検察はなぜ小沢有罪に狂奔するのか (日刊ゲンダイ2011/2/10)

健闘する新聞社系週刊誌2誌

陸山会事件の報道で「週刊朝日」と「サンデー毎日」が注目を集めている。それぞれ民主党の小沢元代表に裏金
を渡したとされる水谷建設の関係者と接触。小沢の犯罪の有無を独自に検証する記事を掲載している。それらを読むと、検察捜査と刑事裁判のデタラメに慄然とさせられるのだ。
陸山会事件の核心は水谷建設の裏金疑惑にある。小沢の元秘書3人の初公判で、検察側は、「大久保元秘書が水谷建設の川村尚・元社長に胆沢ダム工事受注の謝礼1億円を要求し、大久保と元秘書の石川議員が5000万円ずつ受け取った」などと主張した。この違法献金を隠すために、政治資金収支報告書の土地取引に関連する記載を2カ月間ずらしたというわけだ。

なぜ2カ月ずらすだけでカネを隠せるのか理解不能だが、検察の筋書きではそうなっている。ま、百歩譲って隠せたとしても、ヤミ献金そのものがウソだとしたら、修正すれば済む話。現職の議員を捕まえるほどの悪質性はない。ポイントは水谷献金の有無なのだ。

そこで「サンデー毎日」は、水谷建設元会長・水谷功氏の側近に取材。川村元社長が本当に石川議員に現金を渡したのかどうかについて、「実はまったく分からないのです」という証言を引き出している。この側近は驚くことに、「元社長には以前から交際している女性がいます。女性のために会社から2000万円を借りるほど入れ揚げているのです。5000万円はその女性のために使ったのではないでしょうか」とも言っている。これが本当なら、裏金疑惑は捏造以外の何ものでもない。

当の女性は、「元社長との間で金銭の貸し借りは一切ありません」と否定したが、同誌はこれまでの検察情報タレ流しの大新聞報道とは一線を画し、別次元の大きな疑問を投げかけたのだ。
一方の「週刊朝日」は、検察に裏金を供述したとされる水谷元会長を直撃。「ちゃんと届いたか届かんかったか、わからんやないか。落としたかもわからんしな」という驚きの発言を引き出している。本紙が直撃したときも、「分からない。知らないよ」とノラリクラリだったが、こんな人物の話に乗っかり、政界の実力者を追い詰める検察は尋常じゃない。
同誌は、1億円のヤミ献金が事実なら大疑獄事件だし、途中で誰かが着服したのなら横領事件だと指摘。そのいずれも立件しなかったのは〈検察側に触れられたくない不都合な事情があるからではないか〉とし、「小沢側に渡っていないことがハッキリしてしまったのでしょう。現金が小沢側に渡っていれば、とっくにヤミ献金事件として立件していますよ」という司法関係者の見方を紹介している。捜査に行き詰まりニッチもサッチも行かなくなった検察が、陸山会事件をデッチ上げたというわけだ。

◆戦前戦中の特高検察と全く同じ犯罪デッチ上げ、なぶり殺し

こうした記事を読むと、改めて、検察への疑問や不信感が高まる。週刊朝日では、ウソの呼び出しをした検察に10時間も事実上監禁された石川議員の秘書が、脅しやすかしで供述を迫る検察聴取の実態も告発している。やり口は戦前戦中の特高検察と同じ。絶対的な権力を背景に強引に犯罪をデッチ上げようとし、国民をなぶり殺しに追い込んでいくのだ。

先月、「大逆事件 百年後の意味」と題した集会で、ジャーナリストの鎌田慧氏は、明治天皇暗殺を企てたとして幸徳秋水らを取り調べた平沼騏一郎らの検察捜査を「罪のない人を陥れ誘導する取り調べ」とし、「今も同じようなことをしている」と訴えた。戦争という痛ましい過去を経験し、法治国家に生まれ変わったというのは幻想に過ぎない。日本は今も検察ファッショが横行する無法国家と考えていた方がいいのだ。

大新聞やテレビを筆頭に、検察にくみして小沢を極悪人に仕立て上げた旧体制の勢力には恐怖すら覚えてしまう。

社説で「まずは離党してけじめを」(1日付)と小沢を批判した毎日新聞と、小沢の政治資金に対する姿勢が「国民感覚との大きな遊離」(8日付)と指摘した朝日新聞は、雑誌編集部からジャーナリズムのあり方を学ぶべきだ。



※日刊ゲンダイはケータイで月315円で読める。
この貴重な媒体を応援しよう!
http://gendai.net/