ひろがる菅政権危機説、問われる民主主義の成熟度(1)

塩田潮
(東洋経済 2011/02/14 16:50) http://p.tl/N1E7

 10日の菅首相と小沢元代表の会談は、予想どおり小沢氏が菅首相の離党要求を蹴り、物別れに終わった。小沢氏は離党不要論で突っ走る腹のようだが、内心、菅内閣は数カ月の命と踏んでいるのではないか。

 鳩山前首相も1月28日に森元首相、亀井国民新党代表との会談で「菅政権短命」という見方で一致したという。反菅派の希望的観測とも映るが、政権危機説は政界に広がり始めている。客観的に見て事態は相当厳しいからだ。

 そびえる壁は2011年度予算の関連法案である。

 衆議院の優越がある予算案本体はともかく、ねじれ下で一般法案の関連法案は見通しが立たない。年度内不成立でもただちに大混乱を招くわけではないが、4月以降も審議が長期化すると、国民生活に悪影響が出る。

 菅首相は「熟議」と「秋波」のからめ手作戦だが、野党側は乗ってこない。参議院での過半数獲得には公明党、衆議院での再可決に必要な3分の2の確保にはぎりぎり社民党の賛成があれば壁は越えられるが、公明党は徹底野党を宣言した。それは統一地方選向けだから、4月下旬以降は方針転換の可能性ありと期待をつなぐ声は民主党内に根強いが、簡単な話ではない。

 社民党とは沖縄や法人税率の問題で足並みが揃わない可能性が高い。

 ということで、八方塞がり脱出のメドは立たない。結局、菅首相は「破れかぶれ解散」しか手がなくなるという見立てで、小沢氏は「解散は早い」と口にし始めた。菅陣営の前原外相も1月27日に「解散・総選挙に向けて態勢の整備を」と仲間に呼びかけている。

 強い政権執着欲の菅首相が政権放棄や玉砕覚悟の解散を選択するとは思えないが、ダッチロール、レームダックの果ての政権立ち枯れ、野垂れ死にはあるかもしれない。だが、自公両党も民主党の反菅派も攻撃の決定打が見当たらない。

 結局、立ち枯れ政権がだらだらと長く続くという最悪の展開もあり得る。「ならば救国大連立を」という声が噴出しそうだが、民主主義の死を招かないために、与野党とも真剣に議会制と政党政治の再生の道を模索する必要がある。

 日本の民主主義の成熟度が試される瞬間が刻々と近づいている。