住宅ローンは電話一本で安くなるこんな裏技があったのか 800万円下がった人も!

賢者の知恵 週刊現代

(現代ビジネス 2011年02月16日)

各金融機関は、住宅ローンを軽減する方法として、「借り換え」を推奨しているが・・・
昨今の不況下、月々の住宅ローンを払えずに家を手放す人が急増している。「不動産競売流通協会」の全国調査によると、'09年度に裁判所の競売にかけられた一戸建て住宅とマンションは約6万戸。'08年度の約1・3倍に上ったという。


■銀行は教えたくない

 家計に重くのしかかる住宅ローン。「返済が少しでも安くなるなら、どれだけ助かるか」と頭を抱える方も多いのではないか。


 ローン負担を軽減する方法として広く知られているのが、「ローンの借り換え」だろう。他の金融機関が提供する、より金利の低いローンに借り換える方法だ。

 しかし、「借り換え」は新たにローンを組むことを意味するので、ローン保証料などの諸費用が数十万円必要となる。月々の返済さえ苦しいのに、いきなり数十万円を用意するのは困難だと嘆く声も多い。さらに、抵当権の設定などに煩雑な手続きを要し、面倒なのもありがたくない。

 ところが驚くべきことに、複雑な手続きもおカネもいらないミラクルな「住宅ローン見直し術」があるのだ。一般には知られていないが、違法ではなく安全で簡単。埼玉県の会社員Nさんは、そのミラクル術で負担減に成功した一人である。まずはその体験談を聞いていただきたい。

「3000万円の住宅を10年前に35年ローンで購入しました。当時は年齢とともに給料が上がるのが当然と考え、『最初は金利を低めに、10年後から金利が上がる』というローンを組んでいた。ところが不況のせいで10年たっても一向に給料が上がらない。一方金利は上がって月々の支払い額は当初より1万5000円も増えてしまった」

これでは生活が苦しくなる一方。Nさんは借り入れ先の銀行のローン担当者に電話をかけ相談した。

「『このままではローンを払えません。他行の金利の方が低いので、借り換えも考えています』と伝えたところ、担当者に『わかりました。銀行に来てください』と言われた。銀行に行くと相談室のようなところに通され、担当者が『本当は例外なんですが、金利を引き下げましょう』と、金利を約1%も引き下げてくれたんです。結果、月々の支払いは1万円近く安くなり、総額で約300万円の負担減になりました」

 Nさんはいわば、電話一本で住宅ローン支払いの引き下げに成功したのである。いったいなぜこんなことが可能なのか。

「これは『金利交渉』や『金利低減』と言われるもので、従来なら考えられなかった、"契約時に結んだ金利の見直し"を願い出る手法です」

 こう語るのは、ファイナンシャルプランナーの藤川太氏だ。

「金融機関は積極的にPRしていませんが、住宅ローンを組んだ際の金利が現在の店頭金利や優遇金利よりも高い場合、銀行と交渉すればその金利を下げてもらえる可能性があるのです」(藤川氏)

 たとえば、いまあなたの住宅ローンの金利が3%だったとしよう。契約時には「それぐらいの金利が普通」と思っていたかもしれないが、日銀のゼロ金利政策の影響で、現在ほとんどの金融機関の「優遇金利」(ローンの基礎となる「店頭金利」からさらに数%引いたもので、いまから新規にローンを契約する際はこれが適用されることが多い)は3%以下となっている。これまでは「金利が高いから下げてくれ」と銀行に言っても「契約時にその金利で納得したのはあなたですよ」と門前払いを食らっていただろう。ところが最近、この「金利交渉」に応じる金融機関が増えてきたのだという。

 その事情について、前出・藤川氏が説明する。

「背景には金融機関の間で『借り換え』の競争が激しくなったことがあります。ここ数年、各金融機関が低めの金利を設定して、いまの銀行からの『借り換え』をするよう促しています。ところが、各銀行がローンの借り換えを呼びかけ顧客の奪い合いを始めると、顧客が離れるおそれがある。そこで金融機関は『自分の顧客がよそに奪われるくらいなら、契約時の金利を引き下げてでも、留まってもらった方がいい』と考え始め、金利の引き下げに応じるようになったのです」

 多少の損は被ってでも、いまの顧客を逃したくない。そこで生まれた苦肉の策が、顧客の「金利の低減」だったのである。


■手数料は5000円ほど


 では、どうすればこの「金利の低減」を受けられるのか。金利低減に成功した人々の声を聞き、それが難しいものではないことを感じ取ってほしい。

 京都府に住む団体職員Tさんの話。

「地元の銀行から約1500万円のローンを10年前に『返済期間30年』で借り、あと20年で1000万円を返す予定でした。しかし、いまなら契約時の金利を引き下げられる可能性があると知って、昨年8月に銀行に引き下げ願いを申し入れました。すると、2・675%だった金利が1・375%下がり、月々の返済額は7000円減、総額約100万円得することになりました」

