にっちもさっちも行かない菅政権 無力なくせに強気なチンピラ丸出し菅直人

(日刊ゲンダイ2011/2/21)

選挙をやれば自分の当選も無理だというのに…

-身から出たサビだが、野党時代のやり口手口がそっくり返ってきて政権維持に四苦八苦の天罰テキメン

-国民の支持を失い野党にもバカにされ法案不成立となっても総辞職でなく解散を選ぶそうだ

追い込まれると何でもありだ。なりふり構っていられない。「全く考えていない」と繰り返し解散を否定してきた菅首相が、一転して解散風を吹かしている。記者団に解散の可能性を聞かれても、「国民にとって何が重要か考えて行動する」と思わせぶりなのだ。

民主党の比例単独組16人による会派離脱表明は、「地盤を持たない16少年漂流記」とからかわれた。しかし、いささかとうが立った若手議員の反乱は、菅政権を確実に崖っぷちまで追い詰めた。イチかバチかで海に飛び込むか、「ごめんなさい」とひざまずいて命乞いするか。選択肢は2つしかない。
「野党時代のやり口がそっくり返ってきた格好です。民主党は自民党政権当時、多数を占める参院で問責決議案を連発し、予算関連法案に反対した。最後の麻生首相は、こうした揺さぶりと自らの放言、失言で国民の支持をなくし、党内の麻生降ろしにも足を引っ張られ、選挙で惨敗しています。いま起きているのは、これと同じ。仙谷官房長官や馬淵国交相が問責で飛ばされ、予算関連法案の成立は見通しが立たない。そうこうするうちに党内から菅降ろしですからね。身から出たサビというか、因果応報というか。天罰テキメンです」(政界関係者)

法案が成立しないなら、菅は「イチかバチか」に賭けて、解散に打って出ようとしている。でも、結果は麻生と同じ。惨敗は目に見えている。
首相周辺でさえ、「いま選挙なら民主党は90議席」と危機感を募らせているのだ。

◆軽く見られた首相のクビの価値

きのう(20日)、菅は江田五月法相と公邸で2時間近く話し合った。
「菅にとって江田は、ただひとりの信頼できる兄貴分。長男を衆院岡山1区から出馬させたのも、江田の地盤が岡山だったから。面倒を見てもらったのです。長年2人は家族ぐるみの付き合いをしている。追い込まれた菅を本気で支えようと考えているのも、江田ぐらいでしょう」(民主党事情通)

菅グループは総勢30人程度と所帯が小さい。しかも、頼りになるのは江田ひとり。人望のなさは致命的で、代表選の国会議員票は、マスコミに叩かれまくった小沢元代表とどっこいどっこいだった。普通だったら首相になれるようなレベルじゃないのだ。

だから、野党にもバカにされる。永田町では、首相の退陣と予算関連法案の成立をバーターにするという案も取り沙汰されるが、自民党の石破政調会長は、「首相のクビをもらったところで、そんなに価値はない」とばっさり。絶大な権力を握る最高政策責任者のポストも、菅が座ると軽く見られてしまう。党内基盤が弱く、政権を運営する能力もないのだから当然だ。菅は、首相の大役にふさわしい政治家じゃないのだ。

それでも本人は、驚くほど強気だ。「クビを替えたら賛成するとか、そういう古い政治に戻る気はさらさらない」と突っ張った。楽観的なのか。それとも能天気なのか。現状の分析ができるアタマを持ち合わせているとは思えないほどだ。

政治評論家の浅川博忠氏が言う。
「菅首相は“解散”で野党と取引する考えでしょう。伝家の宝刀をちらつかせて、何とか予算関連法案を成立させる。その上で税と社会保障の一体改革にも道筋がつけられれば、『国民生活を守り歴史的偉業を実現した』という“名誉”を手にできます。解散の大義名分にもできるでしょう。また、来月1日に在任期間で鳩山前首相と並ぶことも区切りになる。民主党内は“解散よりも総辞職”ですが、首相からすれば、傷ついて辞めるよりも勝負した方が格好はつく。中央突破する考えです」
力はないのに威勢だけはいい。まるで後先考えずに殴り込みをかけるチンピラである。

◆政権中枢から噴き出し始めた菅降ろし

だが、選挙をやれば、菅だって危ない。永田町に戻ってこられるかどうかは微妙な情勢だ。
中選挙区時代の選挙区が含まれる西東京市で昨年末に行われた市議選は、民主党が惨敗した。定数28に対し、当選したのは3人だけ。うち1人は、当選後に民主党会派入りを拒否した。お膝元はグラグラなのだ。

菅は郵政選挙のときも危なかった。武蔵野市長をやった自民党新人に7800票差まで追い上げられて、冷や汗をかいている。しかも今回は、ウソかホントか、みんなの党の渡辺喜美代表が国替えして乗り込んでくるなんて話がある。楽な選挙にはならない。
「それだけに、現職の首相として選挙をやった方がいいでしょう。総辞職した首相経験者という立場で選挙を戦う方が、落選の危険性は高くなります」(浅川博忠氏=前出)

どこまでも自己中心的な男である。菅の無能が民主党への期待をそぎ、同僚議員の立場もなくしているというのに、自分だけは何とか生き残ろうとしているのだ。こんな政治家が、国民や国民の暮らしに目を向けるわけがない。鼻くそと一緒に丸めてポイッてなもんだ。国民はなめられたモノである。

さすがに菅を支えてきた政権中枢からも菅降ろしの動きが出始めた。ただでさえ味方が少ない菅は四面楚歌だ。援軍を頼もうにも、シンパがいないのだからどうしようもない。

◆飛び交う前原、野田の名前

先週は民主党の有力幹部が公明党幹部に「首相を代えてもいいから」と予算関連法案の年度内成立に協力するよう求めたと報じられた。発言の主は「15日に公明党の漆原国対委員長と会談していた仙谷」というのが永田町の定説だ。ポスト菅として前原外相や野田財務相の名前も飛び交うようになっている。政治評論家の山口朝雄氏が言う。
「菅首相は解散に活路を見いだしたいのでしょうが、そんな覚悟や決断力があるとは思えません。内閣支持率は下げ止まらず、地方選は惨敗続き。悪い流れをひっくり返す材料もありません。このまま破れかぶれで解散・総選挙となれば、民主党はボロ負けして、解体せざるを得なくなる。確かに解散は総理の専権事項です。しかし、すでに死に体となった菅首相に、伝家の宝刀を抜く余力は残っていません。元自民党の与謝野大臣や柳沢元厚労相の起用がトドメになりましたね。菅政権は歴史的な政権交代を台無しにした。国民は菅民主党にソッポを向いた。その現実を目の当たりにすれば八方塞がり。退陣するしかありません」

しかし、3人目の首相となれば、これまた野党時代に批判していた旧自民党政権と同じである。野党時代にさんざん批判してきた政権のたらい回しだ。そんな悪あがきが国民に受け入れられるわけがない。「他人に厳しく自分に甘く」では、ますます人心は離れていく。そこのところが分からないから、民主党はダメなのだ。
マニフェストをないがしろにし、国民を裏切った代償は大きい。



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