●新党結成も視野=要求貫徹へストも-チュニジア最大労組
(時事通信2011/01/23-02:31)http://p.tl/mBEh
 【チュニス時事】チュニジアのベンアリ独裁政権の崩壊で主導的な役割を果たした同国最大の労組、チュニジア労働総同盟(UGTT)のシミ・モハメド副事務局長は22日、新党結成を視野に、新政権に対して1~2年後の民主的な大統領選挙や議会選の実施を求める意向を明らかにした。時事通信との会見で語った。
 同副事務局長は選挙について「半年では準備が間に合わない」と指摘。23年続いた独裁政権下で本格的な野党が育たなかったとして、新党の立ち上げも含め、最低でも1年の準備期間が必要だと述べた。
 モハメド副事務局長はベンアリ前政権からの刷新を求め、要求貫徹に向け、加盟労組の組合員約50万人を動員したストも辞さないと語った。
 新政権に関しては、「新政権にはベンアリ前政権の閣僚が数多く残留しており、独裁や腐敗の象徴を徹底的に排除することが必要だ」と強調。UGTTトップがメバザア暫定大統領と会談するなど、デモと並行して新政権に要求を突き付けているという。



●前大統領側近ら33人尋問、千人以上を逮捕 チュニジア
(CNNニュース 2011.01.22 16:24) http://p.tl/ukd5

戦車に花を飾るチェニジア軍兵士。前政権崩壊は同国の国花にちなみ「ジャスミン革命」とも呼ばれる

ベンアリ前大統領による23年間の強権支配が倒れた北アフリカのチュニジア情勢で、暫定連立政権のフリア内相は21日、前大統領の側近ら33人を取り調べ、旧体制崩壊に伴って起きた暴力事件に関連し1200人を逮捕したと発表した。国営TAP通信が報じた。

33人には前大統領に近かった一族のメンバーで前大統領警護隊の責任者やベンアリ氏のおいも含まれる。33人が保有する宝石類や巨額の金も没収された。逮捕された1200人のうち一部は釈放されたが、382人は武器の不法所持、略奪や暴力行為で起訴される方針。

国営のチュニスTVは、首都チュニスでは21日にも数千人規模のデモが発生、旧政権の幹部らが加わる連立政権の不当性などを非難したと伝えた。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)によると、ベンアリ前政権崩壊につながった過去5週間の騒乱で死亡したデモ参加者らは100人以上で、発砲、自殺や刑務所の暴動などに絡んでいる。

ベンアリ前政権の崩壊は、同じく強権体制が続く隣国アルジェリアやエジプトで反政府派を鼓舞する形にもなっている。

チュニジアの連立政権は20日、初の閣議を開き、すべての政党を承認し、すべての政治犯を釈放する方針を打ち出している。前政権の与党・立憲民主連合(RCD)の中央委員会は解散し、同党に所属する閣僚全員が離党を決めた。フリア内相は政党の公式認可を求める手続きを取った全政党が承認に関する肯定的な回答を得たと述べた。



●サウジでも焼身自殺 アルジェリアではデモ
(共同通信2011/01/22 21:12) http://p.tl/AtJ3

 【カイロ共同】ロイター通信が伝えたサウジアラビアでの報道によると、サウジ南西部サムタで21日、60代の男性が焼身自殺を図り、病院に運ばれたが死亡した。

 動機などは不明だが、チュニジアの「ジャスミン革命」のきっかけになった失業中の若者の焼身自殺に触発されたとみられる。

 一方フランス公共ラジオによると、アルジェリアの首都アルジェでは22日、当局が禁止したデモに参加した約300人と警官隊が衝突、デモを主催した野党、文化民主連合(RCD)関係者によると、数人が負傷、拘束された。

 デモも政変の影響を受けたもので、物価高騰や失業対策を訴えていたという。


●スイスの元銀行幹部、ウィキリークスに情報提供で逮捕
(ロイター2011年 01月 20日 10:17)http://p.tl/eVbR
 [チューリヒ 19日 ロイター] スイスの裁判所は19日、同国の金融機関ジュリアス・ベアの元幹部、ルドルフ・エルマー氏に対し、銀行秘密法違反などの罪で罰金の有罪判決を言い渡した。同氏は判決後、政府等の内部文書を公開する民間サイト「ウィキリークス」に顧客情報を提供した容疑で、警察当局に逮捕された。

