●前特捜部長が会見「村木さんに誠に申し訳なかった」
(朝日新聞 2011年1月29日21時13分) http://p.tl/Ozvs  

 大阪地検特捜部の大坪弘道前部長による記者会見の主な内容は次の通り。

 まず、私の保釈にご尽力をいただいた弁護団に感謝を申し上げたいと思います。孤立無援の闘いを強いられるという覚悟で過ごしておりましたが、多くの同期、友人、あるいは知人からご支援をいただき、心から感謝と感激をいたしております。そういう気持ちで、この約4カ月過ごしておりました。

 村木さんの事件は私が特捜部長として指揮した事件でありますが、捜査に不備があったことは認めざるを得ない。その結果、村木さんを逮捕し、勾留したことについては誠に申し訳なかったと思っております。私も、彼女と同じ「とらわれの身」になり、彼女がどんな思いだったか、ということを思うこともありました。

 ――4カ月間をどんな思いで過ごしたのか

 精神的にはつらい日々でした。私も特捜部に10年近い勤務があるわけですが、この立場になって初めて「とらわれの身」のつらさも感じましたし、拘置所の中で心のバランスをとるということに留意しながら過ごしておりました。そして、なぜ「私がここに導かれたのか」という自らへの問いかけをし、自らの心と対面しながら過ごすこともありました。

 ――前田元検事についてはどういう気持ちをもっているのか

 特捜部長として最も信頼する部下の一人だった。彼の手腕については評価していましたし、彼自身、数々の場数を踏んだベテランの検事でありました。ですから、村木さんの事件を担当させたわけですが、彼自身が改ざん事件を起こした。私の期待が彼を追い込んだのかもしれない、ということを考えることもありました。ただ、特捜部というところは、精神的にも捜査技術的にも、強い集団でなければならない。そういう者が集まっているところですので、そういう期待をしていたので、それに正しい形でこたえてくれると思っていました。

――最高検の検証結果や今後の公判についてはどう思うか

 検証結果のペーパーを見ていないので、回答は差し控えたいと思います。27年間、検察官として勤務し、検察に貢献したとの自負も持っています。私を育ててくれた検察に感謝の気持ちも持っております。特捜部長としての1年半は検察の威信、一点のみで自分の努力を傾注し、勤務してまいりました。検察に対しては、熱い思いを持っております。その検察からこういう形で逮捕され、弁護団と共に検察と闘わざるを得ない。私としては大変残念な気持ちですが、しかし、自分の名誉のために闘います。

 ――体調や体重の管理など拘置所でどう過ごしていたのか

 初めての経験でしたから、精神的にはつらい日々でありました。

 ――やせたようだが

 やせました。



●前特捜部長、村木厚子さんに謝罪…保釈後会見
(2011年1月29日21時55分 読売新聞) http://p.tl/1h9d

 大阪地検特捜部の証拠品改ざん・犯人隠避事件で、前特捜部長・大坪弘道(57)、元副部長・佐賀元明(50)両被告(いずれも犯人隠避罪で起訴)が29日、昨年10月の逮捕から約4か月ぶりに保釈された。

 保釈保証金はそれぞれ1500万円。2人は相次いで記者会見し、公判で無罪を主張する意向を改めて示した。

 記者会見は大阪司法記者クラブで開かれ、大坪被告はスーツ姿で出席。まず、郵便不正事件で無罪が確定した厚生労働省元局長の村木厚子さん(55)について「(捜査に)不備があったと認めざるを得ない。長期間にわたって勾留したことを申し訳なく思う」と謝罪。「同じ捕らわれの身となり、彼女の気持ちがどんなものだったのかと思うことがあった」と振り返った。

 公判に向けた心境を問われると、同席した弁護人が発言を控えさせるしぐさを見せたのを制し、「検事になって27年。検察の威信のため努力してきた。その検察に逮捕されたのは残念だが、自分の名誉のためには戦いもやむを得ない」と、争う姿勢を示した。

 一方、佐賀被告はジャケット姿で会見。元主任検事・前田恒彦被告(43)が起訴された証拠品改ざん事件について、顔を紅潮させて「隠避した事実はございません」と強い口調で述べた。また、拘置所内で村木さんが記した手記を読んだことを明かし、「非常におつらい目に遭わせたことをおわびしたい」と目を潤ませて謝り、頭を下げた。

 前田被告の初公判は3月14日に決まっており、前田被告は起訴事実を認める方針という。



●“全面対決”静かなる幕開け 村木厚子さんに謝罪
(産経新聞 2011.1.29 20:57) http://p.tl/8W1H

 「名誉のために『闘いもやむなし』と思う」。勾留先の大阪拘置所(大阪市都島区)から保釈された大阪地検前特捜部長、大坪弘道被告(57)と元副部長、佐賀元明被告(50)は29日、大阪市内で相次ぎ記者会見した。逮捕から120日。刑事被告人に転落したかつての捜査幹部は、無実を訴え、冷静に古巣へ「宣戦布告」した。公判にかかわる質問は弁護人がほぼ答えを遮り、検察との全面対決は静かなる幕開けとなった。

 「村木(厚子)さんを逮捕し、長期間勾留したことについては誠に申し訳ない」。弁護人に付き添われて会場に入った大坪被告は開口一番、自ら捜査を指揮した郵便不正事件について陳謝した。

 縦縞入りの白いワイシャツに赤いネクタイを締めたスーツ姿。年末年始を挟み4カ月に及ぶ独房での生活。厳しい寒さから解放されたせいか、終始、頬を紅潮させた。言葉を選ぶように、低い声でゆっくりと話した。

 大坪被告は特捜部長在任中、フロッピーディスクを改竄した元主任検事、前田恒彦被告(43)=証拠隠滅罪で起訴、懲戒免職=を「右腕」と称し重用。昨年12月に公表された最高検の内部検証では、自身の強いプレッシャーが改竄事件の主因とされていた。

これについて大坪被告は「彼は場数を踏んだベテランの検事だから、村木さんの事件を担当させた。期待には正しい形で答えてくれるものと思っていた」と述べた。

 検証自体に対する批判の言葉は明確になく、弁護人を制止してあえて自ら発言した際も、検察に対する感謝の言葉から始まった。

 「私は検察に貢献したとの自負を持っている。育ててくれた感謝もある。特捜部長としては、検察の威信ただ一点のために力を傾注してきた」。この言葉に続けて「大変残念だが、自分の名誉のためには『闘いもやむなし』と思っている」と言い切った。

 拘置所生活を振り返る質問には、しばらく押し黙った後「逆の立場になってみて初めて分かる『囚われの身』の辛さも感じた」と応じた。

 一方、茶色のジャケットと紺色のセーター姿で会見に臨んだ佐賀被告も、勾留中に村木さんが書いた手記を読んだことを明らかにし「非常にお辛い目に遭わせた。深くおわび申し上げる」と謝罪。法廷での証人尋問を通じて予想されるかつての上司や部下との対決については「個人の感情と裁判の主張は次元が違う。今は感情を交えて話すほど頭の中が整理できていない」と答えるにとどめた。

     ◇

 会見に先立ち、大阪拘置所には報道関係者約60人が押し寄せた。午後6時13分に佐賀被告が迎えの車に乗り込み、約5分後に大坪被告も出発。会見は個別に佐賀被告が約10分間、大坪被告が約15分間だった。