また自民と同じ顔ぶれで税制改革 (日刊ゲンダイ2011/2/8)

菅首相しがみつき欺瞞に重大疑義

TBSテレビの最新世論調査で、菅内閣の支持率が21%と過去最低になった。鳩山内閣の末期と同じ水準だという。

菅首相の「3月危機説」が現実味を増しているが、甘くみていると痛い目に遭う。鳩山時代とは決定的に違う点がある。大マスコミや官僚機構がこっそり応援している点だ。

だからTBSの世論調査でも、6割以上が「予算は年度内に成立させた方がいい」「『社会保障と税の一体改革』には野党も積極的に協議に参加すべきだ」と答えていた。菅政権への後押しである。大マスコミの主張に、世論が洗脳されているから怖いのだが、菅もここを延命の突破口に狙っているのはミエミエだ。

ある与党議員が言う。
「不人気でもなんでも、菅さんはもう朝日新聞や読売新聞の主張に乗っかって、官僚に言われるまま政権運営しようと決めている。つまり、消費税増税で突っ走るということです。中央突破でいけば、守ってくれる勢力がある。そのうち活路は開けると開き直っているのです」

「社会保障と税の一体改革」といったマヤカシのスローガンに国民が騙(だま)されていると、本当に消費税増税路線を押し切られてしまう。大マスコミがヨイショする「一体改革」の会議は、“ミスター自民党”の与謝野担当大臣が引っ張り、メンバーには、同じく自民党出身の柳沢伯夫元厚労相や吉川洋・元社会保障国民会議座長(東大教授)も加わった。恥も外聞も捨て、旧自民党時代の増税路線を丸のみ踏襲だからバカにできないのだ。

◆見えてきた民主・自民の大連立

「菅首相は、一日でも総理を長くやりたい。総理の椅子にしがみついていたいのです。その一心で、アメリカにはTPPで媚(こび)を売り、消費税増税で財務省と財界、大マスコミを味方につけようとしているのです。それだけでは国会が不安だから、自民党にも媚びて、民主党マニフェストを次々と捨てたうえに、自民党政権時代と同じような増税会議を始めた。自民党が参加しやすい委員を選び、“自公案”を軸に議論を進める方針を決め、自民党が逃げられないようにしている。最終的には自民党に抱きついてしまう魂胆なのです」(経済アナリスト・菊池英博氏)

もう、事実上の民主・自民の大連立である。大新聞は「党派を超えた議論を」などとハヤし立てている。
4月の統一地方選が終わって、さらに菅民主党がヨレヨレになれば、自民党に“吸収”される形で、消費税増税が強行されておかしくないのだ。前出の民主党議員は「衆院選も参院選も2年後までない。チャンスはここしかないというのが、与謝野大臣や財務省の共通認識」と言った。延命のためなら、菅は何だってやってしまう。


◆大増税の前に政治家給料半減、公務員削減だろ

民主党を昔の自民党に逆戻りさせ、消費税増税にまっしぐら。せっかくの政権交代を何もかも台無しにする菅のことを、「狂気の沙汰と言われても仕方ない」と酷評したのは同じ与党の亀井静香だが、本当だ。こんな狂気の首相の暴走を許していいはずがない。経済評論家の広瀬嘉夫氏が言う。

「こんなデフレ不況の中で大増税の話を進めたら、財政再建ウンヌンの前に、日本経済は沈没ですよ。税制改革というのなら、ムダや不公平を正すのが先決でしょう。先日の愛知県の知事選や名古屋市長選がいい例です。有権者は、自分たちの税金が、高い議員報酬や行政のムダに使われていることに怒っている。菅民主党がやるべきことは、河村たかし市長のように、自分の給料を3分の1にし、議員の報酬を半分にすることです。国会議員の定数だって大幅削減する。トップがまず身を削れば、国家公務員も全国の地方公務員も従わざるを得ない。国と地方合わせて29兆円の公務員人件費のカットも可能になるのです。やることを徹底的にやってから、初めて増税論議をお願いしますというのが筋。菅政権のやっていることは、本末転倒で支離滅裂。存在するだけ国民の不幸ですよ」

◆洗脳される前に立ち上がれ!

菅や与謝野は、羊のようにおとなしく、文句を言わないサラリーマンを狙い撃ちして消費税アップの魂胆だが、サラリーマンは「10・5・3・1」と言われるように、収入を全部捕捉されている。不公平税制や控除廃止で尻の毛までムシり取られているうえに、消費税押し付けなんて、冗談じゃない。財政赤字900兆円の恩恵なんてロクにないのに、なぜイジメ抜かれなければいけないのか。
「民間サラリーマンは過去10年間で可処分所得が2割減っています。不況と小泉格差路線の犠牲にされてきた。もう、それこそ逆立ちしても鼻血も出ませんよ。増税どころか、ドーンと減税をして消費拡大に結び付けることが急務なのです。あべこべのことばかりやって、おまけに総選挙で否定された自公の財政政策に戻そうとする菅首相は、国民への背信行為を続けている。一日も早く退陣に追い込むしかありません」

愛知県の選挙をきっかけに消費税増税論議が頓挫することを恐れてか、朝日新聞は社説で「(名古屋市の)議員報酬を半分にしたところで、浮くお金はせいぜい6億円だ。河村氏がいう10%減税に必要な200億円に遠く及ばない」なんて、水を差していた。こういう大マスコミ報道が6月に向けて氾濫し、国民はさらに洗脳され、菅内閣は不支持だが、「一体改革やむなし」となっていく。菅の思うツボだ。

菅の応援団である大マスコミ報道に騙されず、一番税金をムシり取られているサラリーマンが怒りの倒閣に立ち上がるしかない。ヨタヨタ菅政権など野党が簡単に倒してくれると放置していたら、取り返しのつかないことになるのだ。