菅 ご臨終国会始まる (日刊ゲンダイ2011/1/24)

政治混乱は殿(菅首相)ご乱心が原因 このまま放置したら国が危ない。即刻もう一度の解散・総選挙を

─延命を狙って「6月に社会保障と税の政府案」などと目くらましを図っているが、余命はあと80日。マトモな仕事などできるはずなし

─予算委員会になったら難題の集中砲火で政権は立ち往生。加えて「大不況下の大増税」というバカ丸出しの政策に民主党は地方選で惨敗し菅首相は野たれ死に

いやはや、驚くべき政権だ。支持率2割台のオンボロ内閣が、このデフレ不況下で消費税を上げようとしている。
それも、民主党批判の急先鋒、天敵・与謝野を経財相に担ぎ上げ、マニフェストを放り投げ、前言を翻しての“舵切り”だ。

狂ったのか、やけっぱちなのか、何も見えなくなっているのか。一体、どういう神経なのか、と呆れてしまうが、よくよく聞いてみると、臨時国会では呆けたような顔をしていた菅首相が大新聞のベテラン記者たちにたきつけられたことが背景にあるらしい。
“財源不足を解消するには消費税増税が不可欠だ”“TPP参加で国際競争力が高まり日米同盟も深化する”“首相がやるなら応援するぞ”――とこんな甘言をささやかれ、アホな菅は舞い上がったのである。
後先見ずに与謝野にすがり、「政治生命をかける」「平成の開国元年だ」と前のめりになった。スッカラ菅もここまでくると、つける薬なしである。

◆国民に見透かされている増税シナリオの裏

ただでさえ支持率が危険水域を割り込んでいるのに、歴代内閣が手をつけられなかった消費増税とは自爆テロみたいなものだ。

身内の民主党議員もア然としている。こういうのを「殿、ご乱心」というのである。
取って付けたように「社会保障と消費増税の一体改革」なんて子供だましみたいな化粧を施しているが、その魂胆はミエミエだ。法大教授の五十嵐仁氏(政治学)が言う。
「菅首相は、4月までに社会保障改革案のたたき台を作り、それから消費税の議論をすると言っていますが、たった2カ月で、どうやってあるべき社会保障の議論をするのか。いかにも取って付けたような話で、最初から消費増税ありきなのは間違いない。増税に合わせて、社会保障のつじつま合わせをしようとしているとしか考えられません。もうひとつ、時間稼ぎもあるでしょうね。春の統一地方選を間近に控えて、今、消費増税の議論を本格化させたら、昨年夏の参院選の二の舞いになってしまう。だから、消費税議論は先送りし、とりあえず、社会保障の議論を優先させて、支持率回復につなげようという思惑でしょう。参院選の轍は踏まないつもりなのでしょうが、国民は簡単にはダマされませんよ」

◆通常国会で炸裂必至の時限爆弾がこんなにある
こんな亡国、デタラメ首相は一刻も早く引きずり降ろし、解散・総選挙をするしかないのだが、恐らく放っておいてもそうなる。きょう(24日)から始まる通常国会は、さしずめ菅の“ご臨終国会”になるのではないか。
自民党など野党は、31日からの予算委員会を舌なめずりして待っている。攻め手がゴマンとあるからだ。

そのターゲットの筆頭が、世紀の変節漢、与謝野だ。すでに総理気取りで言いたい放題だが、与謝野といえば、「民主党のマニフェストは選挙用の毛ばりだ」「民主党が日本経済を破壊する」と言い続けてきた。ひと言で言うと、国民主導ではなく、官僚主導の政治家だ。だから、民主党流のバラマキを批判する。国民に直接、金を渡しても、ロクなことに使わないと考えている。与謝野がどう言い繕ったところで、民主党とは水と油の政治家なのである。
そのうえ、与謝野は09年の衆院選は自民党から出馬し、比例復活してバッジをつけた。与謝野の議席は本来、自民党のものだ。それでも民主党政権に入るというのであれば、最低限、議員辞職が当然だ。与謝野がどう言い訳するか見ものだし、答弁次第では参院で問責決議案が出される。もちろん可決で、仙谷の二の舞いになるのである。

