菅首相の「経済成長」政策で232万人の雇用喪失

(日刊ゲンダイ2011/2/4)

「1に雇用、2に雇用」と叫んだスッカラ菅首相もガク然とする経済リポートが出た。

政府は、「産業構造ビジョン2010」の中で、「戦略5分野で2020年までに新たに258万人の雇用創出を目指す」という目標を立てているが、たとえこれが実現しても、その他の産業で雇用減少に歯止めがかからず、結果的に、差し引き232万人の雇用が失われるというのだ。

◆製造業、建設業は捨てられる!

政府が戦略5分野としているのは、「インフラ関連/システム輸入」「環境・エネルギー課題解決産業」「医療・介護・健康・子育てサービス」「文化産業立国」「先端分野」だ。2020年にはこの分野の雇用が866万人になり、07年時点に比べ258万人の雇用増になるという。特に医療・介護関連で113万人の大幅な増加を見込んでいる。

しかし3日にリポートを出した第一生命経済研究所の分析によると、戦略5分野以外では、国内製造業が生産拠点を海外に移転したり、公共事業の低迷で建設業の不振が続くなどして、毎年約50万人ずつ雇用が減る。結果として、2020年までに652万人の雇用が減少することになるというのだ。
戦略5分野の波及効果で100万人以上マイナス幅が抑えられたとしても、トータルの雇用減少は止まらず、07年比で232万人の雇用が失われることになる。

菅が、「介護だ、子育てだ」と旗を振っても、それだけでは雇用環境は改善しないのである。
リポートを執筆した同研究所の主席エコノミスト・永濱利廣氏がこう言う。
「既存の産業から雇用が減少する分を、新たな産業で吸収する態勢ができていないのです。タクシー運転手がすぐに農業に移ることはできない。政府は数字を語るだけで、現実的な政策は踏み込み不足です。例えば円高で製造業が海外へ工場を移転してしまうのをストップするなら、日銀とタッグを組んで円高を阻止するようにするべきでしょう」

日本の失業者はずっと300万人前後。それが一気に230万人増とは震えるしかない。



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