自民と何も変わらぬ悪政の始まり (日刊ゲンダイ2011/1/26)

菅政権は詐欺師集団

どうやら、スッカラ菅首相は、本気で「消費税増税」に突っ走るつもりらしい。一昨日(24日)の施政方針演説で、「国民の皆さんに負担をお願いすることは避けられない」「消費税を含む税制の抜本改革を6月までに示す」と堂々と宣言してみせた。
大新聞テレビも「消費税アップ」を後押ししているから、このままでは年内に消費税増税が決まるのは確実だ。

しかし、いつの間にか「消費税アップ」が既定路線のようになっているが、民主党はほんの1年半前、「4年間は消費税を上げない」と選挙で公約していたはず。なのに政権に就いた途端、「社会保障と税の一体改革」などとテキトーなことを言って消費税を上げようなんて冗談ではない。
許し難いのは、やることもやらずに「財源がない」「財源がない」と言い募っていることだ。
財源がないと言うなら、まずは無駄をカットするのが先だろう。菅首相も「消費税アップは逆立ちしても鼻血も出ないほど無駄をなくしてからだ」と公言していたはずだ。しかし、ほとんど無駄は削減されていないではないか。

大騒ぎして「事業仕分け」をやったが、第1弾で削減できた予算はたったの7000億円だけだ。第2弾では「独立行政法人」に剰余金1兆5000億円の国庫返済を求めたが、実現のメドも立たない。「特別会計」を対象にした第3弾では、やる前から蓮舫大臣が「お金を出そうとは思っていない」と言い訳をする始末。行政の無駄も削らずに消費税をアップしようなんて話にならない。

◆やることもやらず「財源がない」は通用しない

そもそも、財務官僚の言いなりになっている菅内閣のやり方では、「財源不足」になるのは当たり前だ。政治評論家の本澤二郎氏が言う。
「もともと民主党は、自民党政権とはまったく違う方法で予算編成することで、財源を捻出する予定でした。衆院選マニフェストでは『予算の総組み替え』で財源を生み出すと公約していた。諸外国でも、国民と約束したマニフェストをまず実行し、残りの予算を各省庁で分け合うのが当たり前です。このやり方なら、財源不足が原因でマニフェストが実現できないことはないし、各省庁も限られた予算でやり繰りするしかないから、結果的に無駄の削減につながる。ところが、菅首相は自民党政権と同じように、各省庁の要求額を積み上げる方式で予算を組んでしまった。これでは財源が生まれるはずがない。官僚が自分たちの利権を維持するために、絶対に財源を削らないからです」

小沢一郎が「予算の総組み替え」を主張しつづけているのも、各省庁の既得権を維持したままの自民党的な予算編成では、財源を捻出できないと分かっているからだ。
なのに、菅首相は「脱小沢だ」「反小沢だ」と、小沢一郎の言うことをすべて否定し、官僚の言うままに予算を組んでいるのだからどうしようもない。マニフェスト通り、予算を総組み替えしていれば財源など簡単にひねり出せたのに、やることもやらず「財源がない」は通用しない。

自民と何も変わらぬ悪政の始まり

◆マニフェストを変更するなら国民に信を問え

菅首相の施政方針演説でハッキリしたことは、「国民生活が第一」という民主党の理想を完全に捨てたということだ。演説から「高速道路の無料化」や「東アジア共同体」といった目玉政策は抜け落ち、「マニフェストを検証する」と平然と言い放った。
民主党のポスターからも「国民生活が第一」というキャッチフレーズを削除してしまった。自民党の谷垣総裁にまで「マニフェストとずいぶん違ってきた」と皮肉られるありさまだ。

しかし、政権交代からまだ1年半しか経っていないのに、マニフェストを変更するなんて許されない。選挙公約を反(ほ)故(ご)にするというなら、もう一度、解散・総選挙で国民の声を聴くのが当たり前だ。
「有権者は『国民生活が第一』という民主党のマニフェストに共感し、政権を取らせたのです。民主党は『マニフェストを実現するための財源はある』とも主張していた。なのに、政権に就いたら『マニフェストを変えます』『財源がないので消費税をアップします』なんて詐欺ですよ。政権を取った後、マニフェストと違うことをやってもいいとなったら、政党政治は成り立たない。もし、マニフェストを実現できないというのなら、国民に謝罪し、潔く下野すべきです。下野したくないなら、『消費税アップ』という新しいマニフェストを掲げて解散するしかない。菅首相のように、下野もしない、解散もしない、政権に就いたままマニフェストを変えるなんて許されませんよ」(政治評論家・山口朝雄氏)

◆政権維持のために官僚と手を握った菅首相

もちろん、国民だって1年や2年という短期間で民主党のマニフェストがすべて実現するとは考えていないだろう。
国民が首相に怒りを募らせているのは、民主党の原点を忘れ、最初から「あれは難しい」「それも無理だ」と、マニフェスト実現に動こうともしないからだ。
「民主党がマニフェストで訴えていたのは、一言で言えば、日本の統治システムを根本から変えるということです。予算の総組み替えは、それこそ霞が関を揺るがす『大改革』です。実現しようとすれば、官僚の強い抵抗に遭うのは最初から分かっていた。それでも財源を捻出し、国民との約束を守るために、歯を食いしばって進もうというのが民主党の原点だったはず。少なくとも、鳩山首相は理想を権交代したのか分からない。菅内閣の支持率が低いのも当たり前です」(山口朝雄氏=前出)

最悪なのは、このままでは国民が政治に失望してしまうことだ。「民主党なら自民党とはまったく違う政治をしてくれるはず」と期待して、政権交代を実現させたのに、「民主党もダメだったか」「自民党と同じじゃないか」となったら、政治に何も期待しなくなる。
この国ではもう二度と、政権交代で日本の政治を変えるぞ、という熱気は起こらないのではないか。民主党議員は、とんでもない男を首相にしてくれたものだ。



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