官邸不協和音で機能不全必至 (日刊ゲンダイ2011/1/18)

◆[軽量級]枝野官房長官、[財務省ベッタリ]藤井副長官、[風見鶏]細野補佐官

首相官邸の新体制が決まったが、これが菅の言う「最強の布陣」なのか? “軽量”官房長官に財務省ベッタリのロートル副長官という逆転現象。留任した2人の首相補佐官は菅ヨイショのチルドレンだし、新任補佐官は小沢元代表と前原外相の間を行ったり来たりの風見鶏。官邸主導に程遠いばかりか、それぞれが勝手に暴走して官邸崩壊の事態を招きかねない。
早くもきのう(17日)、“官邸不一致”が露呈した。テレビ出演した藤井官房副長官(78)は、2011年度までの消費税増税方針を盛り込んだ09年度税制改正法について、「これは既に法律なので、与野党とも忠実に従わなければいけない」と言い放った。自公政権当時に成立した法律なのに、増税に前のめりの藤井は、そんなことお構いなしだ。一方、息子ほど年が離れている官房長官の枝野(46)は、17日の記者会見で、「(消費税を)政治的にいつどうするかについては、民主党のマニフェストも踏まえなければならない」と発言し、増税に慎重な姿勢を強調。藤井路線に抵抗を見せたのだ。
官邸の実質的な仕切り役が、副長官の藤井なのは国民もお見通しだ。しかし、財務省の意向を受け、民主党内を無視して藤井が増税に突き進めば、党内の反発の矢面に立たされるのは長官の枝野だ。2人の溝は深まり、官邸はガバナンス不全に陥る。

◆留任の補佐官2人は無力で問題外

増員した首相補佐官も機能するのか危うい。留任した寺田と加藤は菅の話し相手程度といわれるほど無力で、党と官邸のパイプ役を担うのは細野と三重選出で岡田に近い芝だ。前原グループながら代表選で小沢を支持した細野の補佐官就任には小沢グループの1年生議員から「民主党の政策をどんどん変質させている菅政権に入るなんて、ガッカリした」との声が上がる。菅は“権力”で細野を取り込んだつもりだろうが、それは甘い。風見鶏で処世術にたけた細野は、小沢と前原を両てんびんにかけ、ポスト菅の次の次の世代を狙って力を蓄えるつもりだ。
政治ジャーナリストの野上忠興氏はこう言う。
「官房副長官や首相補佐官は、次代を担う若手の登竜門でした。官邸入りすることは、それだけ重みがあったのに、菅官邸の陣容はあまりにも軽すぎます。ただし、細野氏は要注意。今、あえて小沢氏とのパイプを切る必要はないからです。細野氏から小沢サイドに情報が筒抜けになる可能性もありますから、官邸内に疑心暗鬼が生まれ、官邸チームがギクシャクすることになるかもしれませんよ」
尖閣問題の後処理で密使役で訪中したことからも分かるように、細野には中国とのパイプもある。再び尖閣問題のような外交衝突があれば、対中関係で問題発言をしでかした枝野との関係も含め、官邸内でひともんちゃく起きるのは間違いない。結局最後は、官邸は財務省と外務省の策略と野心満々3人男の衝突で機能不全→崩壊になるのが関の山だ。




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