●アラブ盟主の変革 波及必至
(東京新聞 2011年2月12日 夕刊) http://p.tl/ZjSU

 【カイロ=清水俊郎】エジプトのムバラク大統領(82)を辞任に追い込んだのは、一月のチュニジア政変に触発された反政府デモだが、アラブの盟主エジプトの影響力はチュニジアとは比較できないほど大きい。両国同様に強権的な指導者の下で民衆が不満を抱えた中東諸国への波及は必至で、既に各国でデモが相次いでいる。
 「エジプトが変わればアラブが変わる」。革命の喜びに沸くカイロ中心部タハリール広場で十一日夕、Tシャツ姿の中年男性が自作の合成写真を道行く人たちに披露して笑いを誘った。架空のサッカーチームの集合写真で、ムバラク大統領と十人の「古い指導者の仲間たち」の写真だ。

 ロイター通信によると、アラビア半島のイエメン南部アデンでは十一日、旧南イエメン地区の独立を求め、約三千人がデモ行進。

 イエメンのサレハ大統領(68)の退陣を求めるデモは“チームメンバー”のチュニジアのベンアリ前大統領(74)が、亡命に追い込まれた三日後の一月十七日。二十年以上政権を握るサレハ大統領が、国民から公然と「出て行け」とののしられたのは初めてだった。

 アルジェリアでもチュニジア政変後、非合法デモが多発。AFP通信によると、首都アルジェで十一日夜、エジプトの政変を祝いながら自国のブーテフリカ大統領(73)の退陣を求めるデモが起こり、六人が逮捕された。

 ヨルダンでは今月一日、リファイ内閣が総辞職。アブドラ国王(49)が国民の不満をかわすために首相を更迭したが、国王への怒りも表面化しつつある。

 経済復興や治安改善が進まないイラクでは、マリキ首相(60)が五日、二期目の任期満了を迎える二〇一四年に退任するとの意向を明言。反政府運動が盛り上がる前に“先手”を打った格好だ。

 経済的に豊かな産油国も安泰ではない。ペルシャ湾のバーレーンは国民の七割がイスラム教シーア派だが、ハリファ王家を中心とする指導層はスンニ派。宗派の違いに根差した反政府感情はくすぶり続けている。

 原油埋蔵量が世界一のサウジアラビアでは大規模デモは伝えられていないが、一月下旬、南部の貧しい地域で六十代男性が焼身自殺した。チュニジア政変のきっかけも若者の焼身自殺とされ、模倣した可能性がある。
 「中東はカイロを震源とする大地震に襲われた」と語るのは、パレスチナの政治評論家ハリル・シャヒム氏。「つい最近まで、だれがエジプトがこうなると予想できたか…。どの国の政権が倒れても私はもう驚かない」



●社会安定で引き締めへ=「国民勝利」を警戒-エジプト情勢で中国
(時事通信2011/02/12-11:20)http://p.tl/e9-o
 【北京時事】中国国営中央テレビなどは12日、エジプトのムバラク大統領の辞任発表を速報するなど極めて強い関心を示している。中国は「同じようなことがわが国に波及することはない」(政府関係者)と分析しているが、当面は社会安定の維持に目を光らせるとみられる。
 12日付の北京紙・新京報は、大統領辞任に歓声を上げるエジプト国民の写真も掲載、反政府デモで民衆が政権打倒を勝ち取ったことを印象付けた。中国でも物価上昇などに対する庶民の不満は強く、共産党一党独裁への批判が起こる懸念は消えない。
 このため当局は、インターネット上での情報のやりとりを厳しく監視するなど警戒を強化。10日には孟建柱公安相が当局者を集めた会議で、「国境地域の社会安定維持の金城鉄壁を築かねばならない」と指示している。