◆統一地方選大敗で菅政権はオダブツ

年金制度改革をめぐる閣内不一致も攻められるだろう。民主党は税方式の最低保障年金の創設を掲げていたが、与謝野の考えは年金方式だ。

そもそも民主党はマニフェストをどうするつもりなのか。消費税率は4年間は上げないはずではなかったのか。この間、徹底したムダ削減をやるはずではなかったか。政権交代後、まだ1年半なのである。
それなのに、与謝野は「ムダ削減の後に税制というのは逃げの議論だ」とか言い出し、増税を急ぐ。菅はそれに引っ張られ、6月増税の流れが動き出している。

国民にどう説明するのか。重大背信ではないか。

通常国会で菅内閣がサンドバッグになるのは確実な情勢なのである。政治評論家の浅川博忠氏が言う。
「菅政権が消費増税で突っ走れば、社民党だって完全に離れます。社民党の協力が得られなければ予算関連法案を衆院で再可決するのに必要な3分の2議席の確保も無理です。春の統一地方選を控えた地方からは悲鳴が上がり、内閣支持率は急降下でしょう。すると野党はさらに勢いづく。もちろん、公明党だって地方選を前にして、ヨタヨタ与党に中途半端な協力はできない。与謝野大臣への問責決議案、菅首相の任命責任追及など、二の矢、三の矢が飛んできますよ。こうなると、衆院を通過すれば自然成立の本予算案はともかくとして、予算関連法案の年度内成立は厳しい。統一地方選で民主党が大敗した場合、菅政権はとても6月の会期末までは持たない。4月にヤマ場を迎えることになるでしょう」

民主党執行部のひとりは「予算関連法案が通らなければ暫定予算だ。そうなれば、国民だって怒る。自公は賛成に回らざるを得なくなる」などと言っていたが、見通しが甘すぎる。そうなれば、国民は菅に怒る。「辞めろ」の大合唱が湧き起こり、石もて追われるがごとく、退陣することになるだろう。無能な権力亡者の哀れな末路と言うしかない。

◆政治家以前に人間として最低の無節操

結局、菅という男は、首相の器でないのはもちろんだが、政治家として、もっとも大切な芯や志、覚悟もなかった。あるのは権力欲だけで、中身なし。文字通り、スッカラカンの権力亡者なのである。

だから、世話になった小沢排除に血道を上げ、その一方で天敵だった与謝野に頼る。人間として最低だ。無節操の極みである。何をしていいのか分からず、何もしたいこともなく、ただ、政権にしがみつきたいだけだから、新聞社にたきつけられて、いきなり消費税を持ち出したりする。おそらく、都合が悪くなれば、ああだこうだと先送りするだろうし、うまくいかなければ、周囲に当たり、怒鳴り散らす。薄っぺらな男だ。それが亡国首相の正体なのである。
「菅首相がヘラヘラ笑う姿がテレビに映ると、視聴率が下がるそうです。国民に見放されているどころか、嫌悪感さえ抱かれ始めている証拠でしょう。国民との約束を平気で破り、党内の反対意見は言論弾圧のごとく封じ込め、政権に居座り続ける神経は異様です。議会制民主主義のルールを無視した独裁者と変わりません。与謝野大臣が議席泥棒なら、首相は『政権泥棒』です」(筑波大名誉教授・小林弥六氏)

こんな男を首相に担いだ民主党はオシマイだ。統一地方選で惨敗必至の菅政権の余命は、あと80日。どうせマトモな仕事などできるはずがない。野垂れ死にするのを待っていたら、民主党は完全に国民から見放されることになる。一刻も早く菅を降ろして解散・総選挙をしなければ、民主党も菅と心中の運命だ。



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