ムバラク一族 どうやって5.8兆円も隠し資産を築いたんだ (日刊ゲンダイ2011/2/14)

1割以上は日本マネー?

◆スエズ運河通行料の半分がファミリー企業に流れる錬金術

民主化を求める大規模デモに屈し、約30年間の独裁政治にピリオドを打ったエジプトのムバラク前大統領(82)。独裁政権下でため込んだ隠し資産はナント、約700億ドル(約5・8兆円)というから、ぶったまげた。米マイクロソフト創業者、ビル・ゲイツの総資産額(約530億ドル=約4・4兆円)をも上回る。つまり世界一の“富豪”なのだ。国民の4割は1日2ドル以下の生活を強いられているというから、民衆の不満爆発も当然である。
「ムバラクはスイスや英国の銀行に大口の秘密口座を持つほか、ロンドンやニューヨーク、パリに高級不動産、さらに金塊数トンを保有していました。一族にも資産を振り分け、息子のガマル1人だけで170億ドル(約1・4兆円)の資産を持っています。ムバラクがデモ拡大後も大統領の座にしがみついたのも、保有資産を隠す時間稼ぎ。チュニジアのベンアリ前大統領が亡命後にスイス政府に隠し口座を凍結されたのを教訓に、一族の間で緊急会議を持ち、追跡不能な海外口座に資産を移し替えたのです」(中東情勢事情通)
ちなみにエジプトのGDPは世界41位で日本の30分の1。日本人の感覚でいえば、170兆円もムバラクにかすめ取られたということだ。

どこに、そんな財源があったのか。エジプトの外貨獲得の大きな柱は、スエズ運河の通行料収入だ。通行料金は1回につき約25万ドル(約2100万円)で年間収入は約50億ドル(約4175億円)を超える。日本企業も原油輸送などのため、うち1割程度の通行料を負担してきた。
しかし長年、通行料がどこにどう流れたのかはエジプト国民には一切知らされず、やぶの中。海外メディアは、ブラックボックスと化した通行料の50%以上がファミリー企業を通じてムバラク一族に流れたと伝えている。

なるほど、年間25億ドルが30年間にわたって流れたとすれば、700億ドルの隠し資産とピッタシ計算は合う。
「日本政府が中東の外交拠点としてエジプトに拠出したODA予算もムバラクのフトコロを潤しました。外務省は約135億円の無償資金援助で、スエズ運河に『日本・エジプト友好橋』という全長4キロと世界最大級の斜張橋を01年10月に完成させたほか、この数年も『太陽光発電所建設』や『ピラミッド修復』などの名目で約205億円の無償援助に協力しています。こうした予算もムバラク政権の水増し請求などで、一家の裏金に消えた可能性が高いのです」(外交関係者)

強欲な独裁者にとって、お人よしの日本人など格好の餌食だった。



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