《『政(まつりごと)の心』を求めて》

第88回 「 日本政治の現状(50) 」http://p.tl/002u


1月27日夕刻、デヴィ・スカルノ夫人の事務所を訪ね、約1時間、懇談してきた。きっかけは同月10日にTV朝日から放映された「TVタックル」に、出演した私の言動を観て、手紙をもらい会うことになったのである。小沢一郎という政治家に強い関心をもっており、小沢さんの政治活動を早く復活させないと、日本は大変なことになるとの考えで、私の意見を聴きたいということであった。

デヴィ・スカルノ夫人は、私と同じ世代で太平洋戦争も知っているし、敗戦直後の日本の占領と惨状を身をもって苦労し、生き抜いてきた女性である。日本人でただ一人、外国の国家元首の妻となった女性の波瀾に満ちた人生は、私たちが学ばなければならない教訓が多くある。昨年秋『デヴィ・スカルノ回想記』(草思社)が、刊行されている。政治家などの自伝と違い、苦難と華麗の回想記であり、第二次世界大戦後の世界政治を、デヴィ・スカルノを通じて覗くことができる、必読の書物である。


最初に小沢氏が民主党政権からどうして排除されるようになったのか、その原因について質問をうけた。私から父は岩手県水沢の生れ、母は千葉県東葛飾の生れで、平将門の妙見星信仰文化の地で育った人間だ。桜井よし子さんたち偏狭なナショナリストの宣伝する「両親とも韓国済州島出身ではない」という話から始まった。

自民党政権を崩壊させたという怨念や政治的嫉妬、それに対して小沢氏本人が弁解したり相手を攻撃しない性格が背景にあると、具体例を挙げて説明した。「政治と金」のことも話題となった。デビィさんは「政治には資金が必要だ。報道されている程度の話なら問題ない。それより国民や国家のため立派な仕事をすることだ」と、大きな声になる。

私から巨大メディアの報道する「小沢氏の政治と金」は全部虚報だと、具体的に説明した。メディアは検察がたれ流す虚報と、政敵が捏造する噂話で「小沢叩き」を数年にわたって続けている。検察は必死になって、1年半と巨額な税金を浪費して捜査に全力を挙げたが、2度にわたって不起訴とした。しかし、メディアに洗脳された市民の中には「小沢問題」を理解しない人たちが多くいる状況を説明した。


報道などで「強制起訴」というのは、市民参加の検察審査会制度によるものだ。検察の不起訴措置に対して「起訴相当」と2回議決があれば、起訴となるという法律が平成16年に成立して、昨年から施行された。小沢排除を願う政治的背景によって、小沢さんが狙われたのである。その検察審査会が、本当に2回「起訴議決」を行ったのか。審査員が適法に選ばれたのか、審査会が適法に開かれていないという疑惑がある。


デヴィ夫人の疑問は、菅民主党政権ならそんな不正を止めることができるはずだ、ということに集中された。「そこが本質的な問題です」と、私は菅首相と側近たちが「検察審査会」に何らかの影響を与えて、「強制起訴」への状況をつくり上げた疑惑があると説明した。「これは無実の政治家を国会から放逐しようという、憲法の国民主権に反することで、わが国の議会民主政治の危機といえる。その国会すら一部の議員を除いて、証人喚問とか、離党とか議員辞職など、暴論が多数を占めている。社会暴力装置化したメディアを菅政権が利用し、国会の与野党議員の多数、そして司法も巻きこみ、「新しいファシズム」が着々と進行しているのだ」と実態を話した。


デヴィ夫人と懇談した翌1月28日、菅首相はダボス会議に出席のため、約1億円の税金を浪費することになる。「第三の開国」という時代遅れの演説をしにいったようだ。いま必要なことは「グローバル化(開国)の弊害」にどう対処するかという時代である。日本は大きく狂い始めたようだ。このままでよいだろうか。