完全に旧自民化した裏切り菅政権 (日刊ゲンダイ2011/1/15)


◆狂気の沙汰の内閣改造

いったい、なんのために何日間も迷走したのか。菅首相が「最強の体制にするための内閣改造を行いたい」とタンカを切った改造人事が、ようやく決着した。結果はドッチラケもいいところだ。
あれだけ大騒ぎして、サプライズなし。13人が留任し、新任はたったの4人だけだ。しかも、そのうちの3人は、72歳の与謝野馨経財相、70歳の中野寛成国家公安委員長、69歳の江田五月法相と老人ばかり。さらに、78歳の藤井裕久まで官房副長官に引っ張りだしている。もう1人の新任、枝野幸男官房長官は、幹事長として参院選を戦い、国民から“ノー”を突きつけられた男。

いくらなんでも、これじゃ国民がワクワクするはずがない。政治評論家の山口朝雄氏が、呆れながらこう言う。
「今度の組閣人事は、国民の支持を失った菅内閣が、生まれ変わり、国民から支持を取り戻す最後のチャンスでした。ここで清新で優秀な中堅若手を次々に大臣に抜擢すれば、マイナスイメージを払拭できたかもしれない。と同時に、小沢グループから起用して挙党態勢を進めれば『なかなか、やるじゃないか』と求心力も高まったはずです。ところが、若手の抜擢も、小沢グループからの起用もゼロ。しかも、選んだのは、よりによって使い古しのロートルばかりです。自民党に嫌われている与謝野馨を入閣させたために、野党との関係まで悪化させている。これでは支持率もアップしないでしょう。いったい、首相はなんのために改造したのか。どうかしています」ホント、よくぞここまでヒドイ組閣ができたものだ。


◆本気で長期政権になると信じている異常

ところが、頭がおかしくなったのか、最近の首相は周囲が心配するほどのハイテンション。エラソーなことばかり口にしている。
党大会では、消費税と社会保障の一体改革に向けた超党派の協議を呼びかけ、「野党が協議に参加しないなら歴史に対する反逆行為だ」と、まるで自分が歴史をつくっているかのようなことまで口にする始末。
かと思えば、全国幹事長会議で「こんなに活動資金が使える政党に身を置いたことは初めてだ。大いに使おうではないか!」とうれしそうに宣言。さすがに、党員から「政党助成金なのになにを言っているのか」と、呆れる声が上がったほどだ。

「シナリオ通り『小沢排除』が進んでいるためか、首相はすっかり自信を持ち始めています。両院議員総会でも『菅内閣の7カ月は間違っていなかった。自信をもって前に進んでいこう』と語っています。通常国会で予算さえ成立させてしまえば、長期政権になると思っているようなのです。若手議員に『10年総理をやりたいんだ』と漏らしたといいます。誰に吹き込まれたのか知らないが、どうやら『消費税アップ』と『TPP参加』を実現させれば、政権を維持でき、歴史に名を残せると本気で思い始めている。4月の統一地方選が終われば、自民党も公明党も『消費税』と『TPP』で協力するはずと信じ込んでいます」(民主党関係者)
もともと、首相は「政争」になると高揚するタイプだが、最近は「小沢に勝った、小沢に勝った」と盛んに口にしているという。


◆「与謝野内閣」になり「国民生活が第一」は捨て去られる

今度の組閣でハッキリしたことは、菅首相が「国民生活が第一」という民主党の理念を完全に捨て去ったことだ。
与謝野馨が入閣したことで、菅内閣が「仙菅内閣」から「与謝野内閣」に大きく性格を変えることは間違いない。恐らく、経済政策は与謝野経財相に丸投げすることになるはずだ。しかし、与謝野は民主党のマニフェストを「選挙用のフライフィッシング(毛ばり)」とまで批判していた人物である。経済政策を任せたら「国民生活が第一」という民主党の政策を跡形もなく変えられてしまうのは目に見えている。

早くも首相は、民主党のポスターから「国民生活が第一」のフレーズを削除してしまった。
「財務省とベッタリの与謝野大臣が、根っからの『消費税増税派』だというのは、誰もが知っていることです。その与謝野を経財相に起用したということは、菅首相が消費税アップに道筋をつけようとしているのは明らかです。しかし、民主党は09年マニフェストで『財源はムダの削減で生み出す』『消費税は4年間上げない』と約束していたはず。首相は『マニフェストを見直す』と簡単に口にしているが、総選挙からまだ1年半しか経っていないのに国民との約束を破るなんて許されるのか。こんな国民をバカにした話はないでしょう」(山口朝雄氏=前出)
そもそも、民主党は「自民党政治」を否定して政権に就いたはずだ。なのに、総裁選にも出馬した「ザ・自民党」のような与謝野馨を主要閣僚に迎えるなんて、どう考えてもおかしい。


◆国民は裏切った民主党を許さない

ただでさえ民主党に失望していた国民は、今度の組閣を見て、完全に愛想を尽かしたのではないか。国民が09年総選挙で政権交代を実現させたのは「民主党なら自民党とはまったく違う政治をやってくれるはずだ」と期待したからだ。「政治主導」「脱官僚」「国民生活が第一」というキャッチフレーズは新鮮だった。

ところが、無能なスッカラ菅首相は、マニフェストに書いてあることを実行せず、書いてないことばかりやっている。その揚げ句、選挙もしないでマニフェストを変えようなんて冗談じゃない。
「菅内閣がスタートしてから、あらゆる選挙で連戦連敗しているのは、国民が期待した『革命的な変革』がまったく進んでいないからです。もちろん、国民だって1年や2年でなにもかも実現できるとは思っていない。問題なのは、菅首相には『なんとかマニフェストを実現したい』という姿勢すらないことです。少なくとも、鳩山内閣には理想と情熱だけはあった。いま、菅内閣がやっている政治は自民党とまったく同じです。『官僚』『大企業』『米国』の3つしか見ていない。なぜポスターから『国民生活が第一』の理念を外したのか。国民は、裏切った民主党を絶対に許さない。この先、民主党に期待した有権者ほど票を投じないはずです」(政治評論家・本澤二郎氏)

どうせ、無能な菅内閣は予算が通らず3月末に国会で立ち往生し、4月の統一地方選で大惨敗するだろう。しかし、歴史的な政権交代まで無にしようとしているのだから、その罪は大きい。




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