●ムバラク氏は退陣を 英各紙、社説で要求
(ロイター2011.1.30 22:24) http://p.tl/IPZn

29日、エジプト首都カイロで「ムバラクはゲームオーバー」などと書かれたプラカードを掲げるデモ参加者ら

 30日付の英各紙は、騒乱状態が続くエジプトのムバラク大統領の退陣を社説などで一斉に要求、退陣後の混乱への懸念から態度をあいまいにしてきたこれまでの路線を一変させた。

 日曜紙オブザーバーは「ムバラク氏の独裁は今すぐに終わるべきだ」と題した社説を掲載。学生や女性、軍従事者から失業者に至るまで、あらゆる民衆が立ち上がり「彼らがエジプトの未来を握った」と指摘した。

 その上で、オバマ米大統領やキャメロン英首相はムバラク氏に「彼の時代は終わった」と通告し、暫定政府の発足や公正な大統領選の実施なくして支援できないと迫るべきだと主張した。

 サンデー・テレグラフは「エジプトを救うため、ムバラク氏は退陣せよ」と掲げ、今回の危機以前にも、米政府当局者がムバラク氏の独裁が安定への脅威だとのシグナルを送っていたことを紹介した。(共同)



●エジプト騒乱状態に、デモ5日目 外出禁止令無視、略奪も
(共同通信2011/01/30 11:22) http://p.tl/Xvw6

 29日、エジプト首都カイロで「ムバラクはゲームオーバー」などと書かれたプラカードを掲げるデモ参加者ら(ロイター=共同)

 【カイロ共同】エジプトの大規模な反政府デモ発生から5日目となった29日夜、首都カイロでは商店が襲撃され略奪が横行、発砲音も頻繁に聞こえるなど騒乱状態に陥った。市中心部のタハリール広場には、夜間外出禁止令を無視して多数の市民が集まり、ムバラク大統領の辞任を要求した。

 一方、フランスのサルコジ大統領とドイツのメルケル首相、英国のキャメロン首相は29日、共同声明を発表し、ムバラク大統領に対し、武力の不行使と、民衆の「正当な要求に対して自ら変革に参加する」ことを求めた。強権体制からの脱却を強く促したものとみられる。

 カイロでは警官の姿が消え、軍の装甲車などが政府施設付近に展開。国防省報道官は、国民に外出禁止令の順守を呼び掛ける一方、自らの身や財産は極力自分で守るよう要請、治安当局が事態を十分に掌握できていないことを示唆した。

 ムバラク大統領は29日、側近のスレイマン情報長官を副大統領に任命したが、デモ参加者からは任命に抗議する声が相次いだ。

 中東の衛星テレビ、アルジャジーラによると、カイロなどでは略奪や暴徒から身を守るため自警団が組織され、暴徒との間で銃撃戦が起きている。



●デモ参加者への暴力回避を=エジプト大統領に訴え-英仏独首脳
(時事通信2011/01/30-09:33)http://p.tl/KUDx
 【ロンドン時事】英国のキャメロン首相、フランスのサルコジ大統領、ドイツのメルケル首相は29日夜、エジプト情勢をめぐって共同声明を発表し、ムバラク大統領に「非武装の市民や、平和裏に権利を行使しているデモ参加者に対する暴力を絶対に避けるよう求める」と呼び掛けた。
 3首脳は「エジプトでの一連の出来事を極めて憂慮している」と表明。その上で「大統領が約束した政治、経済、社会の一層の改革が完全かつ早急に履行されることが重要だ」と強調した。
 さらに「エジプト国民の不満、より良い将来への憧れは正当なものだ」と指摘し、「ムバラク大統領は変革に乗り出してほしい。広範な支持基盤を持つ政府を樹立し、自由かつ公正な選挙を実施すべきだ」と訴えた。



●大統領に出国要求=副大統領ら指名は「不十分」-エルバラダイ氏
(時事通信2011/01/30-07:36) http://p.tl/3gjd

 【カイロ時事】エジプトでムバラク大統領の独裁政権打倒を求めるデモが激しさを増す中、反政府運動に加わっているエルバラダイ前国際原子力機関(IAEA)事務局長は29日、大統領が同日、スレイマン情報部長官とシャフィク民間航空相をそれぞれ副大統領と新首相に指名したことに関し、対応として不十分だと批判、「大統領と政権の人々にはできるだけ早くエジプトを去るよう求める」と述べた。中東の衛星テレビ局アルジャジーラに対して語った。


