菅政権 3月退陣 解散もできず哀れな末路 首相交代でも解散・総選挙

(日刊ゲンダイ2011/1/31)

民主党は菅を代表に選んだ時に道を誤った

─政権に必死にしがみついているがもうすでに死に体。国政は一歩も動いていない

スッカラ菅首相が行かなくてもいいダボス会議に行っている間に、政局がにわかに緊迫してきた。通常国会が始まったばかりだというのに菅の退陣が決定的になってきたのである。きのう(30日)、国民新党の下地幹郎幹事長はTVで「予算を通さない首相はありえない。予算が通らなければ、首相を続けることは難しい」と切り捨てた。予算案と関連法案が年度内に成立しなければ「辞めろ」ということだが、国民新党といえば、閣僚を出している連立与党。“身内”がここまで言う裏には、いくつもの事情がある。

まず、今月25日の公明新聞。官邸が慌てたのは「約束破りの菅政権糾弾」の大見出しだ。前日の両院議員総会で公明党の幹部が菅政権を徹底的にこき下ろしたことが詳細に報じられ、学会・公明党の「対決宣言」が鮮明になった。

以後、公明党の菅批判は、驚くぐらいエスカレートしている。山口那津男代表は国会質問で、菅が、野党が協議に応じなければ「歴史に対する反逆行為」と言ったことを取り上げ、「野党を挑発するとは何事か。民主党のマニフェストは破綻した。あなたにこの国の首相をもはや任せていられない」と攻め立てた。井上義久幹事長は「改めて信を問うべきだ。それができないのであれば、首相の職を辞すべきだ」と迫り、ついにきのう、漆原国対委員長が「予算案に反対する以上、関連法案にも賛成しづらい」「(子ども手当も)前回賛成した際は恒久財源の確保などを行うべきだと条件をつけた。1年待ったが実現されていない」と関連法案に賛成しないことを明言した。


◆スッカラ菅政権に米国も見切りをつけたか
「菅官邸はショックで茫然自失じゃないですか。何だかんだいって、現世利益を追求する創価学会を支持母体に持つ公明党は、最後は子ども手当に賛成してくれるものと当て込んでいたからです。それが無理となると、通常国会で公明党の協力は得られない。もちろん、自民党はイケイケドンドンで倒閣ですから、ねじれ国会で法案は通らない。菅政権は完全に行き詰まったことになります」(民主党関係者)

そうしたら、すぐに国民新党が反応したわけである。国民新党はもう“半身”に構えているように見える。菅に見切りをつけ、逃げ出す準備ということだろうが、そこには米国の事情もあるようだ。
春の訪米で政権浮揚をもくろんでいた菅に対し、訪米の延期が取りざたされているのである。
「米国は菅政権が持つのか、と疑心暗鬼になってきたのでしょう。春に訪米されてもその後、すぐに退陣では、オバマ大統領がわざわざ会う意味がない。だから、6月まで延期の方向で調整中です」(米国事情通)

官邸はスッタモンダだが、そこに米国格付け会社S&Pによる日本国債格下げが追い打ちをかけた。担当ディレクター、小川隆平氏が30日付の日経新聞で格下げの理由を説明していたが、これにも菅はシビれたのではないか。
「予算案も関連法案が通らなかったら半分しか執行できない」
「(財政健全化目標は)あってないようなものだ。政権が代われば『誰が言った目標なのか』と言うだろう」
「アイデアだけなら誰でも出せる。問題は政治が実行に移せるかだ」
簡単に言えば、S&Pは「菅は持たない」と見ていることになる。だから、国債格付けを下げたのである。
国会はきょう(31日)から、予算委員会が本格化するが、野党は民主党の勝手な日程設定に反発、欠席をチラつかせ、冒頭から倒閣戦術を取っている。そんな異様な状況の中、どんどん、首相の求心力が落ちている。
こりゃ、前代未聞の展開ではないか。この政権はいつまで持つのか。3月危機どころか、2月危機ではないか。そんなムードなのである。


◆何の展望ないくせに大ボラを吹く無責任
義者の岡田幹事長は“裏ネゴ”はしない。他の国対幹部も動けない。かくて、自公が完全に敵に回り、菅政権は国会が始まる前に追い詰められてしまったのです」
いやはや、恐るべき無定見政権だ。ねじれ国会なのに何の展望、戦略もなく通常国会になだれ込み、いきなり、自爆のムードだ。

よくぞまあ、社会保障と税の一体改革なんて、大風呂敷を広げられたものだ。
永田町ではいま、口からデマカセのペテン首相、菅と森元首相の類似点があれこれ語られている。
「森さんは改造内閣で首相経験者の宮沢喜一氏の協力を仰ぎながら、公明党の離反、低支持率、失言、言い間違いなどで追い込まれた。7月の参院選を前に“こんな首相じゃ戦えない”の声が上がり、党内から引きずり降ろされたのです。正月には公邸で新年会を開き、求心力を高めようとしたがダメだった。すべてが菅首相とそっくりです。与謝野大臣を据えても逆効果。このままでは愛知の知事選、名古屋の市長選も惨敗する。4月の統一地方選を前に、“シャッポを替えろ”といううねりが広がっていくのは確実です」(政界事情通)

そうなれば、ますます野党は勢いづく。予算関連法案は絶対に通らず、子ども手当はもちろんのこと、公債特例法も成立せず、赤字国債も発行できないことになる。

こうなったら、菅の選択肢は3つだ。
総辞職か、解散か。それとも子ども手当などすべてのマニフェストを引っ込め、自公にひれ伏し、協力を仰ぐか。

こんな情勢で民主党議員は絶対に選挙はしたくないだろうから、菅が解散しようとしても羽交い締めにされることになる。
子ども手当などのマニフェストを引っ込めたら、民主党は政党としての存在理由を失ってしまうから、こちらもダメ。つまり、菅にできることは総辞職だけ。国民の怒りの渦の中、引きずり降ろされることになるのである。


◆民主党は解散から逃げても無駄だ
さて、そうなった場合、民主党はどうするのか。おそらく、国会議員だけの両院議員総会を開いて、次期代表を選び直す。新代表は前原外相か岡田幹事長、原口一博前総務相あたりか。いずれにしても、新顔で統一地方選を乗り切って、衆院の解散は様子を見る。勝てそうならば、やるだろうが、負けそうならば、先送り。

こんな思惑だろうが、そんな身勝手は許されない。法大教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言う。
「前の総選挙から2年近くたっているわけですから、解散して信を問うべきです。大体、この1年半の間に民主党は影も形もない政党に変わってしまった。鳩山・小沢コンビが反主流派になり、政権交代時のマニフェストは風前のともしびです。菅政権はマニフェストの見直しを宣言しているのですから、新首相が菅路線を継承するのであれば、信を問わなければなりません」

もちろん、民主党は大惨敗するだろうし、かといって、自民党が単独過半数を得られる見込みもないだろう。国会は大混乱の中、新たな連立を模索することになる。
「衆参のねじれを解消する組み合わせを考えるのでしょうが、単なる数合わせでは野合になるし、そう簡単にはいきません。政党の枠を超えた政界再編になっていくかもしれません」(五十嵐仁氏=前出)
いずれにしても、政治的混乱が長引けば、この間、日本の国力はどんどん落ちていく。それもこれもすべて、国民との約束を反故(ほご)にし、ただ権力にしがみつきたい一心で、デタラメ政治に舵切りした菅・民主党政権のせいだ。国民は怒りの鉄槌を下さなければウソである。





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