国債“日本格下げ”消費税増税の布石か

(日刊ゲンダイ2011/1/28)

オバマ政権が描く仰天シナリオ

米S&Pが日本国債の格付けを「AA」から「AAマイナス」に格下げした。日本の政府債務比率が一段と悪化するというもっともらしい理由だが、格付け会社の格付けを丸ごと信じていいかは疑問だ。

ニッセイ基礎研究所経済調査部長の櫨浩一氏がいう。
「一国の格付けの上げ下げは、納得できる面もありますが、国を横並びで見ると違和感があります」
日本の「AAマイナス」はクウェートやサウジアラビアと同じ。驚くのは、財政悪化が深刻なスペインが「AA」で、日本より上にいること。確かに首をかしげたくなる。

とはいえ格下げの威力は無視できない。格下げニュースが流れた途端に為替市場は反応し、一時、円は1週間ぶりの円安水準となる1ドル=83円台に急落した。
「円安そのものは輸出企業にはプラスに働きます。一方、海外投資家は株式市場で“日本売り”を加速する恐れがあります。日本経済への影響はトータルでマイナスでしょう」(黒岩アセットマネジメントの黒岩泰代表)

気になる見方も浮上している。アメリカが自国の財政悪化から目をそらすため日本を格下げしたというのだ。
「米議会予算局(CBO)が26日、11年度の米財政赤字見通しを発表しています。赤字額は過去最高の1兆4800億ドル(約123兆円)。今年に入り欧州財政危機が落ち着いてきたこともあり、このままでは危機のホコ先が米国に向かいかねない。それを避けるための日本攻撃です」(三井住友銀行チーフストラテジストの宇野大介氏)

日本はナメられたもんだが、もっと許せない見方もある。消費税増税が絡んでいるというのだ。

「日本の財政赤字は、格下げされるほど深刻だから、消費税アップも仕方なしという流れです。日本人は外圧に弱い。そこを利用した戦略でしょう。おそらく絵を描いたのはアメリカ。消費税増税で財政をある程度安定させ、米国債を買わせる魂胆です。ゆうちょ銀や簡保が持つ数百兆円の資産にしても、信用力の落ちた日本国債を多く保有するのではなく、トリプルA格付けの米国債と分散させる。そのために日本を格下げしたと考えればつじつまが合います」(市場関係者)

消費税増税をやりたい菅首相には、意外な味方出現なのに、27日夜、菅はこう言った。「そういうことには疎いので、(コメントは)改めてさせてほしい」。その代わり与謝野経財相が「格下げは(消費税率アップを)早くやりなさいという催促だ」と自分の主張を正当化するような発言をしてみせた。

経済オンチ丸出しなうえ、米国べったりの菅に日本を任せていたら、国民の財産がごっそりと米国に持っていかれる。“日本格下げ”を消費税増税の口実にさせてはならない。



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