異例の検事総長訓示は「小沢と手打ち」のメッセージ (日刊ゲンダイ2011/2/18)

「供述調書至上主義を見直せ」

「陸山会」事件は改めて無罪の公算が大きくなってきた。笠間治雄検事総長(63)が16日の「検察長官会同」で、「供述調書至上主義」の見直しに言及した。全国の高検検事長や地検検事正らが集まる中で、検察トップとしては異例の訓示である。

「検察官自身が意図する供述調書ばかりを取ろうとするなら、相手方からの信頼を得られず、信頼関係の構築はできない。『供述調書を取れば一丁上がり』というような、供述調書至上主義といった考えがあるなら絶対に改めてほしい」
「供述調書至上主義」は、一連の検察不祥事の元凶だ。筋書きありきで捜査し、コイツと決めたら事件をデッチ上げてでも身柄を引っ張り、狭い部屋に押し込んでギュウギュウ締め上げる。どんな手を使っても、検察のシナリオ通りの供述調書を作ろうとするのは、裁判で「検面調書の特信性」が認められ、有罪に持ち込めるからだ。

そのため“特高警察”式の捜査がまかり通り、証拠改ざん事件や、陸山会事件のようなメチャクチャなことが起きるのである。
「『陸山会』事件の“前身”である『西松事件』が起きたのは09年初め。当時、最高検次長検事だった笠間総長は当初から、東京地検特捜部の強引な捜査に異論を唱えた。しかし、広島高検検事長に異動した途端、見計らったように特捜部は民主党の小沢元代表の公設第1秘書だった大久保隆規被告(49)を逮捕し、暴走を始めた。笠間総長が調書至上主義の見直しに踏み込んだのは、当時の忸(じく)怩(じ)たる思いがあるのです」(司法ジャーナリスト)

笠間総長はなぜこのタイミングで発言したのか。ある民主党議員はこうみる。
「『陸山会』事件を意識しているのでしょう。大久保被告の調書は証拠申請を撤回するハメになり、衆院議員の石川知裕被告(37)は“脅迫”再聴取が問題になっている。まさに2人とも『調書至上主義』で調書を作成され、その任意性や信用性が問われている。肝心の裁判も、起訴事実と関係のない裏金の立証というメチャク
チャな展開。笠間発言は『小沢サイドと手打ちする』というメッセージだと思います」

暴走検察の“A級戦犯”コンビ、佐久間達哉(大津地検検事正)、大鶴基成(最高検公判部長)らにぜひ、笠間発言の感想を聞きたいものである。




※日刊ゲンダイはケータイで月315円で読める。
この貴重な媒体を応援しよう!
http://gendai.net/