【第19回】弁護士にも最高裁にも否定された大新聞の誤報

[国民は騙されている 小沢「強制起訴」の虚構] (日刊ゲンダイ2011/2/18)

彼らは検察審を本当に取材したのか

昨年9月8日、全国紙が一斉に報じた東京第5検察審査会の「補助弁護士選任」。その1週間後の9月14日には2度目の「起訴相当」の議決が行われたのだから、つじつまが合わない。

「たった1週間の審議で小沢元代表の強制起訴は決められたのか」――。そんな声が上がったものだが、全国紙の報道が事実なら当然、噴出する疑惑だ。

しかし、民主党国会議員が最高裁に請求した資料では、会議は7月から始まっていた。一体どっちが正しいのか。

問題の検察審で「審査補助員」を務めた第2弁護士会の吉田繁實弁護士を直撃してみた。
記者「報道では9月に選任されたとなっていますが、民主党議員が入手した資料では7月から会議が始まっています。事実関係を教えて下さい」
吉田氏「7月というのはもう出ている(報道されている)の? ふーん。まあ、9月というのは現実的にあり得ないよね。議決まで1週間なんて」
記者「では7月から会議が始まった?」
吉田氏「うーん。私がいろいろ話してはいけないのだが……。7月は会議をどうするかということだったが、何もしないのも……ということで集まった」

吉田氏はそれだけ語ると、「あまり答えられない」と言って、口をつぐんだが、ハッキリしたのは大新聞の報道のいい加減さだ。吉田弁護士は会議開始日を7月と認め、最高裁が開示した資料でもそうなっていた。ならば大新聞報道は「誤報」だったということだ。

「一斉に同じことを報じたというのは、発表だったということです。検察審の事務局がこっそり記者クラブに伝えたのか、それとも東京地検がクラブに教えたかのどちらかでしょう。当局の発表だから、新聞記者たちはウラを取る必要もないと思ったのでしょう」(司法関係者)

もちろん、今もって訂正記事はない。それどころか、読売新聞は昨年10月6日朝刊で〈9月に入ってからは、平日に頻繁に集まり審査を行った〉と東京第5検察審の内幕を書いていた。しかし、これもまったくの誤報。最高裁の会議データによると、9月の会議は「2回」だけで、うち1回は議決日だったことが分かっている。「頻繁に」集まってなんていないのだ。

小沢「陸山会」事件では、検察情報をそのままタレ流し、検察審査会の疑惑も追いかけず、小沢を犯罪人扱いすることだけに血道を上げる大新聞の“正体”は、こんな薄っぺらなものなのである。(つづく)



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