与謝野大臣 不可解な群馬の山林保有

(日刊ゲンダイ2011/2/10)

土地転がしの失敗なのか 「隠居後の夢」なのか

群馬県北群馬郡榛東村――。人口1万5000人足らず。高崎市と前橋市に隣接し、県のほぼ中央に位置する小さな村の山林に、なぜか与謝野馨経財相(72)が土地を所有している。
面積は、約1300平方メートル。現在はロクに手入れもされず、樹木が生い茂ったままだ。この土地の固定資産税の課税標準額は、わずか2万7200円に過ぎない。
与謝野大臣が、この土地を購入したのは1980年9月のこと。前年の総選挙で落選し、この年6月の総選挙でトップ当選を果たし、政界に返り咲いたばかりだった。そんな時期に、まるで資産価値のないヘンピな山林を手にしたのはなぜか。当時、土地の取引に深く関わった人物が証言する。
「あの山林はもともと、榛東村出身で、与謝野氏の選挙区でもある新宿の自民党区議だった方(故人)の親族が所有していたのです。何でも、あの土地に超大型の天体望遠鏡を持つ観測所を建てる計画があり、与謝野氏が土地を欲しがっているとの話でした。そこで与謝野氏の選挙を手伝っていた区議が仲介し、親族が土地を手放したのです」
70年代後半からアメリカと旧ソ連が、新型の巨大望遠鏡の開発競争を繰り広げ、当時は日本でも巨大施設の建設機運が高まっていた。榛東村は、中選挙区時代に与謝野の親分・中曽根康弘元首相の選挙区でもあった。
開発予定地のインサイド情報を聞きつけ、土地を先行取得する――。典型的な土地転がしの手口だが、まさか与謝野大臣のような人物も蓄財術に走ったのか。
しかし、計画は頓挫する。
「大きな望遠鏡をつくっても、湿潤な気候の日本では観測に適さない。そのため、大型天文施設の建設地はハワイなど国外に移っていった」(天文施設関係者)として榛東村に巨大望遠鏡が建つことはなかった。問題の土地について、与謝野事務所はこう説明した。
「与謝野は東京生まれで田舎暮らしに憧れがある。将来、隠居したら農園をつくり、天体望遠鏡を持って夜空を眺めよう。そんな老後の夢のための土地ですよ。ご指摘の新宿区議から『新鮮な空気を吸えば長生きできるよ』と乗せられて購入したのです」
当時、与謝野大臣は42歳。政界復帰を果たしたばかりの男が、「隠居後の夢」を考えて田舎に土地を購入するかなあ……。