小沢を敵役にして政権浮揚は姑息 (日刊ゲンダイ2011/1/13)

「これでは余計にガスがたまってしまう」。小沢一郎元代表を支持する川内博史衆院議員は、こう憤っていた。きのう(12日)の両院議員総会は、菅首相―岡田幹事長の民主党執行部が“ガス抜き”目当てに開いたものだったが、挙党一致を求める小沢シンパの議員たちにとっては、ますます不満が募る内容だった。菅と岡田は、相次ぐ批判に対し、全く聞く耳を持たないことがハッキリしたからだ。

◆「菅と小沢は敵と味方か」

小沢排除に血道を上げる執行部がやっていることは、“内ゲバ”以外の何物でもない。小沢グループの米長晴信参院議員のこの発言が、それを象徴している。
「小沢一郎元代表を敵だと思っているのか、味方と思っているのか。敵から味方を守るのが挙党一致の姿だ」
だが、菅と岡田はこの質問にマトモに答えないばかりか、「私は内紛とは認識していない」(岡田)、「私は最も挙党態勢を願っているひとりである」(菅)と、木で鼻をくくったようなことをいけしゃーしゃーと言ってのけた。よくもまあ、そんなしらじらしいウソを口にできるものだ。脱小沢をやめて、挙党一致を築いていれば、民主党はここまで国民の信頼を失っていないし、地方選挙も連戦連敗などしていないはずだ。
国民はもう、「政治とカネ」や「内輪モメ」にウンザリしている。昨夜の全国幹事長会議でも、地方県連の代表者が「有権者の声を聞くと、求めているのは『政治とカネ』より『景気』だ」と発言したという。菅が今やるべきは、こういう地方の現実に目を向けることだろう。


政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏がこう言う。
「菅首相が最優先すべきは少しでも早く予算を通すことで、そのためには通常国会を一日でも早く開くことです。なぜ1月の頭からやらないのか。24日召集で調整していますが、ズレ込んだのは、内閣改造や小沢国会招致など国民生活には全く関係のない民主党のお家の事情です。菅首相は口では『熟議』とか『景気』『国民生活』と言うのに、肝心の国会を開かず、答弁からも逃げ回り、やっていることはメチャクチャ。結局、自分の失政を覆い隠すために、世間の関心を小沢問題に振り向けているのです」その内閣改造だってメチャクチャだ。今ごろになって「予算審議のため少しでも早く国会を開く必要がある」とか言い出し、17日改造の予定を14日に前倒し。おかげで、閣僚の外遊日程キャンセルや日程短縮が相次いでいる。相手国に失礼じゃないか。
菅のやることは全てが場当たり。国益を失うことになりかねないが、そんなことはお構いナシだ。スッカラ菅の頭の中にあるのは、「小沢を敵役にすれば政権浮揚できる」というバカのひとつ覚えの短絡的思考だけなのだ。
「菅―岡田の執行部は、両院議員総会で『政倫審がひとつの区切りになる』と言っていたが、これは大ウソ。小沢さんが強制起訴になれば、離党勧告や除名を言い出すでしょう。どこまでも小沢カード頼みなのです」(鈴木哲夫氏=前出)
総会中、じっと目を閉じて座っていた小沢は、終了後、笑顔を見せながらゆっくり席を立った。いつまでも自分をダシにする救いようのない菅―岡田の姑(こ)息(そく)さに、さぞ呆れ返っていたことだろう。

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