●無実の死刑囚130人の衝撃 1/3




日本の裁判員制度は「多数決」で死刑判決になるそうですが、米国の陪審員制度では、全­員一致の評決でないと死刑判決が出せません。それにもかかわらず、米国では死刑が求刑­された冤罪事件の発覚が相次いでいます。捜査機関と司法が国民性悪説に立脚する日本で­は、不公正な捜査と判決が横行しています。捜査機関が被告に有利な証拠も隠さずに提出­させる義務を負わせるべきです。さらに、捜査機関の証拠隠ぺいや紛失は犯罪として厳重­に処罰すべきです。とさもないと、市民が参加しても正しい判断が出来ず、取り返しの付­かない誤審判を下す可能性があるのです。必見の良番組です


●無実の死刑囚130人の衝撃 2/3





●無実の死刑囚130人の衝撃 3/3






●米ノースウエスタン大ロースクール教授 スティーブン・ドリズィン氏に聞く
(東京新聞・核心:08/12/18)

『虚偽自白』に監視の目を 取り調べ可視化が有効

 自分がやっていない犯罪を取り調べ段階で自供してしまう「虚偽自白」。その研究で知られる米ノースウエスタン大学ロースクール教授、スティーブン・ドリズィン氏(47)は「虐待や脅しがなくても、無実の人が短時間で偽りの自白をする可能性がある」と警鐘を鳴らす。来春からの裁判員裁判を前に、自白証拠に頼った米国の誤判の教訓をどう生かすべきか。(聞き手=社会部・佐藤直子)

■6割が25歳以下
 -完全無実が証明された125件の冤罪(えんざい)事件の分析から浮かんだことは。
 「やってもいない犯罪を短時間で自白した人の6割は25歳以下。少年や権威に従いやすい発達障害のある人は特に虚偽自白に陥りやすい。虚偽自白に至る取り調べ時間の平均は16時間。6~24時間に集中し、時間が長いほど虚偽自白を生み出すリスクは大きくなる。研究は虚偽自白が無実の人を逮捕、訴追、有罪判決、投獄へ、どう導くかという問題に焦点を当てたが、125件の約8割が(量刑の重い)殺人罪であり、予想以上に深刻だった」
 -米国で殺人は死刑か仮釈放のない終身刑にもなる重大犯罪。なぜ認めてしまうのか。
 「取調官は心理的テクニックで追い詰め、捜査機関が描く仮説に同意してもらおうとする。不利な証拠がある、と言って絶望させる。容疑者は自白すれば寛大に扱われると期待し、早く犯行を認めて取り調べを終わらせ、後の公正な裁判に期待しようとする」

■37件中30件有罪
 -でも、裁判では、陪審員が虚偽自白を決定的証拠として有罪認定してしまう。
 「125件のうち陪審公判に移行した37件で被告人が無実を主張したが、陪審員は30件を全員一致で有罪認定した。自白が今も最も影響力のある証拠であると意味する。無罪を示すほかの証拠は置き去りになりがちだ」
 -日本では最近、公職選挙法違反に問われた志布志事件や連続女性暴行事件で服役後に真犯人が現れた富山氷見事件などが冤罪のケースとして注目された。裁判員として裁判に参加する日本の市民は誤判や冤罪を恐れている。
 「虚偽自白による誤判を防ぐには取り調べのビデオ録画が有効。それも一部ではなく全面的に。普通の市民は取調室で起きていることを知らない。録画なしに自白の信用性を判断するのは極めて困難。目的は事実認定の信頼性と正確性の追求だ」
 -録画により真実の自白が得られないという反対論もある。
 「米国でも昔は警察が猛反対したが、ある捜査官は今『一番よい改革だった』と話す。録画があれば、取り調べ中の違法行為をめぐる警察と被告との水掛け論も解決する。簡単に虚偽自白を突き止められるから自白の真偽を証明するための時間の無駄も減る、と」

■DNA鑑定こそ
 -再審開始決定が取り消された名張毒ぶどう酒事件で最高裁に法廷意見書を提出した。なぜか。
 「名古屋高裁の『重大事件で自発的に虚偽の自白をするはずがない』との誤った見方を正したかった。死刑判決が出た毒ぶどう酒事件のほぼ唯一の証拠は自白しかない。再審段階で弁護団が提出した新証拠は有罪認定の疑わしさを科学的に証明しているのに、有罪のままであるのは問題。死刑は自白証拠のみで行われるべきでない」
 -自白事件ではDNA鑑定をすべきと。
 「DNA鑑定は有罪判決からの救済を求める多くの冤罪事例で無実を立証した。日本でも鑑定資料があるすべての自白事件で可能な限り、速やかに行われるべきで、有罪確定後も鑑定を受けられるようにすべき。誤判を防ぐため、一刻も早く弁護側にDNA鑑定の権利を認めてほしい」

(メモ)
 スティーブン・ドリズィン氏
 米ノースウエスタン大ロースクール内の無実の死刑囚救済に取り組む「誤判救済センター」の法務責任者。DNA鑑定などを駆使、イリノイ州の死刑囚9人を釈放に導いたほか、バラク・オバマ次期大統領らと連携、同州で取り調べの全面可視化を法制化、死刑執行の停止を実現させた。

 125の虚偽自白に関する研究分析
 2004年、ドリズィン教授らが「DNA時代の虚偽自白の問題」と題して公表した虚偽自白に関する最大規模の研究。1971-02年、有罪判決を受けた被告の犯行が物理的に不可能と、捜査当局が発見したり、真犯人が現れたケースなど125件の自白例を分析。少年グループが疑われた強姦(ごうかん)殺人事件「セントラルパーク・ジョガー事件」などを分析した。

 名張毒ぶどう酒事件
 1961年、三重県名張市内の公民館で開かれた懇親会で、ぶどう酒を飲んだ女性5人が死亡。現場に残ったぶどう酒などから有毒な有機リン化合物を検出。公民館にぶどう酒を運び、妻と愛人の双方を亡くした奥西勝死刑囚が取り調べで殺害を自供、殺人罪で起訴された。一審は無罪だったが、名古屋高裁が一審破棄し死刑判決。72年に確定した。獄中から無実を訴え、2005年に名古屋高裁が弁護団提出の科学的な新証拠に基づいて再審決定したが、検察官の異議申し立てを受けて決定破棄された。

http://www.geocities.jp/ishidanz/08_12_26.htm