検察審査会の強制起訴は違憲 (日刊ゲンダイ2011/2/9)

元法制局部長が注目の論文

小沢元代表が強制起訴され、民主党は相変わらず、処分をめぐってモメているが、そんな中、元参議院法制局第3部長だった播磨益夫氏(現弁護士)が注目すべき論文を書いた。検察審査会の強制起訴議決は違憲・無効だというものだ。国会で取り上げるべきである。

播磨論文はまず、「行政権は内閣に属し、内閣は行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う」(憲法66条)ことを確認する。

行政権を行使する機関として、各省大臣のほかに行政委員会があり、検察審査会もこれに属する。行政委員会は時の権力の関与を避け、「職務の独立性を認める」ことで、適正、公平、妥当な行政権を行使し、国民の基本的人権を保障することが目的で、人事院、国家公安委員会、中央労働委員会、公正取引委員会などがある。

ところで、こうした行政委員会はいずれも法律でどの省庁に設置されるかが明記されている。人事院は「内閣の所轄の下に設置される」(国家公務員法3条)し、公正取引委員会は「内閣府の外局として設置される」(内閣府設置法49条)。

また、委員の人選についても、職務を遂行するにふさわしい適任者を選ぶために細かく法律が定められている。例えば、人事官は「人格が高潔で(中略)年齢35年以上の者の中から両議院の同意を経て内閣がこれを任命する」。行政権が基本的人権を侵害しないようにするためだ。
ところが、検察審査会だけが〈極めて異色な存在〉(播磨論文)なのである。

◆なぜ国会で取り上げないのか

まず、〈行政委員会である検察審査会を『所轄』する上部の行政機関は法律上、まったく存在しない〉(同)。しかもメンバーは人格や識見とは関係なく、市町村の選挙管理委員会が管理する選挙人名簿の中から無作為に選ばれる。当然内閣や総理大臣は任命せず、〈任命責任はあり得ないことになる〉(同)。

こんな無責任な組織が個人の基本的人権を著しく侵害する強制起訴権を有するのである。播磨論文はこう書いている。
〈法律論よりは感情論、情緒論、ムード論に起因して決定される危険性があり、「法律に基づく行政」ではなく、「感情に基づく行政」の危険性が危惧される。強制起訴された人が無罪になった場合、一体誰が責任を負うのか〉〈このような検察審査会法は『故意にも匹敵する重大な過失による立法権の乱用』であり、違憲の疑いが極めて濃厚である〉

従来の検察審査会は強制起訴の権限がなく、「勧告的議決」しかできなかった。だから、抽選で選ばれたメンバーでもよかったが、2004年の法改正で「強制起訴」ができるようになった。ところが、責任の所在はあいまいなままで、メンバーの選び方も変わらなかった。ここに重大な憲法違反があるのである。



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