党大会を開く。菅首相はその後、内閣改造を行って、二十八日召集予定の通常国会に臨む態勢を整えたいようだ。

 菅内閣は昨年の参院選後、ねじれ国会の厳しい現実に直面して窮地に立たされている。予算は衆院の多数で成立するが、関連法案は成立せず、予算が執行できない。野党側の協力が得られなければ、政権はたちまち行き詰まる。

 首相はこの危機を、消費税率引き上げをめぐる与野党協議の呼び掛けや、小沢一郎元代表を排除する「脱小沢」路線の鮮明化で乗り切りたい考えのようだ。

 しかし、民主党政権の本当の危機は、政治主導の確立や無駄な事業見直しによる財源捻出、緊密で対等な日米関係など、一昨年の衆院選マニフェストの約束が軒並み実現していないことにある。

 民主党内にマニフェスト見直し論があり、それを後押しする論調も見受けられるが、根幹部分を変えるのなら、そのまま政権にとどまることは許されない。

 少子高齢化の進展で社会保障費の増大が見込まれることは理解する。その財源として最終的に消費税率引き上げが避けられないとしても、それは行政の無駄を徹底的になくしてからではないのか。

 民主党政権は無駄排除に死力を尽くしたといえるのか。事業仕分けの挫折を増税の免罪符にされてはたまらない。マニフェストで掲げた原点を思い起こし、その実現のための態勢としてほしい。

 両院議員総会や党大会では「脱小沢」色を強める首相に、「親小沢」勢力から批判が噴出する可能性があるという。権力闘争が政治の本質だとしても、自民党の派閥抗争さながらの民主党の内紛は国民が政権交代に期待した姿からは程遠い。双方に自重を求めたい。

 マニフェストの約束が進展しないことには気をもむが、それだけで政権交代の意義が否定されるわけではない。自民党長期政権で積もった「澱(おり)」を取り除くためにも政権交代は必要であり、政策の選択肢が広がったことは政治改革の到達点の一つだ。

 菅内閣が政策面で自民党時代に回帰しようというのなら、民主党には存在意義はない。