「国民の生活第一」を棄てた 権力亡者の黒い正体
(日刊ゲンダイ2011/1/27)

こんなハズではなかった政権交代
07年の参院選。全国で民主党に投じられた票は2400万票だった。小沢代表率いる民主党は60議席獲得し、参院第1党に躍進した。
続く09年の総選挙。さらに民主党への期待は増し、3347万票が投じられた。308議席。当時の鳩山代表、小沢幹事長は熱狂的支持を受けて政権交代を成し遂げたのである。「国民生活が第一」のスローガンに大多数の有権者が夢を託したわけだ。
ところが、あれから1年半。目を覆いたくなるような民主党政権の堕落テイタラクと変節はなんなんだ。
政権交代の功労者だった小沢と鳩山は執行部を追われ、小沢にいたっては犯罪者扱いされ、党内で抹殺されようとしている。
代わりに司令塔として招き入れたのが、ミスター自民党で大増税論者の与謝野馨ときた。狂っている。
で、首相の菅は、この不況の中で「消費税アップだ」と叫び、農業潰し・失業者増大のTPPに突っ走っている。正気なのか、この首相と民主党は――。
「全部、アメリカ、財界、財務省、大手メディアの手のひらの上で踊らされているのですよ。“小沢さんを切った方が、アメリカが喜ぶし、支持率が上がるよ”“法人税減税をして、消費税アップを打ち出せば、財界は味方になるよ”と言い寄ってくる人たちの声を聞いて、魂まで売ってしまったんですよ。空き菅といわれるように、菅首相には政治理念も芯もない。自分が延命するための損得勘定しかないのです」(経済アナリスト・菊池英博氏)
「国民生活が第一」が、いつから「財務省、財界、アメリカが第一」になったのか。3300万票への重大な裏切りである。政権交代に期待をかけた支持者ほど、民主党に失望し、カンカンに怒っているのだ。

◆一票を投じた有権者の思いを知れ
元知事で衆院議員の田中康夫氏が本紙コラムでこう指摘している。
「特別会計を含めた国家総予算207兆円の全面的組み替えと徹底した無駄削減で新規政策の財源を捻出し、少なくとも4年間は消費税率を引き上げないと約束したのではないか」「公務員人件費の2割削減は、外郭団体の統廃合は、雲散霧消してしまったのか」
民主党に一票を投じた善良な有権者が言いたいのも、この点なのである。
一票を投じたのに、その政権が変節し、増税で有権者を痛めつけようとしている。これでは民主党支持者は詐欺の片棒を担がされたようなもので、やりきれない思いだ。
民主党に詳しい評論家の塩田潮氏はこう指摘した。
「民主党政権に託されたものは、安定と改革。これを両立させるのは難しい。しかし、菅さんは新政権を担った以上、意地でも目指さなくてはいけないのです」
そういうことなのだ。ハナから「改革」の志を捨て、自己保身、自己延命のための「安定」にだけ突っ走る菅。あまりに醜悪、下劣だ。

◆最低の人間、クズと変わらない菅一派の面々
結局のところ、菅直人とは何者なのか。いや、菅だけでなく、取り巻きの前原外相、野田財務相、枝野官房長官、仙谷前官房長官も含めて、この連中は何なのか。
新人議員のときから、市民運動だ、反自民党だと騒いできたが、ずっと野党議員以上になる能力はなく、小沢一郎が現れなければ、一生、野党暮らしの連中だった。前原にいたっては、野党の民主党を潰しかけた男である。そんな無力集団を戦う集団に変え、政権を奪い、万年野党議員を与党政治家、大臣にしてくれたのが小沢なのである。
ところが、その恩を忘れ、仇で返す。人間として最低のクズだ。自分の力で首相や大臣になったつもりでいるが、そこまで偉そうにするのなら、地方選のひとつでも勝ってみせたらどうなのか。
政治アナリストの伊藤惇夫氏が言う。
「文化サークルだったひ弱な民主党に体育会系の厳しさを注入したのが小沢さんでした。でも文化系サークルの人は、体育会系になじめない。政治という戦場においては、限界があるのです。今回の消費税問題にしたって、マニフェスト通りに行政のムダを削り、国家公務員を削減すれば、しのげる問題です。でも、財務省や自治労相手に戦う度胸がない。やるべきことをやらず、消費税に逃げてしまったのです」

◆旧勢力に使われてポイ捨ての運命
経済のウラオモテに詳しいジャーナリストの山本伸氏はこう言った。
「究極のところ、日本はアメリカの植民地のようなものです。古くは吉田茂に始まり、佐藤栄作、中曽根康弘、小泉純一郎と、長期政権だった首相は例外なく、アメリカにかしずいてきた。菅さんたちはそれを真似しているのです。自分というものがないからです」
単細胞の成り上がり者の集まりである菅政権の正体は、そんなものなのだ。だから、政権交代を台なしにしたり、政権公約を捨てて与謝野を入閣させるような裏切り行為が平気でやれるのだ。
「でも彼らは、必ず見捨てられますよ。菅政権を操るアメリカや財界、官僚、大手メディアの狙いは、菅一派を取り込み、飼い慣らし、無理難題を押し付け、最後は民主党政権を潰すことです。民意がバックについて政権を取った民主党を真正面から潰すと、日本国民の反発を食らう。だから消費税やTPPをやらせ、国民に嫌われさせ、民主党政権を内側から崩壊させようとしているのです。そこに気づかない菅一派は、国賊級の裏切り者なのです」(菊池英博氏=前出)
目の前に迫った統一地方選。民主党支持者の大半がソッポを向く。菅はそれでも旧勢力がバックについている、労組票もあると甘く思っているかもしれないが、壊滅的惨敗は間違いない。小沢がいない民主党なんて、選挙になるわけがないのだ。しかし、菅は反省しない。さらに旧勢力にスリ寄り、強者の懐に入り、わが身を守ろうとする。そういう男だ。だからこそ、政権交代に少しでも期待をかけた3300万の有権者は、ケジメとして、即刻、この裏切り男を辞職に追い込むことが責務なのである。



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