結局誰のためになったのか 自公と同じ民主菅政治の性悪 (日刊ゲンダイ2011/2/24)

小沢処分より菅退陣が先決ではないのかとアキレた声

菅首相が「証人喚問だ」「離党勧告だ」「除名だ」とヒステリックに叫んでいた小沢一郎の処分は、「党員資格の無期限停止」で決着した。

しかし、民主党にとって、首相がムキになって進めた「小沢排除」に、一体どんなプラスがあったというのか。
党内の亀裂を深め、内閣支持率の下落を招き、ひいては首相退陣を求める動きを加速させただけだ。
スッカラ菅首相は、大新聞テレビの記者に「小沢切りをすれば支持率が上がりますよ」と唆され、「そうか、そうだよな」と突っ走ったのだろうが、結果的に自分で自分のクビを絞めているのだから、バカみたいな話だ。
目の前の権力闘争に熱中するあまり、自分が追い込まれることに気づかなかったのだから、どうしようもない。

「菅・仙谷コンビが強行した小沢排除は、結局、誰も得をしなかった。小沢一郎を傷つけ、民主党に亀裂を走らせ、首相を窮地に追い込んだだけです。国民新党の亀井静香が、首相のやり方を連合赤軍の内ゲバにたとえ『党内で敵をつくっているような状況ではない。内輪ゲンカばかりしていたら国民が期待しなくなる』と懸念していた通りになってしまった。なぜ、首相はこんなバカなことに血道を上げたのか。小沢一郎は『いつでも菅さんに協力する』と申し入れていたのだから、味方にすればよかったのです。心ある国民も内紛ではなく挙党一致を望んでいた。小沢一郎の政治とカネは“冤罪”の可能性が高いのだからなおさらでしょう」(政治ジャーナリスト・鈴木哲夫氏)

内部抗争をつづけるだけで、肝心の政策がまったく進まない菅首相に、国民も愛想を尽かしている。内閣支持率は20%まで下がり、「早く辞めて欲しい」が49%に達している。首相が不毛な「小沢切り」に突き進んだために、若手議員16人がクーデターを起こし、予算関連法案の成立も絶望的になった。
そもそも、小沢一郎の「政治とカネ」は、国民にとっては、どうでもいい話だ。税金が不正に使われたワケでも、行政がネジ曲げられたワケでもない。小沢を排除したからといって、国民生活が良くなるわけでもない。なのに、菅首相はわざわざ話を大きくし、民主党をガタガタにしているのだから最悪である。

◆「民主党の原点に返れ」が国民の声だ
それにしても、菅直人はつくづくバカな男だ。
小沢一郎を悪者にして叩けば、国民が拍手喝采し、支持率が上がると計算したのだろうが、思い違いもいいところ。亀井静香が警告したように、国民は連合赤軍のような“内ゲバ”なんて誰も望んでいない。
国民が民主党に期待しているのは、一致結束し、戦後60年つづいたこの国の形、システムをガラリと変えることだ。変化を嫌う日本国民が、意を決して政権交代を実現させたのも「民主党なら自民党とはまったく違う政治を実現してくれるはずだ」と期待したからである。

もし、首相が延命したいなら、不毛な「内部抗争」に終止符を打ち、「国民生活が第一」という民主党の原点に返るしかない。本気で「国民生活が第一」の実現に動いたら、支持率は間違いなくアップする。
ところが、スッカラ菅首相は、あくまで「内ゲバ」をつづけ、国民と約束したマニフェストも破棄するつもりだから、度し難い。

「世論調査で『首相辞めろ』が半数に達するのは当然です。政権交代から2年近くもたつのに、この国はなにも変わっていないからです。むしろ、自民党時代より悪くなっている。驚いたのは、政権交代後、延べ4240人の官僚が堂々と“天下り”していたことです。“脱官僚”の看板はなんだったのか。たしかに、『国民生活が第一』の理念を実現しようとすれば、官僚や大企業、アメリカを敵に回すことになり、首相は大変です。でも、菅民主党は衆参で400議席という圧倒的多数を握っているのだから、やれないはずがない。野党時代に散々、追及したのだから相手の急所も熟知しているはず。ところが、菅首相は官僚や大企業、アメリカとの軋(あつ)轢(れき)を恐れて、最初からマニフェストを実現する気がないのだから話にならない。なぜ、小沢切りに向けるエネルギーを、マニフェストの実現に向けないのか。首相はどうかしています」(政治評論家・山口朝雄氏)

官僚、大企業、アメリカという「旧体制」を敵に回したために退陣に追い込まれた鳩山首相の末路を見た菅首相は、「旧体制」に逆らってはダメだと思い知らされたという。
しかし、これでは政権交代した意味がない。小沢一郎が「政権を取ってみたら難しいからやめるというのでは、なんのための政権交代だったのかと国民から言われるのは当たり前だ」と批判するのも当然である。

◆総辞職も解散もせず政権に居座るつもり

もう、こんな男は即刻クビにしないとダメだ。小沢処分より、菅退陣のほうが先決である。
ところが、菅首相はなにがあっても政権にしがみつくつもりだ。周囲に「俺は(6月22日に)通常国会が終わるまでは、どんなことがあっても総理を辞めない!」と宣言したという。
政治評論家の有馬晴海氏が言う。

「このままでは予算関連法案が成立しないから、菅首相は3月末に総辞職か解散に追い込まれるという『3月危機説』が流布されています。しかし、たとえ3月末までに予算関連法案が成立しなくても、菅首相は総辞職も解散もせず、6月の会期末までズルズルと居座るつもりだと思う。権力欲の強い首相が一日でも長く首相をつづけるには、それしか手がないからです。どうやら『予算関連法案が成立しないと国民生活に影響が出る』『野党はどう責任を取るのか』とチキンレースに持ち込めば、公明党が『国民生活の混乱を避ける』という名目で譲歩してくると踏んでいるようなのです。成功するか分かりませんが、国民生活を人質に取って、政権延命を図るつもりです」

しかし、このシナリオだと国民生活は大混乱に陥りかねない。株価や国債が暴落する恐れがある。日本はメチャクチャにされてしまう。

さすがに、民主党議員が首相の延命シナリオを許すとは思えないが、もし、民主党が首相を辞めさせないなら、最後はエジプトやリビアのように国民の手で葬り去るしかない。



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