 Tさんは「手間はほとんどかからなかった」と話す。

「銀行に『金利の引き下げをお願いしたい』と電話を入れた約2週間後、銀行から『金利はどのくらい下げたいのか』と問い合わせがあった。そこで『目一杯下げてほしい』とお願いし、後日届いた書類に必要事項を記入して、それを銀行に持っていっただけ。印紙代と手数料で約5000円ほどしかかかりませんでした」

 新潟県の自営業者Mさんは、「総額740万円もの減額に成功した」という。

「地元の銀行に住宅ローン金利の引き下げをお願いすると、それまで3・3%だった金利を1・1%も引き下げてもらうことができ、月額の返済が12万5000円から10万8000円に減少、返済総額は約740万円も減りました」

 Mさんの場合、商売上でも地元銀行とつながりのある超優良顧客であったため、銀行との交渉もスムーズに進んだという。

 700万円を超える減額が、家計にとってどれほどの救いになるか、ここで述べる必要もない。本誌は冒頭のNさんを含めた3人以外にも、金利低減に成功した人たちを取材したが、ほぼ全員が1%程度の金利引き下げを実現しており、ローンの総額は100万円から800万円弱ほど減ったと答えている。

 金利引き下げの成功者の話からも、交渉自体は難しいものでないことがおわかりいただけるだろう。1.借入金融機関のホームページなどで、その金融機関の現在の店頭金利・優遇金利を調べる2.借入金融機関のローン担当者に「支払いが苦しい。住宅ローンの金利を引き下げてほしい」とはっきりと申し出る(このとき、当該金融機関の優遇金利と自分の現在の金利にどれぐらいの差があるかはっきり伝えること、ほかの金融機関への「借り換え」も考えていると伝えることが重要だ)3.担当者と「金利をどこまで下げるか、どこまで下げられるか」相談する4.粘り強く交渉し、結果を待つ5.関係書類に必要事項を記入する。

聞くと拍子抜けしてしまうかもしれないが、基本はこれだけなのである。これで住宅ローンが軽減されるなら、相談しない手はないだろう。


■早くやった方がいい


 ただし、「誰もが金利の引き下げに成功するというわけではなく、出来ない場合もあることに留意してほしい」と言うのは生活設計塾クルー取締役で、ファイナンシャルプランナーの深田晶恵氏。

「金利低減とは当初交わした約束を変えるということであり、非常に特殊な手段です。これまでの返済に滞りがないかどうか、すなわち銀行にとって優良顧客かどうかによって交渉の可否も異なるので、注意が必要です。また、確かにこの方法はローン借り換えのように諸費用もかかりませんし、手続きも楽です。しかし、場合によっては借り換えを行う方がお得なこともあります」

 金利引き下げ交渉は、これまでの返済実績や銀行との関係によって引き下げ幅やその可否が変わる。いくら得するかはケースバイケースなので、「住宅ローンを安くするひとつの手段」と考えて、他の選択肢も考慮し比較検討をした方がよい、と深田氏は言う。また、前出の藤川氏は「金利引き下げ交渉は、早めに行った方がいい」と助言する。

「金利引き下げの総数は全国で徐々に増えていると聞いています。いままではほとんど知られていなかった交渉術が公になって、みんなが相談に駆け込むと、金融機関の収益悪化につながり、今後は相談に応じなくなる可能性がある」

 事実、京都銀行の広報担当者は本誌の取材に「(金利交渉の)相談は月に約50件。100件に達した月もありました」と答え、金利交渉の相談件数が毎月一定数あることを示した。これがもっと知られるようになれば、その数はさらに増え、銀行の経営を圧迫し、銀行側も何らかの対策を講ずることになるだろう。

 ただ、金融庁の担当部署は「各金融機関によって交渉に応じるかどうか、積極性には差があるようです」と認めた上で、「もし支店レベルで応じてくれない場合は本店に相談し、それでも解決しない場合、金融庁の『金融サービス利用者相談室』に相談いただければ、場合によっては当該銀行を指導することもあります」と答えた。いまなら銀行側も交渉の要求に応じざるを得ない状況にあるようだ。

 うまい話にはウラがあるものだが、今回紹介した交渉術は、金融機関が応じさえすれば純粋にトクをするもの。住宅ローンにお悩みの方は、一度借入先の銀行に相談してみるべきだろう。早い者勝ち、かもしれないのだから。