●小沢の「中国人脈と後継者」

石川知裕議員が語る[後編]「真説 小沢一郎論」─角栄との相違点


聞き手 編集部 常井健一  
(AERA-net 2011年01月30 ) http://p.tl/iQNM


 あの日は雪が降っていましたね。1996年2月3日、私(石川知裕)は初めて深沢(小沢私邸)に足を踏み入れました。小沢一郎秘書としての記念すべき初日だというのに先生は奥さんと岩手。非常に緊張していたので留守だと知って拍子抜けしました。その後、雪かきが初仕事でした。

 次の日、入り口にセルシオがドーンと止まって小沢一郎が出てきました。事前に樋高剛さん(衆院議員、当時は秘書)から、「『今日からお世話になります、石川です。よろしくお願いします』とだけ言うんだ」と教えられたので、一言一句そのまま言って頭を下げました。すると、先生は「お、よろしく」と。後で樋高さんが「オレの時は『お』だけだったぞ。今日は機嫌がいいな」と言ってくれましたが、あまりにそっけないですよね。

 昨年10月20日の夜、新丸ビルの寿司屋「たる善」で、私が1月に逮捕されてから初めて小沢先生と飲みました。L字形のカウンターを囲むように、奥から小沢先生、松山千春さん(歌手)、佐藤優さん(作家)、私の順に座り、少し遅れて鈴木宗男先生(前衆院議員)が到着しました。その日は収監目前の鈴木先生を激励するために集まりました。

「どもども、代表選お疲れさまでした」と言いながら席に着く鈴木先生を、小沢先生はじろっと見て、「そ、それより、大丈夫なのか」と尋ねていました。鈴木先生は来る直前に記者会見で「がん再発」を告白したばかり。「大丈夫、大丈夫。楽しみにしていました」と応じて赤ワインを注文する鈴木先生を確認すると、小沢先生は「ならいいけど」と言って乾杯をしました。

 小沢先生は普段から体を気遣って脂っこいものを食べません。基本は光り物、握りより刺し身。いくら、うに、大トロは頼まない。あの夜、小沢先生はいつも通りコップ一杯のビールを飲み干すと熱燗に移りました。

尖閣事件後に憤った「寿司屋での一席」「中国は行き詰まる」

 昨秋起きた尖閣事件で菅総理は船長釈放の判断を那覇地検に委ねたわけですけども、あの席でも小沢先生は憤っていましたね。「一役人の責任にしてしまうなんて政治家としてあってはならない。日本は中国に対して間違いは間違いだと指摘しないと国家としての道を誤ってしまう」と。小沢先生は菅政権の動きを冷静に分析していました。特に外交の体たらくには思うところがあるようで、外務省幹部の具体的な名前を挙げながら、「改革」の方向性についてかなり突っ込んだ話をしていましたーー。




●小沢の「新・大連立論」
石川知裕議員が語る[中編]「真説 小沢一郎論」


聞き手 編集部 常井健一
(AERA-net 2011年01月23日)http://p.tl/d_VU


 私(石川知裕)は今、無所属の立場で国会活動をしています。どこの会派にも属していません。無所属にもいろいろ形があって、政党の衆院会派に属している議員もいれば、私のように会派に属さない議員もいます。

「完全無所属」の立場だと、常任委員会や質問の割り振りは希望通りにいきません。民主党の持ち時間を、7分間だけわけてもらって質問できたこともあります。政党交付金はないので、主に支援者からの献金で活動を支えてもらっています。ただ、本会議や委員会で一票を行使できるし、官庁からのレクも受けられ、国会の調査機能も使えます。その点では基本的には政党に属していた頃と変わりません。

 日中は来客や陳情の処理、国会対応で埋まり、夕方は公判に向けた準備もあるので夜遅くまで事務所にいることが少なくありません。それでも民主党の頃は、同僚議員の会合に顔を出さなければなりませんでした。逮捕後はあまりそれはない。寄り道せずに議員宿舎に帰り、寝る前に読書をすることが増えました。民主党にいた時よりも政策の勉強ができている感じです。

 参院選後に「ねじれ国会」が話題になると、欧州で大連立が次々と生まれた経緯に興味がわいてきて、関連の資料や書籍を読んで勉強してみました。民主党は衆院で再可決に必要な3分の2の議席(320議席)を持っていません。国民新党、社民党を加えても317です。民主党を離党した中島正純さんと私を入れてもまだ足りません。そこに「たちあがれ日本」が入ってくると思っていたら、自民党と反民主で結束してしまいましたね。やり方が拙速でした。

ドイツの例を勉強しろ」

見えていた「菅迷走」

「ねじれ国会」といえば小沢先生が民主党代表で戦った2007年の参院選後を思い出します。突然、「大連立構想」が出てきました。私は国会議員として深沢(小沢私邸)に駆けつけました。「これから政権交代というときに大連立なんて誰も理解できないですよ」と大声を張り上げましたが、小沢先生は「おまえもまだわかってないな。石川、ドイツの例を勉強してみろっ」とーー。