●中国 ネット上での情報を制限
(NHKニュース 2011年2月12日 14時28分)  http://p.tl/hf3X
エジプトのムバラク大統領の辞任を受けて、中国政府は、事態が早期に安定に向かうよう希望する一方、中国国内に影響が広がらないよう、インターネット上でエジプト情勢を巡る情報を制限するなど、神経をとがらせています。
ムバラク大統領の辞任について、中国外務省の馬朝旭報道官は談話を発表し、「中国は一貫して事態の推移を注視してきた」としたうえで「情勢の進展がエジプトの安定と秩序の早期回復につながるよう希望する」と述べました。一方、中国国内向けのインターネットの交流サイトでは、エジプト情勢が緊迫して以来、「エジプト」や「デモ」などの言葉を入力して検索すると、「法律によって表示できない」という文字が出てくるなど、情報が制限されており、その状態は今も続いています。中国政府は、エジプトの反政府デモの背景に、物価の高騰や若者の就職難など、中国も同様に抱える社会問題があったと伝えられていることから、インターネットを通じて中国国内に影響が広がらないよう、神経をとがらせています。こうしたなか、インターネット上に短い文章を投稿する「ツイッター」では、中国政府による規制をかいくぐって、中国からの書き込みが相次いでおり、「勇敢なエジプトの人たちに敬意を表す」とか「私たちにも早くこのような日が来ることを待ち望んでいる」など、エジプトの反政府デモに共感する意見が少なくないことをうかがわせています。



●周辺諸国 デモの拡大を警戒
(NHKニュース 2011年2月12日 14時28分 )http://p.tl/JPrw
エジプトで市民の大規模なデモによってムバラク大統領が辞任に追い込まれたことで、アルジェリアや、バーレーン、イランなど、周辺諸国でも、市民のデモが拡大することに警戒を強めています。
このうち、市民の抗議行動が続いている北アフリカのアルジェリアでは、12日も首都アルジェで反政府デモが計画されていて、政府は、エジプトでの政変の直後だけに、通常の何倍もの治安部隊を市内に展開させて、厳重な警戒態勢をしいています。また、中東の産油国、バーレーンでも、野党勢力などが今月14日にデモを呼びかけています。これに対して、バーレーン政府は、11日、国内のすべての世帯に日本円で22万円余りの現金を支給すると発表し、デモの広がりを抑えるための懐柔策とみられています。また、イランでも、同じく14日に、エジプトのデモに呼応して、人権団体などがインターネットを通じて、言論の自由を求めるデモを呼びかけています。この人権団体によりますと、デモの計画に関わっている活動家やジャーナリストが相次いで治安当局に拘束されているということです。中東では、このほかにもイエメンやヨルダンなどで反政府デモが続いていて、この地域の大国エジプトで大統領が退陣に追い込まれた影響が広がっていくことに、各国政府は神経をとがらせています。



●アラブ諸国指導者、変革の波を警戒
( 読売新聞2011年2月12日14時13分)http://p.tl/bXpD
【エルサレム=加藤賢治】エジプトのムバラク大統領辞任を受け、アラブ諸国は体制変革の波が自国に及ぶ事態への警戒を強めている。
 ロイター通信は11日、イエメンのサレハ大統領が同日夜、軍幹部らを緊急招集し、兵士や公務員の給与引き上げを協議すると伝えた。
 同国では、今年1月のチュニジア政変以降、反政府デモが相次いでおり、政権の支持基盤である軍への待遇改善を図り、政情不安を抑え込む狙いとみられる。
 湾岸の王制バーレーンは11日、各世帯に1000バーレーン・ディナール(約22万円)を支給することを決めた。同国では少数派のイスラム教スンニ派が支配層で、多数派のシーア派住民の不満が根強い。支給の表向きの理由は、民主化への「国民行動憲章」の10周年記念だが、14日に民主化デモが予定されており、体制への不満を和らげようとの意図があるのは明らかだ。