 ジュリアス・ベアの英領ケイマン諸島オフィス元責任者だったエルマー氏は、17日にウィキリークス創設者のジュリアン・アサンジ氏とロンドンで記者会見を行い、約2000の口座にかかわる情報を保存したディスク2枚をウィキリークスに提供したことを公表。脱税のシステムを明らかにしたいと述べていた。

 チューリヒの捜査当局は、「検察が現在、ウィキリークスに情報を提供したことがスイスの銀行法に違反するかどうか捜査している」と発表。その他の詳細は明らかにしなかった。


●新政権刷新求め数千人デモ=チュニジア首相、選挙後の引退表明
(時事通信2011/01/22-20:59)http://p.tl/Wg4Z
 【チュニス時事】ベンアリ独裁政権が崩壊したチュニジアで、新政権の刷新を求める数千人のデモが22日、首都チュニス中心部で行われた。新政権のガンヌーシ首相は地元テレビに「次期政権に交代したら政界から引退する」と語るなど民主化を確約しているが、ベンアリ前大統領の与党・立憲民主連合(RCD)の完全排除を求める声は衰えていない。
 デモを主導する同国最大の労組、チュニジア労働総同盟(UGTT)は、新政権にはRCD色が残っているとして、新政権の解散と「救国政権」の樹立を要求。デモで参加者は「RCDの完全排除を」などと叫んでいる。


●「ジャスミン革命」を成功に導いたソーシャルメディア
(Spotlight Jpan 2011年1月21日 11:00) http://p.tl/Kvqa

民衆によるデモと政府の衝突が発生していた、北アフリカ・チュニジアの政変は、ベンアリ前大統領が国外に逃亡し、民衆の勝利で幕を閉じた。カンヌーシ首相は1月17日にも、野党勢力を巻き込んだ暫定政権を発足させる意向だ。

失業や貧困、政府の腐敗に対する民衆の抗議デモに端を発する、今回のチュニジア政変を、この国の国花にちなみ「ジャスミン革命」と呼んでいる。この「ジャスミン革命」を成功に導いた背景には、ツイッターやフェイスブックといった、ソーシャルメディアの影響が強いとみられている。


※画像はチュニリクス(Tunileaks)

「チュニリクス(Tunileaks)」と政府の戦い
チュニジアの若者たちは、都市部に集中し、携帯電話や、フェイスブック、ツイッターといった、ソーシャルメディアをコミュニケーションに積極的に用いている。携帯電話の使用に制限がなく、人口の3分の1以上が定期的なインターネットユーザーで、さらに、その半分近くがフェイスブックに加入している。

「ジャスミン革命」の過程で、チュニジアのネチズンを中心に、「チュニリクス(Tunileaks)」というサイトを立ち上げ、秘密警察がはYouTubeまで遮断する激しい検閲の中、ウィキリークスが暴露した、ベンアリ前大統領らの不正を訴え続けた。

「ジャスミン革命」は「アラブ国家初の民主革命」として、チュニジア周辺諸国のブロガーや市民記者らに評価されている。今回のチュニジア政変で、インターネットおよびソーシャルメディアが政治に与える影響に、世界的な関心が高まっていと言えるだろう。


●チュニジア革命は中国に波及?官製メディアに反旗を翻すポータルサイト
(大紀元epochtimes 2011/01/18 10:00) http://p.tl/6oas
 【大紀元日本1月18日】23年間続いたチュニジアの独裁政権は無名の若者の焼身自殺によって幕を下ろした。その背景に、政府に対する国民の根強い不満があった。高失業率、政府幹部の汚職、物価の高騰、言論の統制…チュニジアの現状のどれをとっても今の中国と重なる。これを意識したのか、新華社通信の公式サイト「新華網」は今回の騒乱を「犯罪者は強盗事件を起こし社会秩序をかく乱した」と報じ、問題の核心には言及していない。一方、ポータルサイトは「政府は民心を失ったため」と騒動の経緯を詳細に報道。官製メディアと民間メディアの報道姿勢は真っ二つに分かれた。

チュニジアの国花「ジャスミン」にちなんで、「ジャスミン革命」と呼ばれた今回の革命は、遠い中国で高い関心を集めている。ウィキリークスが2010年12月に同国の大統領一族の汚職や、市民運動の圧制などを暴露したり、アフリカで最も経済力のある国でありながらも、高い失業率と高物価が続いていることなどから、「チュニジアはまさに中国の縮図だ」と人々は驚く。

