取り調べ可視化に抵抗 法務・検察が配ったペーパー

(日刊ゲンダイ2011/1/27)

この期に及んでまだ屁理屈
菅首相は施政方針演説で「検察改革を進める」と力んだが、どこまで本気なのか。関係者の見方は冷ややかだ。というのも、法務、検察官僚は、改革の“本丸”とされる「取り調べの全面可視化」に猛抵抗を続けているからだ。
民主党は全面可視化に向けた議連の勉強会を継続中。郵便不正事件などで徐々に可視化必要の認識は広がっているが、法務・検察は「ああだこうだ」と屁理屈をつけて、可視化を潰そうとシャカリキだ。民主党関係者がこう言う。
「議連のメンバーに対して法務省側が『可視化できない』事例を挙げ、ペーパーにして配っているのです。そこには9つの場面が書かれていて、例えば、強姦事件の被疑者が『内容が恥ずかしいから撮影はやめてほしい』といったり、暴力団の組員が『白状すれば殺される』として録画に反対したりするケースなどが出てくる。しかし、全面可視化されても録画の全てを法廷で再現するワケではありません。供述の任意性が争点になった時に限って確認されるだけ。検察、弁護側双方で供述の信用性に争いがなければ、全く問題になりません」
可視化を避けて通れないとみた法務省は「一部」で逃げようとしているが、これも大問題だ。元大阪高検公安部長の三井環氏は「一部なら検事が都合のいいように恣意的に使われる。やらないよりもタチが悪い」と断じている。今や、政治主導の看板を下ろした菅が、こうした法務官僚の抵抗にどこまで対峙できるのか。変節首相が「検察改革」を叫んでも口からデマカセの思いつきに見える。