●大統領次男、国外に逃亡か ロンドン着と報道
(産経新聞2011.1.30 01:15) http://p.tl/LsdR
 中東の衛星テレビ、アルジャジーラは29日、在ロンドンのエジプト人筋の情報として、ムバラク大統領の次男ガマール・ムバラク氏がロンドンに到着したと報じた。

 ムバラク政権が、大統領の退陣を求める市民の反政府デモで危機に陥っていることを受けて、いち早く国外に逃亡した可能性がある。

 ガマール氏は与党、国民民主党の政策委員長を務め、今年9月の大統領選への出馬も一時取りざたされていた。(共同)



●エジプトのムバラク大統領、29日にも退陣とのうわさ広がる
(WSJ日本版 2011年1月30日) http://p.tl/fw-P

 【カイロ】エジプトのムバラク大統領の30年に及ぶ政権は28日、風前のともし火となっている。同国ではデモ隊が結集し、治安部隊を圧倒しており、過去25年間で初めて同国の主要な通りに軍隊が配備されている。

 現地時間29日朝方にはムバラク大統領が辞任するとのうわさが広がるなか、エジプト国営テレビ放送は大統領が同職にとどまるものの政府を解散することを示唆する事前録画した演説を放映している。ムバラク大統領は「われわれが選択した改革軌道から逆戻りはできない」と表明。「われわれは民主主義と自由をさらに追求していく」との見解を示した。

 ムバラク大統領の演説は大統領と数千人のデモ隊との間の大きな溝を強調したに過ぎないようだ。デモ隊は28日、同政権による抑圧と低迷、機会不足に対する「怒りの日」を展開した。こうした表現はまた、ムバラク大統領と同大統領の長期にわたる同盟国米国との分離も強調している。

 28日のエジプトでのデモ活動は一段と暴力的になり、同国警察はデモ隊に対し催涙弾やゴム弾を発射した。エジプト全土での夜間外出禁止令にもかかわらず、デモ隊は軍隊の車両を占領し、治安部隊の非常線を突破して、大統領与党の国民民主党(NDP)本部に火をつけた。

 ムバラク大統領は現地時間29日早朝の演説で、暴動や略奪は正当化されないと表明。このところのデモについて、「隠れた動機に基づく陰謀だ」と非難した。同大統領は「自己表現の権利および平和的表現の中での言論の自由という観点から大統領職にとどまる」と宣言した。

 オバマ米政権は28日、エジプトの治安部隊がデモ隊の鎮圧を目指し暴力の使用を続ける場合には、同国に対する15億ドル(約1230億円)の年間支援を打ち切る意向を表明した。

 クリントン米国務長官は同日、「エジプト政府は暴力ではこうした抗議を押しのけることはできないと理解する必要がある」との見解を示した。

記者: CHARLES LEVINSON And MATT BRADLEY



●ヨルダンでも大規模反政府デモ、首相退陣求め

(CNN 2011.01.30 Sun posted at: 10:28) http://p.tl/QYfr

中東ヨルダンの主要都市でも28日、経済・政治政策の改善を求める大規模な反政府デモが行われた。同国の民衆の間では、物価高騰、低賃金、高失業率などに対する不満の声が高まっており、これが今回のデモに発展したとみられる。

警察当局によれば、首都アンマンでは同日、イスラム組織ムスリム同胞団のヨルダン国内支持者ら約3000人がデモを展開。参加者らは、リファイ首相の退陣および議会解散も要求した。他の6都市でも、計約2200人がデモに集結したという。

数週間前、ヨルダン政府は貧困にあえぐ国民の救済策として、減税や日用品の配給などいくつかの経済的措置を講じたが、依然としてこれを不満とする市民らがデモを開始。今回のデモは政府への政策改善を要求するためだけでなく、最近他のアラブ諸国で相次いで起きている自由と政権打倒を求める反政府運動の影響が波及したものとされている。