急転直下するチュニジアの情勢が中国に波及しないよう、中国政府は警戒している。新華網1月15日付の記事で、事件の発端や同国の社会問題に触れず、「犯罪者らは凶器を手に、憚ることなく、スーパー、民家を襲っている」と報じ、大統領の即退陣を求める市民を犯罪者に仕立てた。

一方、大手ポータルサイト「網易」では、「政府職員の横暴な公務執行で騒乱発生、大統領亡命」を題とする記事を掲載し、「政府職員は果物販売の青年に負けた」「警察はデモ隊に負けた」「大統領は市民に負けた」という見出しで、騒動の一部始終を報道した。

チュニジアの現状について、「卒業すなわち失業」と見出しを掲げて同国の実質失業率が52%に達したを報道し、また、ウィキリークスが公開した米外交公電で「警察国家」と見なされていることを紹介し、「政府はすでに民心を失った」と評した。

 経済力があっても生活苦に陥る市民、高物価に高失業率、強権政治、人心を失った政府、どの言葉も今の中国に当てはまる。チュニジアと中国、接点の少ない二つの国がこれらのキーワードで結び付けられた。ネットユーザは「中国ではたくさんの焼身自殺者がいたのに…。中国人は意気地なしの代名詞だ」とやるせない心情を表す一方、「このまま続くと、中国は第二のチュニジアになる」「今の中国は巨大な火薬庫のようで、導火線の引火を待つのみ」と期待の声も寄せられている。


●チュニジア革命 独裁が許されない時代に
(琉球新報:社説 2011年1月19日)http://p.tl/vBnY
 チュニジアを代表する花から名付けられた「ジャスミン革命」がアラブ大衆の胸を打ち、強権的なアラブ諸国を揺さぶっている。
 チュニジアの政権崩壊が各国に波及する「ドミノ倒し」が起きるか、不透明だが、いずれにせよ、民衆が意思表示する流れは不可逆的であろう。大衆の意を酌む政治への脱皮が求められる。
 発端は昨年12月中旬、チュニジア中部で失業中の若者が焼身自殺を図ったことだ。失業解消を求めるデモや暴動が各地へ急速に広がった。死者は78人に及び、85カ所の警察署、43の銀行、66カ所の商店やショッピングセンターが略奪などで荒らされ、チュニジア経済に与えた損失は1730億円に達したという。
 ベンアリ大統領は3年後の退任を約束したが、首都チュニスでは市民5千人が集まり、即時辞任を要求した。大統領は全土に非常事態を宣言、外出禁止令を出したものの、焼け石に水で、1月16日に出国、政権が崩壊した。
 23年余りも続き、盤石とみられていた政権があっけなく崩壊したことは、アラブ諸国に衝撃を与えた。補助金増額を決めるなど、各国は不満を鎮めるのに大わらわだが、アルジェリアやエジプトで自殺未遂が続発、ヨルダンでも物価高騰への抗議デモが続いているから、民衆の怒りという「マグマ」は相当たまっていたとみていい。
 今回の政変の特徴はIT(情報技術)革命が影響している点だ。デモへの動員にはツイッターやフェースブックが大いに活用された。
 政権がいかに言論を統制しようとしても、草の根的なネットの情報網が統制を突破することを示している。他のアラブ諸国もIT事情は同様だから、強権的に抑圧しようとしても、もはや時代の歯車を逆回転させることはできまい。
 一握りの支配者が富を独占し、縁故主義が幅を利かす政治を追放するほかない。チュニジアの新内閣は全ての政治犯の釈放を明言し、報道の完全な自由化も約束した。他の国々も続くことを期待したい。
 チュニジアは今も混乱が続く。ベンアリ氏支持派が意図的に社会不安をあおり、厳しい治安体制を敷いた同氏復帰の世論をつくろうとしている、という指摘もある。
 事実なら、無駄な行為だ。民主化は時代の流れと認めるべきであり、民主的な政治体制づくりに国民が団結して取り組んでほしい。


