やっぱり菅は解散を打てない (日刊ゲンダイ2011/2/22)

「1票の価値が同じは民主主義の大原則」

「1票の価値が同一でなければならないのは選挙をベースにした民主主義の大原則。1票の格差は、少なくとも2倍の範囲にとどめるのが国会の責務」
きのう(21日)の衆院予算委員会で「1票の格差」について質問された菅首相は、こう答えた。「格差が2倍を超えた選挙は民主主義に反する」というわけだ。となると、菅は「破れかぶれ」や「イチかバチか」で解散を打てない。崖っぷちに追い込まれ、盛んに解散権を振りかざしているが、自らの答弁に手足を縛られ、身動きが取れなくなる公算は大だ。
今週金曜日(25日)、総務省は昨年実施した国勢調査の集計結果を発表する。10年に1度の大規模調査が浮き彫りにするのは、人口や世帯の全体像だけではない。菅が言う「民主主義の大原則」が崩れている実態まで映し出されてしまう。これが選挙の行方に大きく影響するのだ。
「集計結果が出ると、政府は、1票の格差を是正する手続きを始めなければならない。これは法律で決められているのです。結果の公示日から1年以内に、専門の審議会が首相に区割りの改正案を勧告する。これを受けて政府は区割りの見直し法案を国会に提出という流れです。“民主主義の大原則”を順守すれば、この間は選挙をやれない。菅が解散に踏み込めば、民主主義をぶっ壊すことになります」(政界事情通)
前回は00年12月の公示から改正公選法の成立まで1年半かかっている。1月末の衆院本会議で「1票の格差は解散権を縛るか」と質問されたとき、菅は「解散は首相の専権事項だ」と強がった。むろん法律的には格差があっても解散はできる。しかし、「不条理をただす政治」「クリーンでオープンな民主党」と声高に叫んでいる張本人が、不条理を承知で民主主義を踏みにじる選挙をやれば、強烈なバッシングは避けられない。国民からは総スカンだ。
「解散よりも総辞職がマシという菅以外の民主党議員にとって、区割りの見直しは格好の材料です。菅の動きを封じ込められる上、選挙の洗礼を受けない“3人目の首相”を正当化する切り札にもなる。結局、菅に解散はできませんよ」(政界関係者)
菅はかつて、解散をやらずに自民党にポストを譲った村山元首相に、「なぜ解散しなかったのか」と詰め寄ったという。今の菅なら村山の気持ちも理解できるか。