●エジプト:反政府デモ 近隣各国、波及を警戒 中東和平への影響も懸念
(毎日新聞 2011年1月30日 東京朝刊) http://p.tl/VlkD

 エジプトの反政府デモ拡大に周辺諸国が懸念を深めている。シリアやイランなどエジプト同様に強権統治を続けてきた政権は自国への波及を警戒。パレスチナとの和平問題を抱えるイスラエルはエジプトの政権転覆が自国の安全保障に直結する事態を懸念している。【カイロ和田浩明、エルサレム花岡洋二、テヘラン鵜塚健】

 ◆イスラエル

 イスラエルにとってエジプトは、79年にアラブ世界で最初に平和条約を結んだ安全保障上極めて重要な隣国だ。政府は公式発言を控えているが、動向に最大限の注意を払っているのは間違いない。

 イスラエルの国防関係者は、エジプトの体制変革が「安保政策の革命的な見直し」をもたらす可能性を警告する。イスラエルが中東で平和条約を結ぶ国はエジプトとヨルダン。ほかはレバノン、イランなど「敵国」に囲まれている。長く友好関係にあったトルコとも08年末のガザ侵攻後、関係が悪化。その中でこれまで「軍がエジプト以外に集中できた」利点は大きいと国防関係者は指摘する。

 エジプトはパレスチナとの中東和平交渉でも仲介役を果たしてきた。現体制維持が望ましいのは明白だ。

 デモに参加したエルバラダイ前国際原子力機関(IAEA)事務局長やイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」が政権を握れば、両国関係が危うくなるとの見方が強い。エルバラダイ氏はIAEA時代、核政策でイスラエルに厳しく、イランに甘かったと、地元紙がコラムで批判した。

 一方、反政府デモの影響がイスラエル国内や占領地へ波及することへの懸念もある。地元メディアによると、パレスチナ系住民の多い東エルサレムでは、ユダヤ人との経済格差や入植住宅建設を巡り散発的に起きていたデモが一気に大規模化する恐れがあるという。

 ◆イラン

 イラン政府がエジプト情勢に関し、難しい対応を迫られている。メフマンパラスト外務報道官は29日、「エジプト政府が国民の要望を聞くことが望ましい。治安部隊は暴力で応じるのをやめるべきだ」とコメントした。しかし、イラン政府自らが09年6月の大統領選後、反政府運動を弾圧した過去を抱え、エジプトの反政府デモを強く支持すれば自国でのデモを再び招きかねないため、慎重な姿勢を崩していない。

 イランでは09年の大統領選後に開票結果への疑念から大規模なデモが発生。政府は強硬手段で臨み、死傷者を出したうえ多数の関係者を拘束したため、反政府運動は表面上、下火になった。しかし、昨年12月以降の政府による補助金削減で、ガソリンやパンなどの物価が上昇。09年は主に中間所得層による民主化デモだったが、アフマディネジャド政権の支持基盤である貧困層にまで不満が広がり始め、新たな形のデモも懸念される。

 イランと同様の地域大国エジプトで、進行中のデモが体制転覆などの事態につながれば、イランでも現実味を帯びてくるため、警戒を強めている。

 ◆アラブ諸国

 チュニジア、エジプトと続いたアラブ長期独裁政権の動揺をアラブ諸国は懸念を持って見つめている。

 サウジアラビアで長年情報長官を務めたトゥルキ王子はエジプトで反政府騒乱が始まった翌日の26日、エジプト情勢について「どこに行くか分からない」と発言。国民の要求を理解できるかどうかが指導者にとって重要と語った。

 民意把握の重要性は、王族が権力を独占してきたサウジアラビアや、権力世襲で長期独裁体制が続くシリアなどにとり人ごとではない。チュニジアやエジプトで強権支配に大きな「ノー」が一般国民から突きつけられた今、従来通り「政治的安定」で独裁を正当化し、常態化した権力世襲を行えば、自国民の怒りを買う。

 サウジアラビアはアブドラ国王が80代と高齢のうえ病気療養中で、弟で後継のスルタン皇太子も同じく80代で健康問題を抱える。保守的なイスラム教の一派ワッハーブ派を国教とし、基本的人権の規制や高失業率で若年層の不満は積もっているとみられる。

