「菅は去れ」と大多数の国民の声 (日刊ゲンダイ2011/2/4)

呪われた政権

「大変重大な国民に対する背信行為だ」――よくぞ恥ずかしげもなく言えたものだ。きのう(3日)の衆院予算委で、菅首相が大相撲の八百長事件についてエラソーに批判していた。

八百長相撲に手を染めた力士たちでさえ、「アンタにだけは言われたくない」の心境だろう。相撲協会以上に、国民を欺く壮大な八百長を仕掛けているのは、菅その人である。八百長政治家が八百長相撲を叱るなんて、ブラックジョークにもならない。

昨年の今頃、財務相だった菅は消費税増税について、「逆立ちしても鼻血が出ないほど完全に無駄をなくしてから」と威勢がよかった。それが、今じゃどうだ。通常国会冒頭の代表質問で「無駄は永遠に生まれます。100%純粋に『無駄ゼロ』という状況が現実的には理解できない」と1年前の自分の発言を否定する答弁をしていた。耳を疑う宣言ではないか。とうとう菅は、財政の無駄をなくすのは不可能と開き直ったのだ。政治評論家の山口朝雄氏もアキれてこう言う。
「『税金の無駄遣い根絶』は、民主党がマニフェストにイの一番に掲げた政権交代の原動力です。政官財べったりの自民党政治では税金の無駄が永遠に続いてしまう。マニフェストの理念を信じ、税金の無駄を根絶して欲しいと、民主党に3300万人以上の有権者が政権を託したのです。それなのに、事業仕分けを単なるパフォーマンスで終わらせ、“鼻血”が出る前から『無駄ゼロは理想だった』『それが現実』と開き直るのは、有権者をダマしたのと同じです。菅首相こそ、八百長力士以上に『大変重大な国民に対する背信行為』を犯しています」

◆小沢色を薄めようと自民政治に逆戻り

菅の国民に対する背信は、数え上げればキリがない。マニフェストの目玉だった子ども手当は「検証の対象」と見直しの構え。ガソリン税の暫定税率廃止も「事実上進んでいない」とお手上げ状態だ。高速道路の無料化なんて、ハナからやる気ゼロ。対等な日米関係も完全に“死語”で、思いやり予算の満額計上やTPP参加方針など、アメリカにシッポを振りまくっている。
菅は、民主党政権の金看板だった「政治主導」までかなぐり捨ててしまった。通常国会直前に、わざわざ各省の事務次官を官邸に集め、政治主導について「反省なり行き過ぎなり不十分なり、いろいろな問題があった」と、オール霞が関に「わび」を入れたのだ。何なのか、この政権は――。
「脱小沢路線にカジを切った頃から、菅首相は迷走を重ねています。どんな政策を掲げればいいのか分からぬまま、ひたすら『国民生活が第一』を順守する小沢色を薄めようと躍起になるあまり、結局、自民党政治に戻ってしまった。マニフェストの原点からどんどん離れて、支持者を裏切る結果となっているのです」(山口朝雄氏=前出)

自民の比例復活で当選した与謝野馨を内閣の要に抱え込み、消費税アップの旗振り役を任せていることをインチキと思えないほど、理念・哲学のない政権だ。菅のおかげで、この国は「木の葉が沈み、石が流れる」のような道理の通らない、何でもアリのハチャメチャな状態になってしまったのだ。

◆偶然とは思えない疫病神政権下の天変地異

この国では古くから、「治世(政治)が乱れると、天変地異が起きる」と言われてきた。歴史を振り返ると、為政者のデタラメが続けば、天候は乱れ、疫病が蔓延し、地震や火山噴火が相次ぎ、庶民の怨嗟の声が充満してきた。スッカラ菅内閣が、あらゆる厄災を招いているとは言わないが、菅がハチャメチャ路線に突入してから、この国はロクでもないことばかり起きている。
日本海側は北陸を中心に史上最悪の豪雪被害に見舞われ、宮崎・鹿児島両県境の霧島連山では、新燃岳が江戸時代の1716年以来、約200年ぶりに噴火して大騒ぎだ。口蹄疫の牛処分に続き、鳥インフルエンザの感染拡大も、一向に収まる気配はない。

天災だけではない。呪われた菅政権は、実体経済をも乱しに乱している。エコノミストの紺谷典子氏はこう言うのだ。
「平均株価は1万円台に張り付いたままです。リーマン・ショックで日本は世界で最も傷が浅いと言われたのに、この間の株価上昇率は“震源地”の米国の足元にも及びません。菅政権の政治理念と国家ビジョンの欠落が悪影響を及ぼしているのです。菅首相はこの国をどうしたいのか、何をやりたいのか。目的のない『改革』なんてあり得ないのに、『社会保障と税の一体改革』と言葉を躍らせるだけで、方向性も着地点も見えない。市場も企業も、こんな政権に任せて大丈夫かと不安になるばかり。マイナス心理が設備投資や新規採用の見合わせにつながって、行き着いた先が、史上最低の大卒就職率です」
失業率も5・1%にハネ上がってきた。

◆節分の鬼と一緒に政権を去れ

最悪なことに、哲学も理念もない政権亡者の菅は、財務省の言いなりとなって「財政再建」を決まり文句に消費税増税にひた走っている。大不況の中で大増税じゃあ、天地も人心も怒るのは当たり前だろう。
「一国のトップには大経営者の発想が必要です。足りない税収を鉛筆なめなめで増税で補うなんて、器量の小さい経理マンの発想ですよ。今の日本の優先課題は財政再建よりデフレ脱出であり、国民生活の再建です。デフレ脱出の処方箋も講じないままに増税をあおれば、企業も消費者も防衛に走って、ますます守りの経済になってしまう。いつになってもデフレ不況の出口は見えてきません。経済無策どころか、悪化策にカジを取る菅首相は、日本経済にとって疫病神と言うしかありません」(紺谷典子氏=前出)
菅のスローガンである「最小不幸社会」が聞いて呆れるような惨状である。これだけのデタラメ政治を続ければ、30%を割り込んだ支持率低迷も自業自得だ。菅が政権の座にしがみつくほど、ますます国民の不幸は拡大してしまう。

菅が政権しがみつきの悪あがきを続けたところで、ねじれ国会の中、野党の協力は得られない。ついに公明党も完全にソッポを向いた。支持率は落ち、政権運営に行き詰まり、袋小路にはまり込むのは目に見えている。この国に襲いかかる「災い」を鎮めるためにも、節分の鬼と一緒に「疫病神の菅も政権を去れ」が、立春を迎えた大多数の国民の願いなのだ。




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