石川知裕:私が事情聴取を録音した理由

(THE JOURNAL 2011年1月21日) http://p.tl/vKXa

 東京地裁は20日、小沢一郎元民主党代表の政治資金管理団体「陸山会」の土地購入を巡る事件で、石川知裕衆院議員が再聴取の様子を録音した記録や勾留中に弁護人に宛てた手紙について証拠採用することを決定した。

 同日、《THE JOURNAL》のインタビューに応じた石川氏は、昨年5月17日の事情聴取の録音を行った理由に作家の佐藤優氏の助言があったとし、その際の聴取で、調書の内容を変更しないよう圧力を受けたことを明らかにした。また、2月7日から始まる公判では、水谷建設から5000万円を受けとったとする検察側の主張も全面否認し、虚偽記載に問われている部分についても「違法性の認識がなかったことを主張したい」と語った。

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── 2月7日に初公判が開かれますが、現在の心境を

無罪を主張して頑張ります。ただ、年末から風邪をひいたりして体調を崩してますので、きちんと気力を保ちながら、公判に向けて頑張りたいと思います。

私自身は小沢一郎元民主党代表の秘書時代に処理した経理について罪を問われています。国民のみなさんに誤解されてるのは、私が秘書として行なった業務が小沢さんとの共謀とされ、検察審査会で2度の起訴相当の議決がされました。

一方、小沢さんについては世論調査で議員辞職すべしという割合が高まっているにもかかわらず、「次の総理は誰か」の質問では1位になっている調査もあります。これは、小沢一郎の政治手腕に期待するけれども(まずは裁判を)クリアしてくれという意味だと思うので、それがなければ菅さんに変わって小沢さんが首相になるべきだということだと思います。

その意味で、私の供述によって検察審査会で共謀があったとされ、「裁判で黒白をはっきりさせるためにお白州に引き出せ」ということになったわけで、誠に申し訳ないと思っています。

── 裁判で訴えたいことは

保釈後に水谷建設関係者の調書を読みました。そこで語られているのは、大久保(小沢氏元秘書)さんが水谷建設から現金5000万円を渡される直前になって「今日は忙しいから石川という者に行かせます」ということです。また、その供述をした川村という人は、調書の中で「石川さんはあまり顔に特徴がないから、会ったときにわかるかわからないか自信がありませんでした」と語っています。

しかし、小沢事務所では私の方が大久保さんより先輩で、大久保さんが私に金を受け取りにいかせるなどという人間関係はありえません。そういう事務所内の基本的な人間関係を無視し、川村氏が「大久保さんが石川に取りに行かせた」と供述していることがおかしい。ただ、私自身にその日に明確なアリバイがないというだけで検察側がタクシーチケットや新幹線のチケットで立証しようとしてますけれども、私もきちんと裁判長に訴えるだけの資料を提示し、そういう事実がなかったことを弁護団と一緒に証明したい。

── 弁護団の証拠資料として、小沢元代表の一度目の起訴相当議決の後に行われた再聴取(2010年5月17日)について、その様子を録音したICレコーダーの存在が明らかになりました。なぜ、録音を考えたのですか?

佐藤優さんから強い勧めを受け、レコーダーを持って行きました。佐藤さんに言われたのは、「検察も調書や証拠のリークを平気で行ってるわけだから、自分の身を守るという意味も考えて」と強く示唆され、持っていくことにしました。

最初に検事から「録音してないよね」と言われ、「していません」と回答しましたが、ものすごいプレッシャーでした。聴取の間も2~3回はトイレに行ってますので、その間に検察官にカバンの中を確認されたら「なんだこれは」ということになります。その間も緊張しました。

── 勾留中に送った手紙の証拠申請を出されています

自分としては不本意な調書にサインしてしまったことが何回もありました。そうしたことを当時弁護団に加わっていた安田好弘先生からアドバイスを受け、手紙に書きました。回数と枚数は忘れましたが、勾留中に何度か手紙を書いて、安田先生に送っています。

──手紙を書いていたときは精神的にもつらかったのでしょうか

そうですね。これは経験した人でしかわからないと思いますが、毎日水谷建設の事について聞かれ、特捜部の副部長(編集部注:吉田正喜氏)から「石川さんは金を預かったけれども、忘れただけなんだ」ということを言われるわけです。そうすると私も感覚が麻痺してきて、「大久保さんに言われて預りに行ったけど、忘れたんじゃないか」と思えてくるんです。

また、これは不思議なことなんですが、日々接している検事と人間関係もできてくるんです。これは佐藤優さんとも意見が一致しました。最初の3~4日間は調書をとられてないのですが、「そろそろ調書を取らしてくれ」と言われると、だんだん検事に対して「上の人に言われて大変なんだろうな」と思えてくるのです。こちら側も弁護士にいろいろと言われて大変に感じてくるので、共通の人間関係ができてくるんです。

そうした中、検事に調書の内容について「こんな強く書かれたら困ります」と言っても、「石川さん、ここまで強く表現しないと上が納得しないから」と言われ「大丈夫、小沢さんは起訴にならないから」ということを示唆されるわけです。

──5月17日の再聴取でもそういうやり取りはありましたか?

ある程度あったとは思いますが、実のところ、自分の事情聴取を自分で聴くのはいやなので、内容は聞いてないんです。記憶にあるものはお答えしていますが、あとは弁護団にお任せしています。

── 聴取の中で圧力を感じましたか?

検察としても、強制起訴になると検察官が不起訴としたものを審査会が強制起訴にするわけです。そうすれば検察批判もおきます。私としても小沢さんが強制起訴されない方がいいと考えている。そこで検察側と小沢さん側で利害が一致しているということです。だから「(調書の内容を)変えるのはよくない」ということは言われました。

── 公判では検事は収支報告書の記載の悪質性について主張してくると思いますが、石川さんは違法性の認識はなかったのでしょうか?

違法性の認識があれば立候補していません。検察側としては汚い金があったから隠したかったとしたいのでしょう。私は、不動産の登記をずらすことは司法書士に確認して「仮登記してから本登記したのならいい」ということを聞いた上で手続きを行っています。公判でも違法性の認識がなかったことを主張したいと思っています。