●ウィキリークスが公開した日本関連公電
(ウォール・ストリート・ジャーナル2010年 12月 1日 11:06 JST  http://jp.wsj.com/World/Europe/node_154968

 内部告発サイト「ウィキリークス」が公開した米外交公電のうち日本に関する文書を公開する。

スティーブンス駐韓米大使と韓国外交通商省の千英宇第2次官(現・外交安保首席秘書官)との中国と北朝鮮の関係に関する2月17日の会談をまとめた、在韓国米大使館による「秘密」分類の公電から。(2010年2月22日付)

北朝鮮の金正日総書記
 千第2次官は、北朝鮮が崩壊した際、非武装地帯より北での米軍のプレゼンスを中国は明らかに「歓迎しない」と述べた。また、韓国が支配し、米国と 「害のない同盟」で結ばれ、中国に敵対的でない統一朝鮮ならば、中国は受け入れる可能性がある、との見解を表明した。中国企業にとっての貿易と労働力輸出 の多大なる機会が、統一朝鮮に対する中国の懸念を和らげるだろう、との見方を示した。さらに、北朝鮮崩壊時の中国による軍事介入の可能性を一しゅうし、中 国の戦略的経済利益は北朝鮮ではなく日米韓にある、と述べた。さらに、北朝鮮内部の危機に中国が容赦のない軍事介入を行えば、「中国の少数民族居住地域で 遠心力が強まる」可能性がある、と語った。

日韓関係について
 日韓関係が強化されれば、韓国が支配する統一朝鮮を日本政府が容認する可能性が高まる、とのスティーブンス大使の指摘に千第2次官は同意した。第2 次官は、朝鮮半島の分断が「日本の望み」であった場合でも、北朝鮮崩壊時に再統一を妨げる力を日本政府は持っていない、と語った。

北朝鮮に関連するアジア情勢に関する匿名の情報筋との6月16日の会談をまとめた、在中国米大使館による「機密」分類の公電から。(2009年6月17日付)

 XXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXXはCharge(代理公使)に、北朝鮮について西側メディアの報道には後れを取っていない、と述 べた。さらに、米国の専門家は、金正日総書記の死亡後に北朝鮮が内部崩壊すると仮定すべきはない、とした。中国のアナリストは、体制が依然として普通に機 能するとみており、総書記死亡後にシステムが崩壊するとの見方を強く疑っているという。

 韓国は新しいアイデアを持たず、日本は協議を台無しにするだけだ。

 XXXXXXXXXXXXによると、6カ国協議で韓国首席代表を務める魏聖洛(ウィ・ソンラク)朝鮮半島平和交渉本部長が6月9日、武大偉・朝鮮半 島問題特別代表と会談したが、特に新しい展開はなかった。「韓国は多くのアイデアを持っているが、それらはすべて聞いたことがあるものだ」と XXXXXXXXXXXXは不満を漏らした。その上で、韓国政府は北朝鮮に近すぎて客観的になることができない、と述べた。さらに、拉致問題に固執する日 本は、何かを動かすには余りに弱く、何かを破壊するにはあまりに強いとの中国のことわざを思い起こさせる、と語った。

韓国の近隣諸国に対する外交政策をまとめた、在韓国米大使館による「機密」分類の公電から(2009年1月12日付)

 李明博(イ・ミョンバク)大統領は、日本政府との関係改善に努力している。対日関係は、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時に歴史と領土問題をめぐり酷く 損なわれた。李大統領は「過去をめぐる諍い」と自身が呼ぶものを区分化して整理しようとする。就任時の施政方針演説で大統領は「韓国と日本は現実的にな り、未来志向の関係の構築を試みるべきだ。歴史的真実を忘れえてはならないが、過去をめぐる諍いにより将来の関係を犠牲にする余裕はわれわれにはない」と 述べた。

 李大統領のビジョンは、歴史問題を超えて、北朝鮮の非核化といった問題に積極的に関与できる韓日関係を構築し、それにより多国間の関係や貿易経済を強化し、代替エネルギーや伝染病、貧困救済といった計画において協力を強めることだ。

 これまでのところ、李大統領の努力はある程度の成功を収めている。ただ、青瓦台(大統領府)当局者は、特に竹島(韓国名は独島)問題の扱いで日本政 府にもっと勇気があれば、結果ははるかに良好なものになっていただだろう、と話す。李大統領は、地域や世界でより戦略的な役割を担うよう日本に求める計画 を推し進めてきた。

 李大統領は10月に東京で開催される日米韓3カ国政策立案協議への参加を決め、また11月にワシントンで6年ぶりに開催される3カ国防衛協議に合意 した。さらに、12月には自らのイニシアティブに基づく日中韓3カ国首脳会議を福岡で開催した。もちろん、批評家はこれらの協議で実質的な成果は何もな かった、と指摘するだろう。しかし、こうした協議が実際に開催されたこと自体が重大な結果なのである。

在中国米大使館による「秘密」分類の公電から。「Charge」とは、公電が発信された時点で代理公使を務めていたDan Piccuta氏を指す。(2009年4月30日付)

 XXXXXXXXXXXX によると、20カ国・地域(G20)首脳会議の初回および第2回で、米国と中国の立場は近かった。米国と欧州の立場よりも近かった。財政刺激や国際的な金 融機関の改革といった主要な問題に対する両国の見方は同じだった。ロンドン会合に至るまでの間、XXXXXXXXXXXXは米英中による「トロイカ」は効 果的であると考えていた。中国政府は発展途上国の説得が可能だった。米政府は日韓両国に影響を与えることが可能だった。英政府は欧州諸国と対話ができた。

 *この文書を先に進むと、国連安全保障理事会の改革に関連した記述がある。安保理常任理事国数の拡大の可能性に関するものだ。

 安保理改革の「勢い」を中国は懸念していた。この勢いは5常任理事国にとってよくないことだ、とXXXXXXXXXXXXは語った。中国は米国に安 保理改革に「積極的」にならないよう求めた。中国は安保理改革が国連総会の決議になることを恐れていたのだ。常任理事国の数を増やすべきではない、と XXXXXXXXXXXXは述べた。常任理事国数が10になれば、中国と米国はともに「困難な立場に陥る」可能性があるという。さらには、中国国民が日本 を常任理事国として容認するのは困難な見通しだ。

 Chargeは、米政権は常任理事国数の拡大に関する政策のレビューを完了しておらず、特定の提案に対する立場は決めていない、と応じた。それで も、国連加盟国は、常任理事国から過度の影響を受けることなく、自由かつオープンに自国の意見を陳述することを容認されるべきだと米国は確信する、と述べ た。日本に関してChargeは、どの国が常任理事国に該当するかについて決定は下されていないが、国連予算への貢献度が世界2位の日本が、拡大する常任 理事国に含まれないとの見方は受け入れ難い、と述べた。

スタインバーグ米国務副長官とシンガポールの元首相、リー・クアン・ユー顧問相との5月30日の会談をまとめた、在シンガポール米大使館による「秘密」分類の公電から。(2009年6月4日付)

 国務副長官は、北朝鮮の決定は日本に影響を及ぼすと述べた。リー顧問相は、日本は「核兵器」を保有する可能性がある、と語った。中国はこうした要因 を計算に入れ、日本の核武装は、緩衝国としての北朝鮮を失うことほど悪くはないとの結論を出した可能性がある。中国は長期的見方に基づき、今後数年以内に 北朝鮮の現指導層は消え、新たな考えを持った新たな指導者が現われると考えているに違いない。それでも、北朝鮮は存続しているだろう。