●米 エジプト対応に批判の声も
(NHKニュース 2011年2月12日 12時52分) http://p.tl/VKuN
アメリカのオバマ政権は、エジプトの民主的な政権への移行に向けて全面的に支援する考えを表明しましたが、ムバラク大統領の辞任を巡る対応では、方針転換を繰り返したことに批判の声も上がっており、中東政策を巡って難しいかじ取りを迫られることになりそうです。
オバマ大統領は、11日、ムバラク大統領の辞任を受け、「世界の人々は歴史的な瞬間を目撃した」と歓迎する意向を示し、民主的な政権への移行に向けて、アメリカ政府として全面的に支援する考えを表明しました。しかし、アメリカ政府のムバラク政権に対する対応が方針の転換を繰り返したことに、国内メディアからは「戦略がない」などと、厳しい批判の声が上がっています。デモが始まった当初は、クリントン国務長官が「政権は安定している」と事態を楽観視する発言をしましたが、デモが急速に激しさを増すなか、数日後にはオバマ大統領がムバラク大統領に事実上の辞任を求めました。ところが、その後「政権の移行作業を急げば、混乱に乗じてイスラム過激派などが政権に就くおそれがある」として、再び方針を転換し、ムバラク大統領の去就は棚上げして、スレイマン副大統領を中心とした政権の移行を支持する考えを打ち出しました。アメリカはこれまでエジプトをアラブ諸国で最も重要な同盟国と位置づけてきましたが、政権への移行に向けて課題が山積するなかで、中東政策を巡って難しいかじ取りを迫られることになります。


●イスラエルとの平和条約尊重を=米
(時事通信2011/02/12-07:21) http://p.tl/uBJp
【ワシントン時事】ギブズ米大統領報道官は11日の記者会見で、エジプトの新政権がイスラエルとの平和条約を尊重するよう求めた。
 同報道官は「エジプトの次期政権が、イスラエル政府との間で調印した条約を承認することが重要だ」と述べた。


●イランは戦々恐々=米報道官
(時事通信2011/02/12-07:51)http://p.tl/FU3d
【ワシントン時事】ギブズ米大統領報道官は11日の記者会見で、イラン政府は、エジプトのムバラク大統領が反政府運動により辞任を余儀なくされたことに、戦々恐々としているとの見方を示した。
 報道官は「イラン政府は国民に対し、平和的な集会やデモを行う権利の行使を認めるべきだ。こうしたことはエジプトで可能だった」と指摘。米国はイラン国民も政府への要望を表明できるようになることを希望しているが、「イラン政府は国民の意志を恐れている」と述べた。


●「偉大な勝利」たたえる=イラン
(時事通信2011/02/12-05:58)http://p.tl/0KM8
 【エルサレム時事】イラン外務省報道官は11日、同国のアラビア語衛星テレビ局アルアラムで、ムバラク・エジプト大統領の辞任について、「偉大なエジプト人の意志によってもたらされた偉大な勝利である」と述べ、民衆デモの成果をたたえた。AFP通信が伝えた。ムバラク氏の辞任が発表された11日はくしくも、1979年のイラン革命から32周年に当たる。
 イランはエジプトとの国交を断絶したままだが、今回の民衆蜂起への支持を表明。最高指導者ハメネイ師は、エジプトにイスラム体制の樹立を呼び掛けていた。


●エジプト革命の始まり=ハマス
(時事通信2011/02/12-06:33) http://p.tl/WS8y
 【エルサレム時事】パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスのアブズフリ報道官は11日、AFP通信に「ムバラク大統領の辞任は、エジプト革命の始まりだ」と語った。その上で、ハマスが実効支配を固めた2007年以降、エジプトが続けるガザ封鎖を解除するよう求めた。
 ハマスは、エジプトで弾圧されてきた野党勢力の原理主義組織ムスリム同胞団を源流に持つ。エジプトの民主化進展で同胞団の勢力が拡大すれば、ハマスも勢いづくとみられている。


●スイス、ムバラク氏一族の資産凍結指示 5兆円報道も
(朝日新聞2011年2月12日13時9分) http://p.tl/6H5y

 【カイロ=前川浩之】エジプトのムバラク大統領が辞任したことを受け、ムバラク氏の巨額の金融資産が存在する可能性が取りざたされてきたスイスが11日、ムバラク氏と家族、ムバラク氏側近ら12人を対象に、スイス国内の銀行などにある資産を最大3年間凍結する政令を出した。「国有財産の横領を防ぐため」としている。

