菅は何が目的で首相にしがみつくのか (日刊ゲンダイ2011/2/17)

菅政権は即刻退陣

「総理には、解散も総辞職もさせない。私がさせない」――。

だれのセリフかというと、民主党の安住淳国対委員長である。12日に地元の講演会でしゃべったのだが、すごいセリフだ。

言うまでもないが、解散権は、首相の最終兵器である。いつ抜くか分からない“伝家の宝刀”があるからこそ、首相は畏怖され、求心力を維持できるわけだ。

それなのに、“国対委員長ごとき”が「解散はさせない」と言う。安住もエラくなったものだし、スッカラ菅首相もなめられたものだ。
家臣に宝刀を封じられ、恥ずかしくないのか。ここまでコケにされ、なぜ、首相の座にしがみつくのか。本当に疑問だ。
それでなくても、菅を取り巻く状況を見ていると、毎日、生き恥をさらしているようなものではないか。内閣支持率はとうとう10%台にまで落ち込み、そのわずかな支持層も、半数が「ほかに適当な人がいないから」という消極的な支持でしかない。小沢元代表への処分で党内議員の半数を敵に回し、残り半分も「菅さんでいいと思っている人は誰もいませんよ」(中堅衆院議員)というのである。

◆小沢を取り巻く動きが急加速

そんな中、民主党内は風雲急を告げている。ズバリ、分裂前夜の様相だ。こういうタイミングで安住発言が出たことは興味深い。つまり、菅退陣→総選挙のうねりが広がっていて、安住は安住で「火消し」に躍起になるしかないのである。

民主党の国会議員はこう言った。
「名古屋市長選で河村たかしさんが圧勝し、今月8日、小沢元代表と大村秀章・愛知県知事を交えて会談した。地域政党、減税日本を立ち上げた河村さんは3月の名古屋市議選や三重県知事選、愛知6区の衆院補選に候補者を立てる。そのちょっと前には、原口一博前総務相が全国の改革派首長らと連携し、日本維新の会を設立して、自ら代表に就く構想を明らかにした。河村さんは小沢氏を師と仰ぐ。原口さんも小沢シンパです。小沢氏を取り巻く、この動きは何なのか。
減税日本や維新の会が核になり、小沢さんの一派が飛び出すのではないか。そんな疑心暗鬼が広がっているのです」

民主党内では小沢系の議員が集団で会派を離脱する動きも表面化している。2009年の衆院選で当選した比例議員十数人だ。会派離脱→離党と進めば民主党は分裂する。
93年、小沢が仕掛けて、自民党を分裂させた時も、細川新党という首長政党が起爆剤になった。当時とソックリの状況になってきたのだが、こうした動きは必然だ。誰がどう見ても、スッカラ菅政権の限界は歴然だからだ。

◆窓口のない脳死政権に野党は呆れ、霞が関もサジを投げた

すでに脳死のような菅政権だが、トドメとなるのが予算関連法案だ。
公明にソッポを向かれ、社民とも一向に折り合いがつかない菅政権は、子ども手当法案などの予算関連法案を成立させるメドが全く立っていない。なんとか社民を味方につけて衆院で再可決できる3分の2を確保したところで、党内の半数を占める小沢グループを敵に回した菅は、党内から“造反”が出れば、吹っ飛んでしまう。
菅周辺は野党が賛成してくれる項目のみを取り上げて成立させる「法案分割案」でしのごうと画策しているが、自公は「法案を出し直せ」と突っぱねている。まさに八方塞がりなのだが、それでも菅政権は呆けたように何の手も打とうとしていない。

「政権内に野党対策や法案修正のリーダーシップを取れる政治家が誰もいないのです。窓口がない政権なので、野党も呆れ、霞が関はサジを投げている。誰も何もしないまま、どんどん、時間だけが過ぎていく。まさに脳死政権ですよ」(民主党関係者)
こんな連中が内政だけでなく、外交も担っているのだから、ゾッとしてくる。

◆北方領土返還は永遠に不可能

菅の「暴挙」発言で、完全に態度を硬化させたロシアは「第2次大戦の結果を認めよ」なんて言い出している。おそらく、今度はプーチン首相が北方領土を視察に来る。そうなれば、北方領土返還なんて、永遠に無理だ。それなのに、石頭の前原外相が菅と二人三脚で、ロシアを刺激し続けている。見ちゃいられないとは、このことだ。

元外交官で評論家の天木直人氏が言う。
「菅政権の外交センスのなさには呆れるばかりです。問題はロシアだけではない。対中、対米外交も完全に失敗です。昨年の尖閣問題がそうでしたが、この政権は言葉で相手国を刺激するのは達者だが、戦略がないものだから、面と向かうとシュンとしてしまい、言うべきことが言えなくなる。屈辱外交ですよ。そのため、中国には完全にナメられてしまいました。一方、米国にはポチのように従属しているが、こちらもいいように利用されているだけです。そもそも米の頭にあるのは日本に米軍基地を置き続けることだけ。そのためには周辺国との緊張状態をつくっておいた方がいい。尖閣や北方領土でアメリカが全く動こうとしないのはそのためで、菅政権はまんまと“分断作戦”にやられているのです」

内政もダメ、外交もムチャクチャだから、どうにもならない。こんな能無し首相は一刻も早く、引きずり降ろすしかないのである。

◆政治空白で株価暴落、景気後退

経済評論家の広瀬嘉夫氏もこう言う。
「経済運営もひどいものです。本来ならば、政治は景気を牽引しなければならないのに逆に足を引っぱり、邪魔をしているのが菅政権です。最近は、米国の景気回復など海外要因で日本の株価も上がりつつあるが、最大のリスク要因が中東情勢と菅政権だからどうしようもありません。
菅首相の性格では、ズルズルと政権にしがみついた揚げ句、4月から6月に総辞職することになるでしょうが、その間、政治空白ができる。マーケットは政治危機には敏感ですから、株価は暴落でしょう。こうなると、せっかく上向きかけた景気も元の木阿弥です」

予算関連法案が通らず、子ども手当がご破算になったら、すでに2割を切っている支持率が1桁になってもおかしくない。もちろん、統一地方選は大惨敗。こうしたことは確実に起こることだから、統一地方選を前に民主党の候補者が一斉に逃げ出す異常事態も起きている。

菅首相よ、それでもあなたは辞めないのか。狂気の首相に判断力がないのであれば、せめて、周囲が鈴をつけるしかないが、それもやらないようであれば、本当に民主党は分裂、消滅することになる。