【第3回】問題の「期ズレ」が起きたのは 世田谷の土地が「農地」だったからだ [国民は騙されている 小沢「強制起訴」の虚構]

(日刊ゲンダイ2011/1/21)

「(04年に)土地代金を支払っているのに、本登記を翌年(05年)にずらしている」――。

東京第5検察審査会が1回目の議決で「諸工作で、マスコミ等に騒がれないための手段と推測される」と判断した「期ズレ」はなぜ起きたのか。

繰り返し言うが、04年10月時点で世田谷の土地を買ったのは、あくまで小沢個人。資金管理団体「陸山会」の資産ではなかったから、その政治資金収支報告書に記載する必要はない。しかも、10月時点では所有権移転請求権を「仮登記」しただけである。

ただ、この段階で「仮登記」といった面倒な手続きを取らず、すぐに所有権移転を「本登記」し、「陸山会」と“使用権に関する確認書”を取り交わしていれば「期ズレ」問題は起きなかった。法務局に何度も足を運んでムダな登記手数料を払う必要もなかっただろう。なぜ、あえて「仮登記」にしたのか。
「不動産登記簿の『地目』がポイントです。小沢氏が買った土地は当時、『畑』でした。農地売買は農地法に基づく手続きが必要で、地方都市などでは地元の農業委員会の許可を得るのに数カ月かかることも珍しくありません。許可が出るまでの間、『所有権』を公的に主張できず、『仮登記』という手段が取られるケースが多いのです。小沢さんの政治団体が買った世田谷区深沢8丁目の土地は『宅地化農地』のため、当然、世田谷区農業委員会への届け出が必要です。届け出をすれば、普通は2週間程度で受理されますが、1カ月以上かかる場合もあります」(不動産業界関係者)


小沢が昨年1月の会見で説明していたように、当時は秘書の「事務所兼住宅」を探していた頃。たまたま見つけた土地が「農地」であり、その土地を一刻も早く押さえようと「仮登記」したと考えれば説明がつく。


世田谷区の別の不動産業者はこう語った。
「仮登記という、普通はやらないことを小沢さんがやったのは、農転(農地転用)の手続きがあったからと考えるのが妥当です。登記簿を見ると、小沢さんは04年10月5日に売買予約をしている。つまり問題の土地を買う契約をした。で、10月29日に仮登記をしている。恐らく、契約をしてカネも全額支払おうとしたが、農転の手続きが終わっていなかったから、仕方なく仮登記をしたのでしょう。こういうケースはいくらでもあるし、問題の土地の登記簿には何ら問題点はない。どの業者に聞いても、そう言いますよ」

世田谷の農業委員会を直撃したが、「いつ受理通知を出したか分からない」とのことだった。小沢事務所は、裁判に関わることなのでいつ農業委員会から許可が下りたかは明かしていない。しかし、許可に手間取り、さらに暮れの12月に入り、小沢事務所が忙しくなり、最終的な売買契約完了が年をまたぎ、翌年1月7日になったとしても、特別不自然なことではないのだ。要するに、「期ズレ」の疑惑は、どうでもいいささいな、とってつけた疑惑なのだ。
読売新聞はじめ大手マスコミや検察が、それでもこの土地売買にこだわったのは、購入資金4億円の中に水谷建設からの裏金がまざっていたと見立てたからである。だが、その見立てもすべて崩れている。
(つづく)

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