●(沖縄タイムズ:大弦小弦 2011年1月21日 09時21分)http://p.tl/eRLx

 チュニジアの「ジャスミン革命」ではインターネットメディアが大きな役割を果たした、と外電が伝えている

 ▼失業中の若者の焼身自殺から始まったデモは、当局の厳しい検閲やウェブサイトの閲覧制限をくぐり抜け、各地に広がった。動画サイト「ユーチューブ」には、多数の死者を出した警官隊との衝突シーンが投稿され、内部告発サイト「ウィキリークス」は富を独占する大統領一族の実態を暴き、高失業率にあえぐ国民の怒りに火をつけた

 ▼若者らは「フェイスブック」「ツイッター」で情報をリアルタイムで共有しながらデモを呼び掛け、23年君臨した大統領を退場させた

 ▼これら四つのサイトで、最近特に脚光を浴びているのが「フェイスブック」だ。マーク・ザッカーバーグ氏(26)がハーバード大在学中に作った世界一の交流サイトで、登録者は5億人を超す

 ▼県内でも約700人の利用者団体が発足し、イベントや勉強会が開かれているほか、同氏をモデルにした映画が先週から公開されるなど、知名度も上がってきた

 ▼大学生の社交目的で始まったフェイスブックは、チュニジアに類するアラブ諸国の強権的政権を脅かすツールの一つとなった。老子の「天網」は今回の革命では「インターネット」となろうか。まだ穴(弊害)はあるが、かなり使える。(平良秀明)



●ジャスミン革命 共鳴現象は起きるのか
(中日新聞:社説 2011年1月19日)http://p.tl/XpN1
 チュニジアで強権政治を担ったベンアリ政権が崩壊した。民主化のドミノ現象が起きた東欧革命のように、近隣のアラブ諸国に飛び火するのか。まずは民主的選挙の実現が試金石だ。
 政変のきっかけとなったのは大学を卒業しながら職に就けず、野菜の行商で生計を立てていた青年の焼身自殺だった。商い用の手押し車を没収され、絶望の果ての抗議行動だったという。
 チュニスをはじめ各地で数千人規模のデモが起こり、暴動に発展した。治安部隊とデモ隊との衝突で多数の市民が死亡した。鬱積(うっせき)していたベンアリ政権への不満の大きさを物語る。
 街に戦車が出動し、指導者が放逐される事態に、冷戦を終結させた東欧の民主革命を想起した人も多かったのではないか。東西冷戦下、共産政権は独裁体制の腐敗、過大な軍事費負担、経済の停滞に押し潰(つぶ)されるように自壊した。
 長期にわたる独裁体制がもたらす弊害は明らかだろう。エジプトではムバラク政権がほぼ三十年続き、リビアではカダフィ大佐による強権政治が四十年以上続いている。近隣諸国から同様の焼身自殺の報が相次ぐなか、民主化要求の「共鳴現象」が広がる事態への各国政府の警戒心は強い。
 メディアが担った役割も共通している。東欧革命では西側情報を伝える衛星テレビやカセットテープが民衆蜂起を後押しした。今回は最先端のネット情報が飛び交った。国民生活の疲弊をよそに、大統領一族が贅沢(ぜいたく)な食卓を満喫している様子を暴露するウィキリークス情報もあった。「これはウィキリークスを使い政府転覆を図った米国の陰謀だ」とのカダフィ大佐の非難も飛び出したほどだ。
 東欧革命は東西の壁を崩したが新たな問題も生んだ。急速なグローバル化の中で先鋭化した経済の南北格差やイスラム過激派が煽(あお)る宗教対立が代表的なものだ。国の特産物にちなみ「ジャスミン革命」とも呼ばれ始めた今回の政変は、新たな秩序を模索しつつある国際情勢のただ中で起きた。旧政権の閣僚も含む暫定政権の行方は流動的だが、それだけに、早期の秩序回復と基本的な国家像の提示が決定的に重要になる。
 新政権が進むべき道は、チュニジア国民自身が選択する問題であることは言うまでもない。暫定政権の下に行われる予定の大統領選挙が、強権的な押しつけではなく、民衆自らの手で開く民主化の先例となることを期待したい。