●余録:ジャスミン革命
(毎日新聞 2011年1月19日 0時01分) http://p.tl/ZbLV
「ぜいたくは人の性格を堕落させる」。チュニジア出身の中世イスラム世界の大思想家イブン・ハルドゥーンがこう述べたのは、ぜいたくを道徳的に非難するためではない。いつも繁栄の頂点で衰退に転じる都市文明の宿命を指摘したのだ▲そんな先哲の話が頭をよぎったのは、チュニジアの政変で国外逃亡したベンアリ前大統領一族のぜいたくぶりが民衆の怒りの火に油を注いだと聞いたからだ。一族の腐敗はウィキリークスが流した米外交文書で知れ渡った▲「もしも2人がうまくやっているように見えるなら、1人が耐えているのだ」とは、チュニジアのことわざという。言われてみればアラブ世界ではまあ「うまくやっている国」と見られていたチュニジアだ。だが、「耐えていた」民衆の不満は各地で街頭にあふれ出た▲政変の発端は野菜売りの青年が警察に排除されたのに抗議の焼身自殺を図った事件という。ネットを通した呼びかけで抗議デモはすぐに全国に広がり、騒乱は23年間この国に君臨したベンアリ政権を崩壊させた。「ジャスミン革命」というのもネットでの命名だった▲アラブ世界では異例の民衆蜂起による「革命」だ。しかも独裁政権も対応できぬほどのネットの動員力だった。より強権的で、人々の不満がわだかまる周辺諸国のどこに及んでもおかしくない民衆の新たな自己主張である▲文明の堕落の後には強い団結力をもつ集団が新王朝を開くというのもイブン・ハルドゥーンの洞察だ。欧米はイスラム過激派の台頭を懸念するが、ここはジャスミンの花言葉「温和」にふさわしい民主秩序作りに国民の団結力を見せてほしい。


●ジャスミン革命 共鳴現象は起きるのか
(中日新聞:社説 2011年1月19日)http://p.tl/XpN1
 チュニジアで強権政治を担ったベンアリ政権が崩壊した。民主化のドミノ現象が起きた東欧革命のように、近隣のアラブ諸国に飛び火するのか。まずは民主的選挙の実現が試金石だ。
 政変のきっかけとなったのは大学を卒業しながら職に就けず、野菜の行商で生計を立てていた青年の焼身自殺だった。商い用の手押し車を没収され、絶望の果ての抗議行動だったという。
 チュニスをはじめ各地で数千人規模のデモが起こり、暴動に発展した。治安部隊とデモ隊との衝突で多数の市民が死亡した。鬱積(うっせき)していたベンアリ政権への不満の大きさを物語る。
 街に戦車が出動し、指導者が放逐される事態に、冷戦を終結させた東欧の民主革命を想起した人も多かったのではないか。東西冷戦下、共産政権は独裁体制の腐敗、過大な軍事費負担、経済の停滞に押し潰(つぶ)されるように自壊した。
 長期にわたる独裁体制がもたらす弊害は明らかだろう。エジプトではムバラク政権がほぼ三十年続き、リビアではカダフィ大佐による強権政治が四十年以上続いている。近隣諸国から同様の焼身自殺の報が相次ぐなか、民主化要求の「共鳴現象」が広がる事態への各国政府の警戒心は強い。
 メディアが担った役割も共通している。東欧革命では西側情報を伝える衛星テレビやカセットテープが民衆蜂起を後押しした。今回は最先端のネット情報が飛び交った。国民生活の疲弊をよそに、大統領一族が贅沢(ぜいたく)な食卓を満喫している様子を暴露するウィキリークス情報もあった。「これはウィキリークスを使い政府転覆を図った米国の陰謀だ」とのカダフィ大佐の非難も飛び出したほどだ。
 東欧革命は東西の壁を崩したが新たな問題も生んだ。急速なグローバル化の中で先鋭化した経済の南北格差やイスラム過激派が煽(あお)る宗教対立が代表的なものだ。国の特産物にちなみ「ジャスミン革命」とも呼ばれ始めた今回の政変は、新たな秩序を模索しつつある国際情勢のただ中で起きた。旧政権の閣僚も含む暫定政権の行方は流動的だが、それだけに、早期の秩序回復と基本的な国家像の提示が決定的に重要になる。
 新政権が進むべき道は、チュニジア国民自身が選択する問題であることは言うまでもない。暫定政権の下に行われる予定の大統領選挙が、強権的な押しつけではなく、民衆自らの手で開く民主化の先例となることを期待したい。 