 また、00年にアサド大統領が父親から政権を事実上受け継いだシリアでは、28日に「インターネットと携帯電話を規制」との報道があった。当局は否定したが、チュニジアやエジプトでの反政府騒乱はオンラインの情報交換が触媒となっており、以前からネット規制を行ってきたシリアがこうした施策を取っても不思議はない。治安体制も「エジプトでの騒乱後、相当に強化された」(米民間情報機関)という。



●エジプトなど中東の混乱、米外交政策に難題
(ウォール・ストリート・ジャーナル 1月27日13時10分配信) http://p.tl/jZIx

 チュニジアの独裁政権が崩壊してわずか2週間足らずで、米国など西側と同盟を結んでいる中東諸国の国内的緊張は近年見られなかった水準にまで高まっており、米国はさらなる難題を突き付けられている。

 米国は中東の同盟国に対し、民主化と国民の政治参加の推進を求める一方で、たとえ独裁的としてもその政権を支持してきた。テロとの戦い、イスラエルの安全保障強化、それにイランの影響阻止を目指すうえで重要な同盟国という理由からだ。しかしチュニジアやエジプトの混乱は米など西側諸国の中東政策に難題となっている。

 チュニジアのベンアリ政権を崩壊させた蜂起に触発されて、アルジェリアで抗議行動があったほか、米国の同盟国であるヨルダン、イエメンでもデモが発生した。25日にエジプトで発生した大規模な反体制デモもその1つだ。

 全ての混乱や緊張の高まりがチュニジアの蜂起の影響を直接的に受けているわけではない。例えば西側と同盟しているレバノンの挙国一致政権は、イスラム教シーア派武装組織ヒズボラの主導により崩壊した。25日にはヒズボラの支持した候補者が首相に選ばれ、イランとシリアの影響を排除しようとする米国の外交政策にとって打撃となった。

 またパレスチナ暫定自治政府は、安全保障面でイスラエルに協力し、交渉で譲歩する意向を示した内部文書の流出に揺れている。多くのパレスチナ人にとって、内部文書の流出は西側の支持を受けるアッバス議長とファタハの信頼性を損ね、武装組織ハマスの勢力を強めるものだ。

 クリントン米国務長官はチュニジアの蜂起発生以前に中東を訪問した際、この地域で独裁体制を敷いている国の政権に対し、国民の一層の政治参加を容認しなければならないと述べ、厳しい姿勢をみせていた。

 チュニジアの蜂起の数日後、一部の政権に国民の不満に対応する意向がほとんどないことが明らかになった。チュニジアのベンアリ前大統領はデモを鎮圧しようとしたが、軍が取り締まり強化を支持しなかったことを受けて、国外に逃亡した。

 ドーハを拠点に活動しているブルッキングス研究所のアナリスト、シャディ・ハミド氏は「米国の政策の間違った想定が明らかになった」と述べ、「民主主義を犠牲にして独裁政権を支持したのは失敗だった」と指摘した。

 米当局者らは、中東地域の国の政権に政治参加拡大の方法を探るよう求める一方で、当該政権を支持する以外に方法はないと語っている。フェルトマン国務次官補はチュニジアの政権崩壊を受けて、米国が中東同盟国に長く伝えてきたメッセージの重要性が浮き彫りになったと述べた。すなわち 「概して独裁的な政権は、自国の志ある若者を政治的意思決定のプロセスに組み込むよう努力すべきだ」というメッセージだ。それに失敗すれば、25歳未満のアラブの若者世代を幻滅させてしまう、と米政府当局者らは言う。

 政治的な動揺は、中東地域メディアの台頭によっても拍車がかかった。カタールに本拠を置くアラビア語の衛星テレビ局アルジャジーラはチュニジア、アルジェリア、エジプトなど中東地域をカバーしている。そのウェブサイトはパレスチナ秘密文書をリークし、西側が支援しているパレスチナ指導者をろうばいさせた。

 また食料品価格の上昇が、困窮しているアラブ諸国の人々が立ち上がる発火点となった。各国政府は比較的迅速にこうした不満に対処した。それは、政治参加拡大ないし新政権樹立の要求を沈静化させる目的もあった。ハミド氏は「チュニジアの教訓は、経済的な抗議が極めて迅速に政治的なものに変化することだ」と述べた。