 カルミレイ大統領が11日付で政令を出した。ムバラク氏や次男ガマル氏ら一族7人のほか、国外逃亡が疑われているマグラビ前住宅相や、人権侵害の疑いで訴追準備が進むアドリ前内相ら政権幹部5人の計12人を名指しし、スイス国内のすべての金融機関に調査と、判明した銀行口座の預金や有価証券などのすべてを凍結するよう命じた。

 スイス政府は「額は確定していない」とした。英紙ガーディアンは2月初旬、中東専門家の話として、ムバラク一族が持つスイスの口座や英ロンドンの不動産などの資産の合計は最大約700億ドル(約5兆8千億円)と推定されると報じている。

 スイスの銀行は、顧客情報を第三者に漏らすと刑事罰になる銀行法を悪用した途上国の独裁者らの資金の受け皿になってきた。イメージ改善を図るため、スイスは今年から新法を施行。凍結資産の持ち主の国家元首らが、国有財産横領で有罪とされた場合などには、その国の国民に還元できる仕組みを導入した。

 今回のムバラク氏の資産を巡っても、スイス政府は新法に基づいて今月初めに調査を開始。資金の出入りを監視し、辞任時の凍結に備えていた。先月には、民衆デモで倒されたチュニジアのベンアリ前大統領や、選挙結果を受け入れずに居座るコートジボワールのバグボ大統領の資産も同様に凍結している。



●エジプト:米、今後の展開注視 ムスリム同胞団台頭懸念も
(毎日新聞 2011年2月12日12時50分) http://p.tl/9fEi

 【ワシントン草野和彦】エジプトのムバラク大統領の辞任を受けて11日、声明を発表したオバマ米大統領は「政権移行への終わりではなく、始まりだ」と強調し、エジプト情勢の今後の展開を注視する姿勢を鮮明にした。

 政権移行に伴う混乱防止を最優先してきた米国は、ムバラク氏の辞任による事態の沈静化を期待しているが、待ち構える「困難な日々」(大統領)を見据えている。

 声明で、オバマ大統領は「国民にとって信頼性のある政権移行を保証しなければならない」と述べ、国民が納得する形での民政移管をエジプト国軍に求めた。具体的には非常事態令の解除や、「自由で公正な選挙」につながる憲法、法律の改正を改めて促した。

 しかし、「ムバラク後」の新政権の具体像は描けていないのが実情だ。大統領は声明で「米国はエジプトの友人、パートナーであり続ける」と約束したが、米議会内には穏健派イスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」台頭への懸念もある。

 また、米国が特に不安視するのは、エジプトと米国の同盟国イスラエルとの今後の関係だ。ギブス大統領報道官は11日の記者会見で「次のエジプト政府はイスラエルとの協定を認識することが重要」と述べ、両国間の平和条約の順守を求めた。

 10日の演説でいったんは大統領職にとどまることを主張したムバラク氏について、オバマ大統領は「辞任で国民の変革への渇望に応えた」と述べただけで、過去の業績には一切触れなかった。



●「米は何も分かってない」 ムバラク大統領“グチ”
(東京新聞2011年2月12日 夕刊)http://p.tl/3Zir
 【カイロ=清水俊郎】十一日に辞任に追い込まれたエジプトのムバラク大統領(82)は前日夜、イスラエルのベンエリエザー前通産相に電話をかけ、自分に即時辞任の圧力をかけた米国について「何も分かっちゃいない」と愚痴をこぼしていたことが分かった。前通産相が、イスラエルのテレビに対し語った。
 ロイター通信によると、二十分ほどの通話で大統領は「私たちは米国がイランや(パレスチナ自治区)ガザに米国流の民主主義を広めようとして失敗したのを見てきた」と発言。自らの失脚後は「雪玉が転がり落ちる勢いで、過激主義とイスラム教急進派がアラブ諸国に広がるだろう」と言い切ったという。
 ベンエリエザー前通産相は「大統領は自分の時代が終わることを分かっているようだった」とコメント。エジプト騒乱が始まった一月下旬には「ムバラク政権は倒れない。軍がしっかり支えている」との見解を示していた。