小沢排除で支持率上昇狙いの菅首相の邪悪 (日刊ゲンダイ2011/1/20)

◆民主党四人組の卑劣

民主党の常任幹事会は19日、今度の通常国会で衆参両院の委員会メンバーを差し替えることを決定した。

小沢系議員が幅を利かせている政治倫理審査会と予算委員会を脱小沢派で固めるためだ。そうすれば、政治倫理審査会への招致議決や予算委員会での証人喚問をフリーハンドでできるようになる。

この決定を行った常任幹事会には新たに仙谷前官房長官が代表代行として、鉢呂前国対委員長、岡崎トミ子前国家公安委員長、直嶋正行元経産相が副代表として、加わった。いずれも反小沢系。これにより、常任幹事会も反小沢系が過半数を占めることになり、離党勧告や議員辞職勧告など、やりたい放題ができるようになった。
すべては小沢を追い込み、締め上げるためのシフトである。

一体、何なのだ、この党は?

作家の大下英治氏は「敵はどこにいるのか。菅首相にとって、敵は自民党であり、官僚組織でしょう。それなのに身内の小沢さんを標的にして、叩き、政権を弱体化させている。まともじゃない」と呆れていたが、本当だ。
しかも、その手口のえげつなさ。委員会のメンバー差し替えなんて、言論封じの禁じ手だ。旧ソ連じゃないのである。

小沢系の国会議員の中には元左翼の活動家、仙谷の小沢切りを「連合赤軍のリンチ」に例える者もいる。それほど異様で執拗、陰湿、卑劣という意味だ。

ジャーナリストの斎藤貴男氏もこう言った。
「左翼の内ゲバに見えますね。角棒を振り回す対象が小沢氏になっただけ。戦う相手が違うでしょう」
これが国民の声なのに、小沢切りに狂う菅執行部の暴走はエスカレートする一方だ。コイツらはとてもじゃないが、マトモではない。背筋が寒くなってくるのである。


◆トチ狂った四人組みが小沢を追いつめる

小沢排除に血道を上げているのは、民主党全体ではなく、いわゆる四人組だ。菅、仙谷、枝野、岡田の4人である。この権力者4人が揃いも揃ってトチ狂っている。
鳩山前首相は今度の改造人事について、「(首相は)挙党態勢を望むと言いながら、自分の仲間だけで決めてしまう。『どうぞ4人でやりなさい』という気持ちだ」と吐き捨てたが、この4人が人事権という“角棒”を振り回し、小沢一派を蹴散らしているのである。

一体なぜ、彼らはかくも小沢切りに懸命になるのか。
連合赤軍をエスカレートさせたのは「リンチは徹底的にやらないと次は自分がやり返される」という恐怖だったというが、それだけではなさそうだ。

そこには複数の要素、理由が絡み合う。
「菅さんの気持ちの根底にあるのは恨みですよ。現職首相なのに代表選で追い詰められた。しかも、小沢氏に投票した議員の一部には、金が回った。政党助成金が原資なのに、小沢の金のようにして配られた。こういう政治手法が気に入らないというのが根っこにあって、これに徹底的にやらないと逆に潰されるという恐怖感が加わった。さらにここで小沢氏を叩きのめせば、小沢支持の議員も寝返るという計算もはたらいています。代表選で小沢氏に投票した国会議員は200人ですが、そのうち、ガチガチの小沢一派は30人くらいでしょう。約150人はフラついている。人事で小沢一派を締め上げれば、150人はグラグラになる。強制起訴される小沢氏から数の影響力を排除すれば、ただの人になる。だから、徹底的にやるのです」(党内事情通)


◆自分たちの無能を覆い隠すための小沢叩き

そして、もうひとつ、彼らが信じているのが、脱小沢路線こそ、政権浮揚になるという妄信だ。
そのために、彼らはこれ見よがしに小沢排除というアクセルを踏み込むのである。人事で小沢グループを締め上げ、政倫審に向けた手続きを演出する。小沢が応じなければ、離党勧告だ。こちらはきちんとステップを踏んでいる。文句はあるか。そういう思惑、シナリオだ。
こうやって小沢を悪者に仕立てることで、自分たちの無能を覆い隠そうとしているのだが、これぞ、本末転倒だ。
小沢一派を取り込みたいなら、菅自身がリーダーシップを発揮し、求心力を見せればいい。政権浮揚を目指すならば、実行力があるところを示せばいい。しかし、スッカラ菅にはそれができない。だから、小沢を“利用”するしかないのである。


◆スッカラ菅の正体はとっくに見透かされている

菅は気づいていないのかもしれないが、こうした薄汚い思惑はとっくに有権者に見透かされている。だから、いくら小沢を叩いても内閣支持率は上がらない。いい加減に気づけばいいのに、バカな男だ。
評論家の小沢遼子氏はこう言った。
「TVの小沢バッシングを信じちゃう人は別として、ちょっと冷静に物を考える人であれば、小沢氏が無罪になる確率が高いことをよく知っています。それだけに、小沢氏を叩いて、政権浮揚をもくろむ菅首相の言動は卑しい。首相の品格を疑います。小沢氏はこれから裁判を迎える。そこで白黒がつく。小沢さんは自分は潔白であると言っているのですから、裁判の結果を待てばいい。大体、何が小沢疑惑なのか。さっぱり分からないじゃないですか。それなのに、強大な権限を有する首相が仲間であった小沢氏に対し、出処進退を迫る。小沢氏を追い詰めるべく、国会の委員会のメンバーまで差し替えるのだとしたら、非常に怖いことです。こんなことをしても、菅内閣の支持率が上がりません。逆効果になるだけです」

小沢疑惑は検察があれだけ調べても起訴に持ち込めなかった。政治資金収支報告書の期ズレは何の問題もないし、たとえ問題があっても、よっぽどの悪意がない限り、小沢の刑事責任は問えない。
裏金の証拠でもあればともかく、それがなければ、無罪は決定的なのである。


◆何をやってもこの政権はもうオシマイ

そんな小沢をダシにして、政権浮揚をもくろむなんて、人間性を疑ってしまうが、これが菅ら四人組の正体だ。
「菅首相が本当に小沢氏に政治責任を問いたいのであれば、昨年秋に検察審査会が強制起訴議決をした時になぜ、問題にしなかったのでしょう。岡田幹事長に丸投げして、様子見を決め込んでいたではないですか。年明け以降、小沢切りに乗り出してきたのは、小沢氏が追い詰められてきたとみたからです。国民はそういうズルイところをきっちり見ている。だから、脱小沢人事を強行しても支持率がさして上がらないのです。ここで小沢氏を追い詰めても野党が国会運営に協力してくれるわけではなく、小沢の次は与謝野さんということになる。早晩、菅政権は行き詰まるとみています」(政治評論家・浅川博忠氏)

醜悪で卑劣、邪悪な権力亡者が何をやったところで無駄だ。内閣支持率は上がらないし、国民から見放されれば、ねじれ国会の中で悶絶死することになる。スッカラ菅首相には、ふさわしい末路というしかない。




※日刊ゲンダイはケータイで月315円で読める。
この貴重な媒体を応援しよう!
http://gendai.net/