80時間の予算審議で見えてきたのは…首相の居座りへの執念
(産経新聞 2011.3.1 01:02)http://p.tl/Wpyo


 80時間を超える平成23年度予算案の衆院審議を経て、民主党政権の空中分解が現実のものとなった。会派離脱を表明した16人が28日、予算案の採決を欠席する方針を確認。小沢一郎元代表も同日夜、中井洽衆院予算委員長(民主)の解任決議案を採決する衆院本会議に姿を見せることはなかった。党執行部が恐れていた“造反劇”。菅直人政権は足元から崩れようとしている。(小島優)

 「許し難い行為だ」「予算案に反対なら閣議決定したときに離党すべきだった」「もともと国会議員じゃないようなやつらだし」…。

 党幹部や政府要人は28日、16人の行動を口々に非難した。岡田克也幹事長は16人が予算案採決の本会議を欠席したり反対票を投じたりすれば、「厳正に対処する」と述べ、厳しい処分も辞さない構えを示した。

 ただ、小沢氏に「無期限」の党員資格停止処分を下し、さらに小沢氏に近い16人に処分を下せば、党分裂が決定的なものになるのは火を見るより明らかだ。

 「もう何を言ってもしようがない」

 ある国対幹部は修復不可能となった党の亀裂にため息をつくばかりだ。

もともとは、首相と小沢氏の一騎打ちとなった昨年9月の代表選の遺恨から始まった抗争だった。今も権力闘争という側面は否めないが、表向きは民主党政権の命綱であるマニフェスト(政権公約)を順守すべきか否かという路線闘争の様相を強めている。

 象徴的なのは、政権交代の原動力だったはずの子ども手当の看板を、首相や党執行部が事実上、下ろそうとしていることだ。

 岡田克也幹事長は27日、「(自公政権が導入した)児童手当法の改正であってもいい」と発言。党幹部からも「『子ども』も『児童』も一緒だよ」と、冗談ともつかぬ声すら漏れる。

 首相も28日の予算委で「今後の与野党協議の可能性として(岡田氏の)発言があったのだと思う」と修正に理解を表明した。

 執行部側のマニフェスト見直し路線は、「ばらまき」批判を強める野党対策から出た策だ。確かに、ねじれ国会下では、どこかの野党が協力してくれなければ、予算関連法案は一本も通らない。

ただ、看板政策をかなぐり捨てても構わないという方針には、政権維持そのものが目的化した打算のにおいが漂う。

 「4年間で見てほしいというのが私の答えだ」

 「何としても4年間頑張り抜きたい」

 首相は28日の衆院予算委でこんな答弁を繰り返した。

 首相は28日、鳩山由紀夫前首相の在任期間(266日)に並んだ。しかし、政権の求心力は日増しに弱まり、遠心力ばかりが加速度的に強まっている。

 「このままでは解散も総選挙もしないまま(首相が)次の人に移るのではないかと心配になる。半年、1年居座りをするのではなく、解散・総選挙を(補正)予算の上がった段階ですることを強く望む」。こう責め立てたのは野党時代の首相自身。平成20年10月7日の予算委で当時の自民党の麻生太郎首相を退陣に追い込むべく突きつけた言葉だ。

 今、政権にしがみつこうとする首相に、この言葉が跳ね返ってきている。