ついに狂ったか 菅と与謝野 (日刊ゲンダイ2011/1/14)

◆節操も思想もない権力亡者と恥と外聞もない場当たり首相

これぞ、老醜の極みというべきではないか。与謝野馨元官房長官のことだ。民主党の政策をメッタ切りにしてきたくせに、菅首相から“協力”を求められると、あっさり軍門に下ったのである。今度の改造で、経財相に就任することになったが、あまりの無定見には内外から批判が噴出している。
与謝野がこれまで民主党政権をどう批判してきたか。近著「民主党が日本経済を破壊する」(文春新書)にはこうある。
〈民主党は「コンクリートから人へ」というスローガンで、公共事業などを抑制する代わりに子ども手当などを手厚く支給する「直接支援」でとたんに家計の懐が温かくなり、個人消費が急増して景気が良くなるような説明をしている。冗談ではない。「子ども手当」などと名前を付けてお金を配っても親が子供のために消費に回す保証はどこにもない。断言すれば、民主党のマニフェストは純粋に選挙用のフライングフィッシュ(毛バリ)みたいなものだ〉
それなのに、昨年暮れから、菅の求めに応じて、何度も会談。「たちあがれ」と民主党との連立話を密かに進めてきたのである。

「与謝野さんにしてみれば、政界再編を期待し、自民党を離党、“たちあがれ”をつくったものの、衆参6議員の小所帯で埋没していた。このままでは政治的影響力を失ってしまう。その焦りから、菅政権に擦り寄り、もう一花咲かせたいと思ったのでしょうが、あまりに性急で無定見な話です。さすがに連立話はたちあがれ党内の反発に遭い、立ち消えになった。あきらめ切れない与謝野は、単身脱党し、菅政権に馳せ参じることになったのです」(永田町関係者)


与謝野は今度の改造で、税制と社会保障の一体改革を進める特命も担うとみられている。与謝野周辺は「非難は覚悟の上」「自分への批判よりも日本経済だ」と力む。しかし、民主党政権とは政策の基本的スタンスが水と油なのである。大臣ポストに目がくらんだと見られてもしょうがない。自民党の谷垣総裁は「論評の価値はない」と切り捨てたし、政治評論家の浅川博忠氏も呆れてこう言う。


「完全に晩節を汚しましたね。節操のなさには驚きますが、菅首相も同じです。なぜ、民主党を痛烈批判してきた人物に協力を求めるのか。感性を疑います。民主党内だって“なぜ”と思うだろうし、野党・自民党には格好の攻撃材料を与えてしまった。内閣支持率も下がるでしょうし、いいことはひとつもないのです」
与謝野は「私は政策に実現性を持たせることを中心にやってきた」と言い訳していたが、これを世間では“大臣病”という。権力亡者の正体バクロだ。

菅は菅で「財政健全化、社会保障のあり方に対しては非常に熱心にやった方だ。そういうところでは、私や民主党の考え方と共通性が高い」とか言ったが、これも詭弁だ。
きのうの党大会で菅は「民主党が進めてきたことは間違っていない。子ども手当は歴史上、画期的な政策だ」と自画自賛していたが、与謝野は子ども手当をボロクソなのだ。要するに、与謝野という相談相手が欲しいだけなのである。
理念なき政治の個利個略とご都合主義には国民はもうウンザリだ。

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