●(沖縄タイムズ:大弦小弦 2011年1月21日 09時21分)http://p.tl/eRLx

 チュニジアの「ジャスミン革命」ではインターネットメディアが大きな役割を果たした、と外電が伝えている

 ▼失業中の若者の焼身自殺から始まったデモは、当局の厳しい検閲やウェブサイトの閲覧制限をくぐり抜け、各地に広がった。動画サイト「ユーチューブ」には、多数の死者を出した警官隊との衝突シーンが投稿され、内部告発サイト「ウィキリークス」は富を独占する大統領一族の実態を暴き、高失業率にあえぐ国民の怒りに火をつけた

 ▼若者らは「フェイスブック」「ツイッター」で情報をリアルタイムで共有しながらデモを呼び掛け、23年君臨した大統領を退場させた

 ▼これら四つのサイトで、最近特に脚光を浴びているのが「フェイスブック」だ。マーク・ザッカーバーグ氏(26)がハーバード大在学中に作った世界一の交流サイトで、登録者は5億人を超す

 ▼県内でも約700人の利用者団体が発足し、イベントや勉強会が開かれているほか、同氏をモデルにした映画が先週から公開されるなど、知名度も上がってきた

 ▼大学生の社交目的で始まったフェイスブックは、チュニジアに類するアラブ諸国の強権的政権を脅かすツールの一つとなった。老子の「天網」は今回の革命では「インターネット」となろうか。まだ穴(弊害)はあるが、かなり使える。(平良秀明)



●ジャスミン革命とフェイスブック

調査研究本部主任研究員 池村俊郎
(読売新聞2011年1月19日)http://p.tl/t21h

 地中海の青い海と透き通った青空。「チュニジアン・ブルー」の愛称さえある北アフリカの穏やかな観光地を思うと、そこで起きた大衆蜂起には信じがたいものがあります。
 チュニジアは風光明媚な景勝地に加え、帝国ローマを攻めた猛将ハンニバルの国家カルタゴの史跡でも知られ、世界から観光客が絶えない所。穏健なイスラム教国、親欧米の政治体制、治安良好のイメージがある上、親日的な国でもあります。
 23年間、独裁権力を握ったベン・アリ大統領が街頭蜂起に恐れをなし、一族でサウジアラビアへ逃亡する事態になりました。国の花に由来して、人々はジャスミン革命と呼称しています。そのキーワードは「若者」と「フェイスブック」です。
 何度か取材で訪れた首都チュニスの夕暮れ、海岸へ出て驚いた光景がありました。広い砂浜を黒山のような若者たちが埋めている。遊興の場もなく、ただ砂浜に集っている。男も女も、子供たちも。はるか遠くの砂浜の先端まで人、人、人。若年層の人口膨張が蜂起の背景にあります。
 これまでフランスを初め、移民労働者として欧州へ出国できた彼らは、労働力流入を制限され、地中海を越えにくくなりました。とくに大学卒の若い高学歴者に就職口がない。
 国の公用語はアラビア語でも、フランス語が普通に通じるので浜辺のレストランなどにいると、まるで南仏コートダジュールにいる気分になります。若者はフランスやイタリアのテレビ、ラジオに日常的に接し、価値観も西欧化しています。なぜ就職口がない? なぜ言論の自由がない?
 ベン・アリ体制は表面の温和な親欧米路線と違い、経済権益を独占するマフィア支配が現実でした。コネ社会とワイロのはびこり。若者の怒りはその腐敗に向けられていました。
 一斉蜂起のきっかけも、街頭の物売りで一家を支えていた青年が、「営業許可がない」と市当局者と警察にこづきまわされ、抗議の焼身自殺を遂げたのがきっかけでした。フェイスブックなど携帯先端メディアの最新ツールを駆使する若者たちが事件を知り、一気に怒りのマグマを爆発させたのです。
 街頭蜂起のテレビ報道を見ると、彼らは「われらに自由を」「チュニジアに民主主義を」と怒りの拳を突き上げていながら、決して「アッラー(神)は偉大なり」とは叫んでいません。宗教に頼らない政治的な要求が、もっと民主的な体制に結実するかどうかで、アラブ世界全体の風景を大きく変える可能性を秘めています。
 それでも、青年の溢れるエネルギーだけでは次の安定した体制は生まれません。権力にしがみつく中老年は醜いけれども、彼らの老獪さと知謀も必要です。チュニジアがそこを誤らないでほしい。ジャスミン革命の名前通り、未来の花畑が約束されているわけではないからです。