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検察審査会へなぜ?


●選挙でもないのに

 2000年の初頭、目黒区選挙管理委員会から1通の封筒が私のところに届いた。
 選挙が近々あるわけでもないのに、いったい何?と思いながら封を開いてみると、次のように書かれていた。
「あなたは東京第一検察審査会の審査員“予定者”に選ばれました」
 検察審査会という存在は、三谷幸喜の名戯曲『12人の優しい日本人』や、テレビドラマ『市民の判決』などで知っていたが、まさか私がその審査員の“予定者”に選ばれると思わなかった。

 そして、それからまた1ヶ月ぐらいした後に、また目黒区選挙管理委員会から1通の封筒が届いた。そして今度は
「あなたは東京検察審査会の審査員“候補者”に選ばれました。つきましては、候補者説明会をおこないますので、○月○日に東京地方裁判所におこしください」
と書かれていた。
 で、私は○月○日に、物見遊山で東京地方裁判所に行った。私が東京地方裁判所に行くのはこれがはじめてであった。指定された部屋には約60人ぐらいが集まっていて、そこで事務局の人による検察審査会の説明が行われた。そして、最後に“候補者”による質問が許されたので、私は次のように質問した。
「審査員に指名されたら、拒否できるのでしょうか?」
 その答えは「あたたが審査員として不適格者である以外、断ることはできないであった。不適格者とは皇族、国務大臣、裁判官・検事・弁護士など司法関係の仕事に携わる人々、法務省の役人、都道府県知事、市町村長、警察官、自衛官、弁理士、司法書士などである。

 私は残念ながら不適格者でなかった……。しかし、週に1度も裁判所に出頭して、朝から検察審査会に参加したいとは、そのときは全く思わなかった。できれば“候補者”のままで終わってほしいと思っていた。



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●補充員っていった何?

 そして、4月下旬に4月28日付け東京第一検察審査会の名で、次のような通知書が届いた。
「あなたは、この度、検察審査法第13条に基づき、東京地方裁判所判事、東京地方検察庁検事、および東京都区役所職員各1名立ち会いのもとで、厳正な抽選により、平成12年度第2群の“補充員”に選定されました。
 ついては、平成12年5月1日から平成12年10月31日までの6ヶ月間、非常勤の国家公務員として当検察審査会において、その職務に就いていただきますので、よろしくお願い申し上げます」

 私はどうやら補充員に任命されてしまったようだった。通知書が届いた翌日朝早く東京第一検察審査会事務局から電話がかかってきた。
「通知書が届いたことと思いますが、半年間検察審査会の補充員をしていただけませんか」
 電話の向こうの事務局の人は必死に説明している。私は補充員ということだから、月に1回ぐらい参加するのかな、と思っていたら……。
「審査員が欠席したときのために補充員がいるのですが、東京の場合は補充員の方も毎回審査に参加していただいて、審査員が欠席の場合は採決に参加していただきます」
「え~、毎週行くのですか」と正直驚きの声をあげてしまった。

 それでは、補充員とはいった何なのか、というと。
 検察審査会は11人の検察審査員によって構成される。しかし、1人でも審査員がかけると会議を開いて議決することができない。そのために、審査員が出席できなくなった場合に備えて、同数の補充員がいるのである。
 つまり、検察審査員が病気にかかったり、やむおえない事情で欠席する場合は、補充員のなかからくじで、補欠の審査員の仕事をするのである。
 ただし、東京第一、東京第二検察審査会では、補充員も毎回審査会に出席して、審議に参加することになっている。他の検察審査会でも補充員は毎回出席しているだろうか。


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●諭告・宣誓式

 こうして、私は平成12年5月18日に東京地方裁判所に赴き、検察審査会の補充員になったのである。
 まずはじめに東京裁判所所長(代行だったような)が検察審査員および補充員としての心得を諭告する。その内容は下記のとおりである。

検察審査員・補充員の義務
1.出頭する義務
 招集を受けた検察審査員および補充員は、必ず出頭しなければならない。出頭できない場合はあらかじめ事前に書面で理由を明らかにする。
2.宣誓する義務
 検察審査員および補充員は「良心に従い公平誠実にその職務を行う」という宣誓をしなければならない。
3.秘密を守る義務
 検察審査会は非公開で行われ、会議の模様などを外部に漏らすと2万円以下の罰金に処せられる。

 そして、2番目に掲げられている宣誓式を行う。
「宣誓書 良心に従い公平誠実に職務を行うことを誓います」
 検察審査員および補充員が最初にする仕事は、この宣誓書を読み上げて署名捺印することである。私ももちろん、宣誓を行い、捺印した。

 東京第一検察審査会の宣誓式は東京高等裁判所の会議室にて東京第二検察審査会と合同で行われた。宣誓式には東京地方裁判所所長代行、検察審査会局長(この人は東京地方裁判所の書記官が出向している)、総務課長、審判課長(これらの人々も裁判所の書記官)などが出席する。

 この日から6ヵ月間、私は審査会に参加する日(東京第一検察審査会の場合は毎週木曜日)は裁判所職員と同じ国家公務員に準ずる立場になったのである。

検察審査会についてもっと詳しいことをお知り合いになりたい方は、電子メールをこちらまでお送りください。知っている限りのお答えはいたします。また、検察審査員および補充員を経験された方のメールもお待ちしております。東京以外での検察審査会の運営方法などをお知らせいただければ嬉しいです。